不思議な深海生物について、最新研究からわかったことを美しい写真とともに紹介するビジュアルブック『深海散歩 極限世界のへんてこ生きもの』が発売になりました。
その中から今回は「盆踊り風――ムンノプシス」を試し読みとして公開します。
ムンノプシスは深海にいるミズムシの一種。そのかわいい動きをお楽しみください。
盆踊り風
「ミズムシ」という名の等脚類(とうきゃくるい)。「水に棲む虫」という意味で、足のトラブルとは関係がない。「虫」というと昆虫を指すことが多いが、海に昆虫はほとんどいない。等脚類は、甲殻類の中のフナムシやダンゴムシなどの仲間。
ミズムシの仲間は、水田や池などの淡水に生息するものが多いが、海に棲むものもいる。ただ、海のミズムシはあまり研究が進んでいないという。体長1cmほどの小さいものが多く、ネットなどで採集すると細長い脚が失われてしまうことも、研究を難しくしているのだろう。
2011年8月、泳ぐミズムシの貴重な映像が撮影された。2本長く伸びているのは触角。触角より短い細い脚が数本見える。体の後ろのほうにある4本の脚は、先が団扇(うちわ)のように広がっている。よく見ると、その団扇付きの脚を、2本ずつ前後と左右、交互に規則的に動かし後ろ向きに泳いでいる。盆踊りでもしているみたいだ。 潜水調査船によって初めて見ることができた動きと言えるだろう。
ムンノプシス科の一種
Munnopsididae gen. sp.
ミズムシの一種。写真は、三陸沖の水深5354m付近で「しんかい6500」によって撮影されたもの。深海で生きた姿を観察することで、さまざまな発見が生まれている
写真/海洋研究開発機構