北海道から沖縄まで、ふるさとの「名低山」100座を山岳ガイド協会所属のプロが紹介した『日本百低山』(日本山岳ガイド協会編)より、各都道府県の「名低山」をご紹介。
第40回は、福岡の「名低山」宝満山、犬ケ岳から、「宝満山」を。
宝満山 homanzan 太宰府市、筑紫野市 829m
歴史に彩られた史跡の山
梅の香に包まれる天満宮
歴史と伝説に彩られた山だ。7世紀に置かれた大宰府と密接な関係がある。大宰府の鬼門(北東)方向にあることから厄よけの神を祭った。最澄が参拝して遣唐使の平安を祈願したという。修験、信仰の山として発展、遺構も多く、国の史跡指定を受けている。
太宰府天満宮は、この地で亡くなった菅原道真を祭る。学問の神様として名高い。国の重要文化財の本殿は、道真の墓の上に建てられている。
西鉄太宰府駅から天満宮に向かう。早春なら、左遷された道真を慕って都より飛んできたという飛梅をはじめ、6千本の梅が境内に咲き、芳しい香りに包まれる。
社殿の裏へ回り、舗装道路を右へ、約2キロで正面登山口の竈門神社に着く。本殿の左から車道に出て、1合目の鳥居から林に入り、林道をしばらく行く。池のそばで左に登山道が分かれる。林道を横切って進むと林道終点に出て、ここから照葉樹林の道となり、自然石の階段となる。すぐ上に一の鳥居、2合目標識がある。20分程石段を上ると3合目の水場に着く。
ここから杉木立の中の急坂となる。5合目を過ぎて、百段ガンギと呼ばれる切石の整然とした石段が現れる。これを上りきると坊跡が多い西院谷。さらに10分程で7合目。竈門山碑という石碑のある中宮跡に出る。平たんな道を過ぎ少し下ると、道は三つに分かれる。右はキャンプセンターへ。左は羅漢道へ。真ん中が正面道である。大きな花こう岩の岩につけられた階段を上り、竈門岩を過ぎ、袖すり岩を抜け、急な石段を上りきると山頂だ。竈門神社の上宮がまつられている。
露岩の山頂は360度の展望だ。福岡市内から玄界灘、壱岐島、筑紫平野、そして英彦山系が連なる。冬場は九重連山はじめ条件次第で阿蘇山の噴煙も望めるだろう。
下山は来た道を帰ってもよいが、山頂直下にはキャンプセンターがあり、水場やバイオトイレがある。鎖のついた石段を下り、尾根道から右へ分かれる道を下るとキャンプセンターに着く。ここからは中宮跡へ続く、女道をたどり下山する。
(日本山岳ガイド協会正会員 浦一美)
ガイドの目
西鉄電車で太宰府駅まで行けるので、利便性が高く、一年を通して登山者でにぎわっている。竈門神社にはトイレがあり、出発前に使うとよい。2合目からは樹林の中となる。階段が延々と続くため、こまめに水分の補給をしてほしい。3合目の水場では空いた水筒に補給をすること。
正面道周辺には修験者達の活動場跡が数多く残る。1982年には峰入りなど山伏の行事が復活した。また、江戸時代から縁結びの山として知られ、若者の登山も多い。
下山後、天満宮に寄ってみよう。参道で焼かれている「梅ヶ枝餅」は道真公を慰めたというお土産として有名である。
参考タイム
西鉄太宰府駅(40分)−竈門神社(30分)−一の鳥居(55分)−中宮跡(20分)−山頂(10分)−キャンプセンター(20分)−中宮跡(1時間)−竈門神社
日本百低山
- バックナンバー
-
- 栃木の「名低山」は、社山、二股山。【リバ...
- 石川の「名低山」は、医王山、大嵐山。【リ...
- 富山の「名低山」は、中山、尖山。【リバイ...
- 新潟の「名低山」は、金北山、二王子岳、守...
- 神奈川の「名低山」は、大山、明神ケ岳。【...
- 東京の「名低山」は、日の出山、御前山、天...
- 千葉の「名低山」は、大福山、富山。【リバ...
- 埼玉の「名低山」は、伊豆ケ岳、四阿屋山。...
- 群馬の「名低山」は、子持山、鍋割山。【リ...
- 茨城の「名低山」は、神峰山、吾国山。【リ...
- 福島の「名低山」は、志津倉山と二岐山【リ...
- 山形の「低名山」は、経ケ蔵山、瀧山【リバ...
- 秋田の「名低山」は、二ツ森と森吉山【リバ...
- 連休はフレッシュな山が楽しめる、宮城の「...
- 岩手の「名低山」は、源太ケ岳、姫神山【リ...
- 青森の「名低山」は、梵珠山、名久井岳【リ...
- 北海道の「名低山」は、礼文岳、札幌岳、チ...
- 脚力に自信のない方にもおすすめ。広島の「...
- 富士山と駿河湾の絶景が楽しめる、静岡の「...
- 沖縄の「名低山」は、与那覇岳、於茂登岳。
- もっと見る