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百歳まで歩く

2017.07.17 公開 ポスト

第3回

中高年以降にありがち、間違った歩き方田中尚喜(理学療法士)

累計12万部突破のベストセラー文庫『百歳まで歩く 正しく歩けば寿命は延びる!』。30代からシニア層までじわじわ幅広くヒット中です。待望の試し読み第三弾は間違った歩き方について。中高年以降、筋肉が弱ってくる時期に悪い癖をつけてしまうと、つまずきやすくなるなど、身体へのダメージは計り知れません。そんな時こそオススメしたいのが後ろ歩きトレーニング。ヒップアップ効果やO脚矯正効果も期待できる方法をお伝えします。

中高年以降にありがち、間違った歩き方

 正しい歩き方との比較をしなくても、薄々は、間違った歩き方をしているとわかっている人も多いはずです。

 歩行は参加する筋肉の数が多く、歩くときに参加する筋肉はその人の歩き方のくせ、歩行速度、履物などによって違うわけで、どこかで一歩間違うと間違った歩き方になってしまうでしょう。

 中高年以降の間違った歩き方で目にするものは「膝を曲げたままの歩き方」「上体を左右に大きく振る歩き方」「必要以上に足を持ち上げる歩き方」です。

 あなたのいつもの歩き方がこのうちのどれかに該当する場合は、それぞれの歩き方になる原因を理解しましょう。歩き方から、どの筋肉が弱っているかがわかります。

「膝を曲げたままの歩き方」になるのは、まず、立ったときの姿勢が前傾姿勢であることが考えられます。また、歩くときの歩幅が広すぎても膝が曲がります。歩幅を無理に広くすると脚を意識して前に出すことになり、正しく歩くことの要素である蹴った反動で脚を前に出すというポイントや、かかとから着地することができなくなり、おのずと膝が曲がることになるのです。

 また、歩くときに腕を強く振りすぎると、走ることに近い運動体勢になり、膝が曲がった歩き方になってしまいます。

「上体を左右に大きく振る歩き方」をしている人は、老化や運動不足による大臀筋の低下が第一に考えられます。大臀筋が低下すると、重心移動がスムーズにできなくなります。大臀筋の代わりにお尻の奥にある骨盤をねじる筋肉の梨状筋が働き、上半身と下半身は連動して動き肩を振ったように歩くことになるのです。

 とくに変形性膝関節症の人は、骨盤を振らないで上半身を振って歩くのでこの歩き方になりがちです。また、梨状筋が疲労して短くなってくると、O脚の原因にもなるでしょう。

「必要以上に足を持ち上げる歩き方」の人は、つまずきやすくなります。自分では決して足を高く持ち上げているつもりはないのに、母趾でしっかりと地面を蹴らずに、足の裏で地面を押すようにしているから、結果として足が高く上がることに。この歩き方では前に進むための脚筋であるふくらはぎの下方のヒラメ筋が使われず、代わってふくらはぎ上方の腓腹筋を使うことになって、つまずきやすいのです。

 さらに、足を持ち上げるためには大腰筋を使うので身体が前傾してしまい、前傾姿勢になることでもつまずきやすくなります。

間違った歩き方を改善するトレーニング

 ここまでの、中高年に目立つよくない歩き方を見ていくと、重心移動がうまくできないことが大きくかかわっていることがわかります。

 しかしながら、これまで無意識で行ってきた歩行時の重心移動を、調整するのは難しいもの。そうした人でも、スムーズに重心移動ができるようになるトレーニングがあります。「後ろ歩きトレーニング」です。

 歩行の際の重心移動には、お尻の筋肉の大臀筋やふくらはぎのヒラメ筋を鍛える必要がありますが、後ろ歩きは、この大臀筋とヒラメ筋の両方を鍛えることができる効率的なトレーニングなのです。後ろ歩きでこの2つの筋肉が鍛えられると、重心移動が円滑になり、膝が伸びた正しい歩き方ができるようになります。

 普通に歩くときは一方の足のかかとからついてもう一方の足の母趾で地面を蹴りますが、後ろ歩きは、その逆の母趾から地面につくところからスタートします。そのために、後ろ歩きをすると、大臀筋とヒラメ筋の2つの筋肉を前歩きより約6倍も使うことになるので、筋力トレーニングとしての強力な効果も期待できるわけです。

大股で脚を後ろに引き、膝を伸ばして後ろ歩きする。つま先から着地し、母趾でで地面を蹴って後ろに歩く。太もも、お尻に力が入っていることw意識して、ゆっくりと体重移動をする。 裸足でも靴を履いたままでもOK。1回1分程度の後ろ歩きを、1日に10回ほど行う。 後ろ歩きトレーニングを続けていると、ヒップアップや、O脚の矯正効果も。

 後ろ歩きには即効性もあります。以前、雑誌での歩き方の誌上レッスンで、ある女性エッセイストにこの後ろ歩きをやってもらったことがあります。ご本人も認める前傾姿勢で、どちらかというと歩く際に膝が伸びず、膝を曲げたまま歩いている様子でした。ところが2、3回ほど後ろ歩きをやってから再び歩いてもらうと、その場で膝が伸びた正しい歩き方ができるようになったのです。もちろん、後ろ歩きのトレーニングは1回やれば終わりではなく、少なくとも1ヵ月の間は毎日続けるべきものです。後ろ歩きのトレーニングにより、指摘されてもなかなか改善しなかった歩き方の悪いくせが自然に矯正されていきます。

関連書籍

田中尚喜『百歳まで歩く 正しく歩けば寿命は延びる!』

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百歳まで歩く

30代からシニア層まで幅広くヒット中! 「座る、立つ、歩く」といった日常動作に必要な筋肉を鍛える簡単な方法を網羅した画期的エクササイズブックの一部をご紹介します。ベストセラー文庫の試し読みです。

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田中尚喜 理学療法士

理学療法士(骨関節・物理療法専門理学療法士)。1987年、岩手リハビリテーション学院卒業後、89年、東京厚生年金病院(現・JCHO東京新宿メディカルセンター)リハビリテーション室勤務。現在はリハビリテーション士長。

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