江戸の大店である塩田屋の若旦那・藤次郎。
本来の家業は隠密という事実を知らされた彼は、持ち前の上品さと資金力、代々伝わる必殺剣で江戸の難題を解決する! シリーズ開始とともに、たちまち人気を得たこの作品の最新情報と魅力をお届けします!
『若旦那隠密2 将軍のお節介』あらすじ
生粋の江戸商人である藤次郎は、ある日自分が公儀隠密の末裔であることを知る。将軍・徳川家治からは〝約束〟を果たすまでは隠密を続けるよう沙汰を受けるが、許嫁の父からは侍に娘は嫁がせないと言われ、苦悩する藤次郎。だが仇討ち、盗賊の押入り、興行の利権争いと、次々に事件が――。一日も早く隠密を辞め許嫁と添いたい若旦那の必殺剣が唸る。
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◎藤次郎 日本橋青物町にある塩問屋「塩田屋」の若旦那。江戸だけでなく、京・大坂にも店を構える。代々将軍家に仕える隠密・
◎夏 日本橋呉服町で絹問屋を営む左京屋将右衛門の娘。藤次郎と相思相愛の仲
◎典助 塩田屋の頼れる番頭であり草間家の家臣
◎長根出羽守右近 将軍家側近。草間家に役目を伝える
◎こつぶ 塩田屋の白雉模様の猫(♀)
◎徳川家治 隠密を辞めたいと願い出る藤次郎に、ある”条件”を提示する
◎田沼意次 老中。家治からの信頼は厚いが、蓄財に目がない
大商人にして隠密の若旦那が活躍する、痛快シリーズ第二弾。
昨年の十二月に刊行された、佐々木裕一の文庫書き下ろし新シリーズ『若旦那隠密』の第二弾が、早くもお目見えした。
江戸・京・大坂に店を構える塩問屋「塩田屋」の若旦那・藤次郎は、父親の急死によって、意外な事実を知った。なんと商人は仮の姿であり、代々、一族は徳川将軍家に仕える隠密だったのだ。
店の人間の多くも配下の者。隠密になる気のない藤次郎は、将軍家治に辞退を申し上げるのだが、ある条件と引き換えに、役目を引き受けることになる。そして、お家騒動や辻斬りなど、さまざまな事件を解決していく。
というのが前巻の粗筋である。第二弾になって、話はますます絶好調。
冒頭の「将軍のお節介」では、家治の助けた梓美という娘を預かったことから、ある藩の騒動に巻き込まれる。続く「浜徳のあさり蒸籠飯」は、母親から家を追い出された、りんという娘の一件が、思いもかけぬ方向に転がっていく。
ラストの「大一番」は、相撲取り連続襲撃事件の裏にある意外な事実を、藤次郎たちが暴き出す。どれもストーリーに工夫が凝らされており、ページを捲る手が止まらない。しかも物語の着地点は、気持ちがいい。エンターテインメントの要諦は、読者の予想を裏切り、期待に応えることだという。それをきっちりと実践しているからこそ、本書はこんなにも面白いのだ。
さらに主人公のキャラクターも見逃せない。商人の地位、金の力、剣の腕前と、三拍子揃っている。人を斬ることは嫌うものの、自分の使えるものは駆使して、事態に立ち向かっていくのだ。大商人兼隠密という独自の設定が、そのまま藤次郎の人物像を際立たせ、魅力を引き出すのである。
また藤次郎と、幼馴染の夏との、恋の行方も気にかかる。相思相愛だが、隠密をやめるまでは会うのを控えようとする藤次郎。一方、夏の父親は侍嫌いであり、藤次郎が隠密だと知ってから、ふたりの仲に反対している。そんな状況になりながら、じりじりと進展していく、恋人たちの関係が、シリーズを通じての読みどころとなっている。だから本書を読了してすぐ、第三弾の刊行を待ってしまうのだ。
細谷正充
文芸評論家。1963年、埼玉県生まれ。書店員を経た後、時代小説やミステリーなどのエンターテインメント作品を対象に、評論・執筆に携わる。
担当編集者の若旦那隠密のここを読んでほしい!
贔屓の力士に懸賞を奮発し、
商人でありながら武士として剣をふるうことに葛藤を覚える若旦那・
一日も早く隠密を辞め、
一九六七年、広島県生まれ。
二〇〇三年に架空戦記でデビューして以降、執筆活動に入る。かねてより痛快時代劇の大ファンで、数多くの時代小説や歴史と文化の書物を繙くうちに物語が膨らみ、一〇年に時代小説デビュー。著書に「公家武者」シリーズ、「若返り同心」シリーズ等がある。
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