北海道から沖縄まで、ふるさとの「名低山」100座を山岳ガイド協会所属のプロが紹介した『日本百低山』(日本山岳ガイド協会編)より、各都道府県の「名低山」をご紹介。
第7回は、福島の「名低山」志津倉山、二岐山から、「二岐山」を。
二岐山 futamatayama 天栄村・下郷村 1544m
ブナ林の山、麓に秘湯
谷文晁が描いた双耳峰
北アルプスの槍ケ岳はどこから見ても「あれが槍だ!」と分かるように、この山も福島県内なら遠く離れていても判別できる。男岳、女岳の二つのピークをもつ双耳峰であり、この山さえ見つけられればそれを基点に周辺を見分けられる。
江戸時代後期の代表的画家、谷文晁の「日本名山図会」にも描かれた。江戸時代から知られた山だったのだろう。
山麓にある秘湯、二岐温泉まで以前は細い砂利道だったが、今は舗装道が通じる。公共
交通機関もあるが、便数が少ないので、車利用が便利か。
御鍋神社からの登山道を紹介する。温泉から登山口まで砂利道の林道を二俣川に沿って入る。徒歩なら約1時間。車なら登山口手前に50台は駐車可能な駐車場がある。
登山道は林道から右に入ると間もなく八丁坂の急登が続く。1時間ほど頑張ろう。中腹のブナ平となる。ブナ、アスナロの大木があちこちに見られる平たん地で、ここは伐採の残木も多く、秋には紅葉も楽しめる。ブナ平から男岳山頂まで標高差約300メートルを再び一気に登り、2等三角点のある山頂に立つ。福島県には多くの山があるが、ここの展望は360度、遮るものは全くなく、春なら南の甲子、那須連峰や、西には会津、越後の山々。飯豊連峰、磐梯山、安達太良山など著名な山の展望を独り占めできる。
男岳とセットの女岳(1504メートル)はすぐ北側。20分なので余裕のある人は足を延ばすとよい。時間がない人は御鍋神社登山口に下りれば、約3時間半の行程で素晴らしい自然が楽しめる。
この御鍋神社のご神体は、大鍋という珍しいものなので、ぜひ立ち寄ってみては。
登山道は地元天栄村の山岳会が整備を行っている。低山でもやや標高の高い山だが、家族連れでも大丈夫。ただ、山開きは5月下旬なので、それ以前は役場などにコース状態を確認してほしい。下山後は、個性豊かな宿がある二岐温泉で汗を流して疲れを癒やそう。泉質は硫酸塩泉でとても気持ちが良い。
(日本山岳ガイド協会正会員 安部孝夫)
ガイドの目
女岳から北東側へ下る周回コースを取れば、二岐温泉に下山できる。ただ地獄坂というロープのある急坂で注意を要する。また車の場合はスタートの御鍋登山口まで車回収に約1時間を要する。5月の大型連休まで北斜面には雪が残る年もある。水場は温泉を過ぎ、二俣川の橋を渡った所にある。
足は車利用が便利だ。東北道の須賀川インターから二岐温泉まで約45キロ。公共交通機関はJR須賀川駅から福島交通バスがあるが、1日2便だ。
参考タイム
二岐温泉バス停(1時間)−御鍋登山口駐車場(5分)−登山口(50分)−ブナ平(50分)−男岳山頂(20分)−女岳(1時間30分)−御鍋登山口(5分)−駐車場
日本百低山
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