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猫は、うれしかったことしか覚えていない

2017.07.25 公開 ポスト

コウハイ、今日のうれしかったこと その5

真夜中の運動会をした。エビをパクッと食べた。友だちがきた。石黒由紀子/ミロコマチコ

『猫は、うれしかったことしか覚えていない』(石黒由紀子・文 ミロコマチコ・絵)発売を記念して、石黒さんちのコウハイ(野良出身・オス・6歳)に、日々の「うれしかったこと」を教えてもらいました。

おっと! すっかり忘れていたんだけど、ここって水が出るんだよね。さいきん、チョイチョイと水をさわるのが楽しいよ! だって夏だもの。でもね、手でチョイ!ってするのはいいんだけど、足が濡れるのはいやなのよね。だからこんな格好になっちゃうわけよ。だれ? 腰がひけてるなんて言ってるひと。そんなこと、ぜったいにないからね!


 

これはソファの下でくつろぐボクです。夜はね、こんなかんじで静かにしています……。なんちゃって、実は真夜中の運動会をして、ここちよい疲れに浸っているところですニャ。テーブルの上から本棚の上にジャンプして、壁を走ってスピーカーのところまで。そこからテレビを飛び越えてソファに戻ってくるコース。自己ベストを更新中なのよ。

 

おっと、これはサイコーにうれしかった思い出。食事の準備中だったゆっちゃんがぼんやりしている間に、キッチンに並んでいた中で一番おいしそうだったのをパクッと食べた! うまい! すぐに見つかって捕まったけど、急いでごっくんと飲み込んだよ。どうやらこれはエビというものらしい。ボクの目に狂いはなかった。エビ、また食べたいな~。

 

 

ねえねぇ、ボクがどこにいるかわかる? ボク、隠れているのよ、見えないでしょ?
窓の外にね、セミが来るの! どこからか飛んでくるんだよ。ボクはこの家を守らなくちゃいけないから、しっかり隠れて見張っているところ。セミはもちろん、センねえたんもゆっちゃんもボクがここに隠れているのがわからないみたいなの。あはは、ゆかいだな~。


 

たいちゃんっていう友だちが遊びにきたのよ。4日間お泊まりするらしい。前にも来たことがあったからボクはすぐわかったけど、たいちゃんはソファの下に隠れて寝ちゃったの。だからね、ボク待ってんのよ。たいちゃんが目を覚ましたら一緒に遊びたい。たいちゃん、前は子猫だったのにずいぶん大きくなってたよ。ボクと同じくらいのおおきさ。

 

「猫は、うれしかったことしか覚えていない」出版記念
ミロコマチコの挿し絵原画展開催
【日程】2017年7月16日 ~ 2017年7月30日 まで
【場所】原宿 絵本が読める小さな喫茶店シーモアグラス

 

関連書籍

石黒由紀子『猫は、うれしかったことしか覚えていない』

梅干しの種を飲み込んで、開腹手術を受けた猫のコウハイ。苦しかっただろうに、獣医師によると、「また、誤飲しますよ」。猫には楽しい記憶だけが残るので、種を転がしておもしろかったな、とは覚えているけど、苦しかったことは忘れてしまうそう。うれしかったことだけ積み上げて生きていく。そんな猫たちの、可愛くて笑えて、沁みるはなし。

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石黒由紀子

エッセイスト。栃木県生まれ。日々の暮らしの中にある小さなしあわせを綴るほか、女性誌や愛犬誌、webに、犬猫グッズ、本のリコメンドを執筆。楽しみは、散歩、旅、おいしいお酒とごはん、音楽。著書に『GOOD DOG BOOK ~ゆるゆる犬暮らし』(文藝春秋)、『なにせ好きなものですから』(学研)、『さんぽ、しあわせ。』(マイナビ)など。『豆柴センパイと捨て猫コウハイ』、『犬猫姉弟センパイとコウハイ』(ともに小社刊)は、幅広い支持を受け、ロングテールで人気。

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