北海道から沖縄まで、ふるさとの「名低山」100座を山岳ガイド協会所属のプロが紹介した『日本百低山』(日本山岳ガイド協会編)より、各都道府県の「名低山」をご紹介。
第25回は、滋賀の「名低山」賤ケ岳、武奈ケ岳から、「武奈ケ岳」を。
武奈ケ岳 bunagatake 大津市 1214m
なごり雪と春を探す山
パノラマ抜群、比良最高峰
なごりの雪と春の兆しを見つけに登る。日本最大の湖、琵琶湖の西岸に連なる比良山地は千メートルほどの標高だが、冬季は豊富な積雪があることで有名だ。この山は比良山地の最高峰であり、頂上からは琵琶湖のかなたに雪の白山など素晴らしい展望が開ける。ルート上の御ご殿てん山やまから見る姿も美しく、見てよし、登ってよしの山である。
かつて若狭から京都へサバを運んだことから「鯖街道」とも呼ばれる国道367号の葛川坊村町の集落から登山が始まる。朱塗りの橋を渡り、明王院を抜けるとすぐに杉の植林地の登りとなる。申し訳程度に現れる緩傾斜地で、小休憩を取りながら進む。モミの大木が目立つようになると平らな場所に着く。標高700メートル近辺のここまで高度差約400メートルを乗り切ることが体力面の核心となる。ここで行動食と水をしっかり取っておこう。再び急斜面が目の前に出てくる。つづら折りの道を行き、標高800メートル付近で大きな尾根上に到達する。広くなだらかなこの場所は下山ルートのチェックポイントとなるので、よく観察しておこう。ここからは山腹につけられた緩やかな登山道を進み、浅い沢を行く。沢の右手、斜面につけられた急登を見逃さずに。樹林に囲まれた尾根道も御殿山までだ。
標高1097メートルの御殿山からワサビ峠を経て武奈ケ岳へ。樹木は背が低いので、抜群の景色を楽しむことができる。視界が利くようなら地図をチェックしよう。山頂手前の幅広い尾根には吹きだまりで大量の雪が残っている年もある。頂上は360度のパノラマだ。近くに福井県境から伊吹山、鈴鹿の山々を、さらに白山に加えて遠く乗鞍岳や御嶽山も望める。眼下に広がる琵琶湖とのコンビネーションを楽しんだら往路を戻ろう。
ワサビ峠から登り返すと御殿山。ここで武奈ケ岳に別れを告げる。標高800メートル付近では幅広い尾根を進まず、右手の急な登山道に向かう。蓄積した疲労が出るころだ。
しっかり行動食を取り、水分を補給しよう。休憩時は、体を冷やさぬよう上着を1枚着るといい。明王院に近い杉の植林地は急斜面だ。慌てず確実に丁寧に下る。
(日本山岳ガイド協会正会員 加藤智二)
ガイドの目
JR堅田駅から江若交通バスで登山口の葛川坊村町へ向かうが便数は少ない。マイカーなら安あ曇ど川がわ対岸の駐車場を利用できる。春は、里は桜が盛りでも、山にはまだ雪が残っている。登山口は標高約300メートル、前半の標高800メートル地点まではペースを守って無理せず登ろう。下山時は雪解けと泥によるスリップと転倒に注意したい。
見晴らしの良い西南尾根は遮るものがない吹きさらしの場所でもある。防風ウエアの着用に加え、悪天強風時は御殿山で引き返す判断が必要だ。
下山後、北上して「くつき温泉」に立ち寄り、汗を流すのも良い。
参考タイム
登山口(1時間30分)−800メートル地点(50分)−御殿山(1時間)−武奈ケ岳(30分)−御殿山(30分)−800メートル地点(1時間)−登山口
日本百低山
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