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老人一年生

2017.07.08 公開 ポスト

第7回

医者たちは、骨と神経のことばかりを言い過ぎたのではないか副島隆彦

老いるとはどういうことか。5つの老人病(痛風、前立腺肥大、高血圧、頸痛(けいつう)・腰痛、慢性気管支炎)に次々襲われた著者64歳の体験記。著者は痛みにどう対処したのか。余計な手術ばかりする整形外科医と、長生き推奨医の罪も糾弾する痛快エッセイ。――『老人一年生』(副島隆彦著)

 

(前回からの続き)

 このことは、どうも、近年MRI(エム・アール・アイ 核磁気共鳴画像法(かくじききょうめいがぞうほう)、Magnetic(マグネティック)Resonance(レゾナンス)Imaging(イメージング)という医療機器の発達と普及と大きく関係している。

 昔のレントゲンと違って、今ではみんな、もう何でもかんでも、MRIという画像診断を受けるようになった。この他に、何かあるとすぐに、医者たちはX線CT(シーティー)という先進医療機器での画像を撮らせる。どちらも1台が2億円から3億円する高価な医療機器らしい。

 MRIとCTスキャンの違いについてとか、私は詳しくは何も知らないので書かない。私自身がこれらの機器による診断を、これまでに10回ぐらい受けている。

 今の医者たちは、こういう画像診断に写る骨ばかり見ている。昔は、肉(筋肉)は写らなかった。最近は肉も写るようだ。だが多くの医者たちは、腰や首の痛みが、骨とつながっている筋肉の方の問題だということを理解しない。筋肉のことを勉強していないから、すぐに椎間板ヘルニアとか、脊柱管狭窄症という診断を出す。筋肉の異常はMRIの画像には表れない。筋肉のことを無視してきたのだ。

 

 医者たちは、どうも骨のことばかりを言い過ぎた。あるいは骨の中を走っている脊髄=神経のことばかりを言ってきた。そしてこの30年ぐらいの間に、整形外科医たちは、余計な、やってはいけない危ない手術をたくさんやってきた。

 スポーツ選手に、何回もヘルニアの手術を受けた人たちがいる。杉良太郎という俳優も手術を3回したが、「その後、思わしくない」と言っている。

 外科手術とは1回で終わるのが基本だ。治らないからまた同じ所を切る、というのはおかしい。それを「再発性」などと医者たち自身が言うのは問題だ。本当に問題だ。

 私も6年前に、その名医から「そのうち、(もっと悪くなったら)私が手術をしてあげるよ」と言われた。しかし彼はそれ以上は何も言わなかった。何かひっかかる感じの、寡黙(かもく)な態度だった。

 どうも、ほとんどの腰や背骨の痛みの病気は、筋肉の痛みのようだ。筋肉が受ける刺激とか、筋肉が固まっている、とかいろいろな言い方があるのだろうけど、そういうものであって、決して骨の異常ではない。

 

(続く)

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老人一年生

5つの老人病(痛風、前立腺肥大、高血圧、頸痛・腰痛、慢性気管支炎)に次々襲われた著者・64歳の体験記。老化のぼやきと、骨身にしみた真実を明らかにする痛快エッセイ。

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副島隆彦

評論家。副島国家戦略研究所(SNSI)主宰。1953年、福岡県生まれ。早稲田大学法学部卒業。外資系銀行員、予備校教師、常葉学園大学教授等を歴任。「日本属国論」とアメリカ政治研究を柱に、日本が採るべき自立の国家戦略を提起、精力的に執筆・講演活動を続けている。『老人一年生』(幻冬舎)、『属国・日本論』(五月書房)、『世界権力者 人物図鑑』『トランプ暴落前夜』(ともに祥伝社)、『日本人が知らない真実の世界史』(日本文芸社)など著書多数。

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