北海道から沖縄まで、ふるさとの「名低山」100座を山岳ガイド協会所属のプロが紹介した『日本百低山』(日本山岳ガイド協会編)より、各都道府県の「名低山」をご紹介。
第16回は、富山の「名低山」、中山、尖山から、「尖山」を。
尖山 togariyama 立山町・559m
立山・剣の大展望台
四季楽しい「とんがりやま」
富山平野から立山方面に向かい、最初に現れる特徴的な形状の山だ。江戸時代の立山信仰の拠点で、優秀な立山案内人のふるさと、芦峅寺の手前にそびえ、剣岳・立山の絶好の展望台である。山頂に三角点が置かれた当時は「布ケ岳」と命名されていた。その後「布倉岳」を経て、現在の山名になった。四季を通じて気軽に登ることができ、昔から親しみをこめて「とんがりやま」と呼ばれている。どこから見ても同じ三角形で、頂上はスパッと切ったように平らになっていて、円すい形の形状からピラミッド跡であるとか、UFOの基地であるとか、夢いっぱいの説もある。山頂では山岳信仰に伴う祭儀跡も発見されて、それ故、最近ではパワースポットとしても取り上げられている。
富山地方鉄道立山線の横江駅から横江集落に向かう。立山町のゆるキャラ「らいじぃ」の案内板が、無人駅である横江駅と横江集落の入り口にあり、マイカーならここが駐車場となるだろう。集落を抜け、林道を進むと「とんがり山2㎞」の分岐点の標識に出合う。分岐から尖山に向かって歩き始めると、円すい形の山がますます近くに見えてくる。林道の終点にある小さな「登山帳小屋」が実質的な登山道の始まりの目印だ。
杉林の中を沢に沿って緩やかに登る。小さな滑滝を過ぎて沢を渡ると、やがて杉林が少し開けて明るくなる。道は左に折れて、いよいよ尖山本体の登りが始まる。
登山道は西斜面を巻くように登り、それにつれて眼下に常願寺川が広がる。最後は北面から階段を上りつめて山頂へ。
尖山は、水平の台地で、山頂からの展望は360度見渡す限り。大日岳(2501メートル)が良く見え、北へ剣岳(2999メートル)、毛勝三山と続き、南は立山(最高点3015メートル)から竜王岳(2872メートル)へ。手前には弥陀ケ原と鍬崎山(2090メートル)。振り返れば常願寺川扇状地もよく見え、空気が澄んだ日には富山湾や能登半島を望む。春、立山連峰に雪が残る頃や、秋、初雪の頃には頂上にある展望図と照らし合わせると、さらに立山の峰々の展望を楽しめるだろう。
(立山ガイド協会正会員 佐伯岩雄)
ガイドの目
年間を通して登ることができる。だが、積雪期は単独、初心者だけの登山は避けること。下りでルートを外すと取り返しがつかない場合もある。標高が低いため、夏場は早朝に登るのがお勧め。
夏椿峠のルートもあるがこちらは急登になるため、子ども連れや初心者には通常のルートをお勧めする。
ルート上には小屋やトイレはない。手前のドライブイン「あるぺん村」などで済ませてから入山することをお勧めする。
参考タイム
横江駅(40分)−登山口(1時間)−山頂(1時間30分)−横江駅
日本百低山
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