子どもたちにとって待ちに待った夏休みが始まりました。家でダラダラ過ごすくらいなら、わが子を塾の夏期講習に……とお考えの保護者のみなさま。ちょっと待ってください!学校や塾に外注しなくても、子どもの学力と可能性を広げる教育は、家庭でこそベストに行えるのです。独自の家庭教育で娘をハーバード合格に導いた廣津留真理さんの著書『世界のトップ1%に育てる親の習慣ベスト45』から、親の行動を少し変えるだけで、子どものやる気と才能をみるみる引き出す超実践的なメソッドを紹介。お子さんと一緒に過ごす時間が増える夏休みにこそ、ぜひお読みください。
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学業でもスポーツでも芸術でも、何か特別なスキルを極めるには最低1万時間の学習が必要であるという「1万時間の法則」があります。
1万時間の法則は、イギリス生まれの作家マルコム・グラッドウェルさんが書いたベストセラーで広く世界に知れ渡りました。その基になっているのは心理学の研究であり、チェスプレーヤーや作曲家といった多くの分野の成功者のほとんどは、その分野に精通するまでグリット(やり抜く力)を発揮し、1万時間同じことを繰り返していたというのです。
そこでグラッドウェルさんは「練習しないで天才的な才能を見せつける人」もいなければ、「いつまで練習しても上達しない人」もいないと結論付けています。
グローバル時代に自らの個性を活かして活躍するには、人と違った自らのオリジナリティである「得意」を作る必要があります。そして才能があってもなくても、地道に努力し続けなければ自分の得意は生まれないのです。
1万時間というと途方もない長さに思えますが、1日3時間なら10年間。娘は2歳からバイオリンを始めて1日2~3時間練習し、確かに12歳くらいでコンクールでアワードが獲れる腕前になりました。
10年という時間の長さを考えると、得意を伸ばすアクションは早くから始めるべき。そして1日3時間を作り出すために、無駄をなくして家庭教育を徹底的に効率化してください。
忙しいビジネスパーソンほど時間をうまく作り出してジムに通ったりしていますが、1日3時間を作り出そうという目標ができると、漫然と過ごしているときよりも時間の使い方が上手になり、案外時間は作れるもの。5教科のペーパーテストで無意味な復習をしたり、模試を受けたりしなければ、その時間は作れます。平日にあまり時間が取れないときは、その分週末を活用すればまとまった時間が取れます。
1万時間で何かを習得して終わりではありません。そこはスタートラインにすぎませんから、心地よい場所に安住することなく努力を続けてください。それがアワードというご褒美に結びついたら、子どもに自信がついてもっと努力したくなりますし、単なる得意を超えて社会に貢献、還元できる活動につながるでしょう。
○得意はブルーオーシャンで見つける
得意を作って人生を豊かにし、アワードをゲットするためには、レッドオーシャンを避けてブルーオーシャンで勝負する戦略が有効です。
レッドオーシャン、ブルーオーシャンという言葉はマーケティング用語。競争相手が多い既存の市場がレッドオーシャン、競争相手が少ない新規市場がブルーオーシャンと呼ばれています。
スポーツでいうなら、子どもの競技人口が多い野球は典型的なレッドオーシャン。体格にも才能にも恵まれたライバルが大勢集まりますから、野球でアワードを獲ったり、プロに進んだりするのは厳しいでしょう。
レッドオーシャンで頑張り、補欠や裏方としてレギュラー選手を支える生き方を賞賛する文化が日本には根強くあります。
補欠や裏方も確かに欠かせない役割ですが、見方を変えるとレギュラーのために少なからぬ犠牲を強いられている損な役回り。自己犠牲を強いられるレッドオーシャンに子どもを飛び込ませていいのでしょうか?
レッドオーシャンで溺(おぼ)れそうになりながら懸命になっているのに一向に芽が出ず、肩を落としてがっかりしている子どもの姿は親なら決して見たくないもの。
収納ケースに何も入らず、ポートフォリオにも書けないものは思い切って切り捨てる勇気が求められます。
私ならレッドオーシャンで芽が出ないと思ったら、さっさとやめさせてライバルの少ないブルーオーシャンを探します。
○勝てる土俵で相撲を取る
スポーツ分野でいうなら、ウインドサーフィンやフェンシングといった分野は競技人口が少なく、野球やサッカーなどのメジャースポーツと比べると、ライバルが比較的少ないブルーオーシャンといえます。
あちこちのブルーオーシャンのスポーツを早めに子どもたちに体験させて、そこから芽が出てアワードが獲得できそうな、自己肯定感も高まりそうな種目を見つけてください。
将来プロになったり、日の丸を背負ってオリンピックに出たりするのは無理かもしれませんが、グリットを駆使して真剣にやればポートフォリオに書けるレベルの評価は得られるはずです。
音楽の分野ではピアノがレッドオーシャンであり、それと比べるとバイオリンはライバルが少ないブルーオーシャンです。
娘のすみれは、初めはピアノとバイオリンを両方やっていました。しかし小柄な娘にはピアノだと体格的に不利になるのでバイオリンに絞りました。バイオリンなら16分の1サイズから始められるので、体格面での不利が少なかったのです。
ただし、ピアノは調律されていますが、バイオリンは自分で調弦できる音感の良さが必須。相撲は勝てる土俵で取りましょう。
スポーツでも音楽でも、成功するケースでは親のサポートが大きな役割を果たしています。ここでも外注先に丸投げしてはいけないのです。
有名な話ですが、イチロー選手は小学校時代にお父さんと毎日のようにバッティングセンターに通っていましたし、体操の内村航平選手は両親が元体操選手でスポーツクラブを経営していました。ピアニストの故・中村紘子さん、バレエの熊川哲也さんも子どもの頃から英才教育を受けていました。
「ステージママ」という言葉は決して良い意味では使われませんが、ある一定の期間だけは親御さんがステージママ、ステージパパとなり、子どもを支援してあげることで、ブルーオーシャンで芽が出る可能性が出てきます。
どのマーケットに参入したらポートフォリオ的に良いのかを戦略的かつマルチに考えてあげて全力でサポートしてください。
親御さんが不得意な分野でも、子どもとともに学ぶうちに詳しくなり、人生の楽しみが一つ増えることになります。
世界のトップ1%に育てる親の習慣ベスト45
独自の家庭教育で、一人娘を地方公立校からハーバード大学現役合格に導いた廣津留真理さん。学校や塾に「外注」しなくても、親の教育しだいで子どもの学力はいくらでも伸ばすことができるのです。著書『世界のトップ1%に育てる親の習慣ベスト45』より、今日からわが子に実践できるメソッドをご紹介します。お父さん、お母さんは必見!