この度、阿佐ヶ谷姉妹の初書籍『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』が発売になりました!本サイトの連載エッセイはもちろん、書き下ろしのエッセイと小説も加わった盛りだくさんな内容。こちらのリバイバル掲載をお楽しみ頂きつつ、ぜひ書店でお探し頂けたら幸いです。
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阿佐ヶ谷に住んで約23年、今の住まいで9年、みほさんと同居して6年ほどになります。
ずっと住み続けている理由の最大ポイントは、ご近所に恵まれている所です。
平成の世ながら、何とも昔から変わらぬご近所付き合いが続いている所が、ありがたく、居心地よく。
特に八幡煎餅さんは、ご家族ぐるみでよくして下さるご近所さん。私が一人暮らしをしている時から、目が合うと朝晩のご挨拶をして下さるので、こちらからもご挨拶するようになり、そのうち「今日は暑いわね」とか「お出かけだった? お疲れ様〜」とか軽い会話が続くうちに、「おねえさん、今日煮物いっぱい作っちゃったの、もらってもらったら、困る〜?」とカボチャや筑前煮から始まり、いつの間にか、シチュー、コロッケ、鮭ハラス、ほうとう、餃子、煮込みハンバーグというメイン料理にまで及び、我が家の食卓が、差し入れのお惣菜だけで足りるほどの頂き物をするようになってしまいました。
その中でも焼き餃子は、餃子の街、宇都宮育ちの私エリコの厳しい舌をもうならせる逸品。自作やお店、数々の餃子を食べ歩いた中でも『阿佐ヶ谷姉妹杯 美味しい餃子ランキング』殿堂入りのお味です。
中の餡のお肉とお野菜のバランスもよい上に、鶏ガラスープを仕上げに入れて焼き上げる事で、中ふんわり外パリパリ、全体的にしっかりとお味のついた、そのままでも冷めても、何とも美味しい餃子に。ああ、今書いていても食べたい〜。
餃子も、最初は5、6個のおすそ分け常識の範疇での分量だったのですが、そこにみほさんが同居し始め、二人しておいしかった〜おいしかった〜と素直な感想を伝えるうちに、10個になり、15個になり、気付けばフライパンぎっしりグルッと敷き詰めて焼いていただいたものをそのまま、姉妹のためにおすそ分け頂くようになっていました。
私達が自宅にいる時に、わざわざ「これから餃子焼くけど、こまる?困る〜?」と聞きに来てくれた上で、焼きたてのものを下さるのです。
何という愛情!私たちへの優しさもさる事ながら、美味しいお料理を、美味しい状態でおすそ分けしてくれようとする、そのこだわりがお料理のすみずみにまであふれていて、ますますひとくち一口が胸にお腹に沁みわたるのです。
『ぷっ』すま」という番組で、自宅で手料理を振る舞うというロケにて、ステーキ丼を作るも、ちょうど差し入れて下さった餃子を食べた草彅さん(実際の漢字は違われるようです)、ユースケ・サンタマリアさん、FUJIWARAの藤本さんに「今まで食べた餃子で一番うまい!」と絶賛され、御三方とも美味しすぎてそればかり食べられてしまうという、まさかの展開になりました。
阿佐ヶ谷関連の話を取材される度、ついこの餃子の事を言ってしまい、そうすると「ぜひ見てみたい!」という流れになり、お煎餅屋さんにお手間をかける事になって申し訳なくなり、最近は言いたくてもお口にチャックするようになりました。
私も頂き始めの頃は、自分でも作ったものをお返ししなくてはとチャレンジした事もあったのですが、豚の紅茶煮を作っておすそ分けした次の日、お煎餅やさんから手作り具沢山ピザを頂き、その具に差し上げた煮豚が細かく刻まれ、さらに美味しくアレンジメントされているのを見て、「これはもう、何をやったりとったりしたか分からなくなっていらっしゃるのかも。混乱を招くのはやめよう〜」と、自分なりに都合の良い解釈をし、地方に行った折々で、お土産を買って行ったりしています。毎回とても喜んで下さり、そしてその後のおすそ分けの倍返し感ハンパなく。結果、両手がふさがるほどのお返しをいただいて、ドアノブをおばさんに回してもらって帰ってくる始末です。
お煎餅やお赤飯を買わせてもらう事ももちろんあるのですが、少し買うと、その3倍くらいのおすそ分けをいただいてしまい、得させているのか損させているのか分からない状態になってしまうので、なかなか難しい所です。つくづくありがたい話なのですが。
こんな、恵まれたおすそ分けわらしべ長者な生活をしておりますと、六畳一間の狭苦しい二人暮らしに多少難があっても、この環境以上の所などないのではないかと思わずにはいられません。男性とのご縁にはあまり恵まれなかったけれど、お煎餅屋さんはじめ、お隣の大家さん、周りのご近所さん、これだけ良いご縁に恵まれたのだから、これ以上何かを望んだらバチが当たりそうです。
姉妹は感謝で頭を垂れながら、徐々に徐々に体脂肪を実らせるのでした。めでたし、めでたし。(姉・江里子)
阿佐ヶ谷姉妹の魅力満載の宣伝動画を作成しました(歌あり)。ぜひお楽しみください!
阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし
40代、独身、女芸人ふたりの地味おもしろい同居生活エッセイ。
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