(この記事は2017.08.07に公開されたものの再掲です)
情報管理という面でも脆弱性が指摘される日本。サイバー犯罪で不正侵入を行う動機の21%は、諜報活動(製造業の知的財産権などを狙う)を目的としているとか。国際競争力をつける、というのはこういう点に目を配る必要もあるかもしれません。
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日本人のほとんどは危機感を持っていないが、そうこうしているうちに、ハッカーの皆さんにとって、日本はとても魅力的な“市場”となってしまった。この現実を、我々はしっかり見なければならない。
そもそも、なぜ、どこが、魅力的なのか?
話題書『サイバー犯罪入門 国もマネーも乗っ取られる衝撃の現実』より、我々が気づいていない日本市場の脆弱性についてまとめた項目を、特別公開!
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〈マーケットとして〉日本市場の魅力
第3章では、サイバー犯罪を、ビジネス的な側面から解説していく。
日本はIT環境が整っているため、日本をターゲットにハッキングを行おうとした時の参入障壁も低く、コストも「安い」。
しかも、人々のセキュリティ意識はまだまだ低く、対策も十分ではないので、狙うなら「手っ取り早い」。
そして、その先には、金融資産や知的財産など「旨い」話も待っている。
つまり、日本は「安い・早い・旨い」の魅力的なマーケットだ。まるでファストフードのキャッチコピーのようであるが、サイバー犯罪を犯す上で、あまりにも魅力的な市場である。
それぞれ、詳しく見ていこう。
「安い」
総務省によると、2015年末時点でのインターネット人口の普及率は、83.0%。つまり、8割以上の日本人に、何かしらの方法を用いたインターネット経由でたどり着くことができる。
ちなみに、料金は、米国の半分くらいの金額で利用できるし、通信速度も、世界の上位10位以内に入るくらい速い。
サイバー犯罪を行うための大前提として、「インターネットに繋がっている」必要があるが、日本であれば、その“コスト”を安く抑えられる。
無差別に「フィッシングメール」(詳細については、第4章にて述べる)をバラまいたり、不特定多数のサーバへ侵入を試みたりすることができるのも、この環境が有利に作用しているからである。
「早い」
あなたの周りを見回してほしい。サイバー犯罪について、自身が被害に遭うという想定をしていないままITを利用している人が多いことだろう。「何を根拠にITを信用しているのか?」と問われて、答えられる人は少ない。
さらには、実際に被害に遭っても気付かないことが多いのである。米国のセキュリティ企業ファイアアイの調査結果(2015年)によると、被害に遭ったことに「外部から指摘されてはじめて気付く」場合が、3件のうち2件だ。
2015年に経産省所管のIPA(情報処理推進機構・Information-technology Promotion Agency, Japan)が、企業向けに実施した調査では、「攻撃あったが被害なし」と「攻撃なし」と回答した企業が、合わせて8割を超えていた。
そんなはずはない。世界中で、一日に3万サイトが不正侵入の被害に遭っているのだ。
サーバやインターネットに接続できる家電などは、インターネットの回線に接続すると、ものの数分で攻撃を受け始める。
日本では特にインターネットのコストが安いため、ハッカーは侵入できるサーバなどを常に探すことができる。まさに、“ハッカー天国”なのである。
「旨い」
米国の大手通信業者・ベライゾンによると、不正侵入を行う動機の73%が金銭目的によるものである。
日本は、米国、中国に次いで世界第3位の名目GDPを誇り、経済的にも豊かな国である。ターゲットとして間違いなく「おいしい」。
また、不正侵入を行う動機の21%は、諜報活動を目的としている。
政治的な目的によるものもあるが、日本では、製造業の所有する知的財産などを狙うものも多い。
知的財産に関しても、狙われる領域にトレンドがある。「中国の五ヶ年計画で重点領域にあげられている産業は狙われやすい」という説があり、実際、その説を裏付けるような事例も多い。
これらのことからも、日本は「サイバー犯罪を収益事業化」させるための条件が整った魅力的な市場であるということが見て取れる。
サイバー犯罪入門 国もマネーも乗っ取られる衝撃の現実
今年の5月、6月と、世界規模の大きなサイバー攻撃があったことは、記憶に新しい。
チェルノブイリの原発までもが一時停止してしまうような、危険なものだったにもかかわらず、我々日本人の多くは危機感が薄い。
しかし、いまや、世界のいたるところ――特に貧困層の多い国で、優秀なハッカーがどんどん生まれ、組織化され、場合によっては、犯罪組織やテロリスト集団に組み込まれていいて、世界中をターゲットに、何十億もの大金を得ている。
もはや、サイバー犯罪は、「ノーリスク・ハイリターン」のビジネスと化している!
我々は、「なんでもネットで調べればわかる」と思ってしまうが、実は、サイバー犯罪について正しく理解している人は少なく、メディアでさえ、誤った報道をしているケースが多いのが現実。
本書には、ネットでは読めないことがたくさん書かれています。自分の生活を守りたい現代人、必読の一冊ができました!