『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』がNHK「よるドラ」でドラマ化中~!おかげさまで大きな反響を頂いております。そして今日は早いもので最終回の放送当日!名残惜しい~!と叫びつつ、ドラマ化試し読みもこちらでラストです。今回は新居探しエピソードの1話目を掲載。新たな物件探しを始めた二人がどんな結末を迎えるのか。それは本日のドラマ、あるいは本で楽しんで頂ければと思います~~~☆
※ドラマの放送は11月8日から毎週月曜日、NHK総合にて夜10時45分から11時15分です。
「いま、物件を探してるんですけど」
みほさんとの会話、この言葉から始まる事が、最近増えました。
もともと、私がひとり暮らししていた今のアパートに、みほさんが越してきたのが六年程前。
ふたり暮らしになって、ヒロミさんに部屋をオシャレバリ風モテ部屋にリフォームしていただいてから、はや二年。
コタツを挟んで何となくお互いの陣地が出来るようになって、収納の棚も二人分作っていただいて、機能的になったものの、それでも手狭感が拭えずにおりました。
ありがたい事にお仕事も少し増え、そうなるとなおさら、オンでもオフでも二人でいる時間が増えます。
私は、いい歳してお恥ずかしいのですが、寂しがりな所があり、下宿や弟との同居経験もあってか、ふたりでいる事もあまり苦になりません。
ですが、もともと一人っ子のみほさんは、やはり一人の時間が欲しいらしいのです。
そういう時や、なにか小競り合いをして一緒にいたくない時などは、こんな言葉をみほさんが口にします。
「ちょっと一人で西友に行ってきます。」
この言葉に「みほ、一人になりたい」のニュアンスを汲み取って、こちらはこちらで
「じゃあ私はうちに帰ってます」
もしくは、
「じゃあ私はイトーヨーカドーに寄るわね」
などと言って、距離を詰めない様にして気をつけていたつもりだったのですが……。
少し前から、みほさんが
「ああ、お姉さんが多いわ〜『えりこ過多』だわ〜」
と、何やらオリジナルな造語を持ち出して、直接的に一人になりたいアピールをしてくるようになってきました。
最初、耳だけで「えりこ過多」と聞いた時は、私のいかり肩の事をそう呼んでいるのかしら。それとも「豚肩ロース」の様な、何かのお肉の部位に例えているのかしら、と思ったりしましたが、違いました。
私といる時間が多いのを、過多と言っているのです。
それは嫌いという事なのでは?と聞いたら、
「嫌いではないです、ただ多いんです」
とみほさん。
このニュアンス、分かりますでしょうか?
とはいえ、えりこ過多になられたら、西友辺りを回ってきてもらえばいいし、こちらもあまり顔を合わせないようにおとなしくしていれば、何とかなるのではないかと、思っておりました矢先!
みほさんが、「布団を敷いても、床に寝ているのと同じ感触になっちゃったから」と、長年使っていた布団を買い換えたのです!
買い換えたのは、もちろん良いのです。
問題は、シングルからいきなりセミダブルの布団にした点です。
元々それぞれの陣地が、一畳ずつしかないのに、みほセミダブルのおかげで、私の一畳の陣地がさらに狭く感じられるようになりました。
我が家の陣地は、家具調コタツを挟んでの一畳ずつなのですが、対岸にドデンとセミダブルの布団が敷かれると、必然的にコタツもこちらに寄ってくる感じで、私の布団がコタツの足でグッと押され、アルファベットのEみたいな形に。
えりこの頭文字もEだからピッタリよね、じゃないのよ、みほさん。勘弁してほしいわ〜。
この歳になって、アルファベットのEの布団で寝る事になるとは思わず、今度はこちらの不満感がじわじわと増す日々。
さらに、私が寝ようとすると、宵っ張りのみほさんが動画をスマホで見始めて、その声がとても気になって寝られず。
以前みほさんのエッセイにも書かれていましたが、ものすごい声でなくバジェットガエルの動画や、カッコウがほかの鳥の巣に卵を産んで生まれた途端、生存競争する托卵の動画や、頭や前足の上に何かしらを乗せてもじっとしている猫の動画とか。(ネコの首につけている鈴の音とかがわずかにチリンチリンなるのが聞こえたりして、それが気になる!)
イヤホンをすればいいのに、なぜかしないで見るのです。その上、微妙に聞こえてくるか聞こえてこないかの音量なので、なおさら気になってしょうがありません。
私が寝るとすぐイビキをかくのが腹立たしいので、報復も兼ねているのだわ、そうに違いありません。
その上、寝たら寝たで、「昨日も寝顔が腹立たしかった」などと言われるのです。腹立たしいなら見なきゃいいと思うのですが、お手洗いに立ったりすると、つい見てしまうのだそうです。六畳一間トラップ!
人さまからしたら、どうでもいいチマチマした事を長々書いてしまいました。
お互い、一人に一つずつ部屋があれば、もっと気持ちを荒立てずに穏やかに暮らせるのかもね〜と話す事が増え、ここよりいい環境はそうそうないと思うけど、条件に合った所があれば、引越しも考えましょうかね、という流れになりました。とはいえ、まずは「二間ある所での同居」が前提で!!
それ以来、みほさんは怪しげな動画を見る代わりに、スーモやらアパマンショップやら地元の不動産の物件情報やらを、くまなくじっくり見ています。
そして朝に晩に「いま、物件探してるんですけど」から会話が始まり、「これはどう思う?」「これは怪しいですかね」と話しかけてくれるようになりました。二人で理想の間取りなどを話したり、紙に書いたり。
倦怠期の夫婦の前に現れた青汁のCMのように、引越しへの前向きな思いが、二人の関係性にもいい流れを与えてくれました。
こんな感じでゆるやかに、姉妹の引越し話は始まったのでした。
つづく。
阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし
40代、独身、女芸人ふたりの地味おもしろい同居生活エッセイ。
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