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かけこみ人生相談

2017.10.25 公開 ポスト

「リーマンショック以降仕事を失いメンタルを病みました。もう何年も笑っていません。」回答「人が過去を懐古するのは、今を変える勇気がないとき。アランのあの言葉を贈ります」岸見一郎

今回の回答者は岸見一郎さんです。
 

◎相談(負け組・グラフィックデザイナー・56歳・男性・愛知県)

 人生に絶望し生きる気力が湧きません。死にたいと思うこともしばしばありますが、自ら死ぬだけの勇気もありません。私は現在56歳、デザイン会社を経て50歳くらいまではフリーランスの広告デザイナーをしておりました。仕事もそれなりに順調でした。建てた家の住宅ローンも払い終わり、2人の息子も奨学金に頼らず大学を卒業させました。

 ですが、あのリーマンショック以降、クライアントとのパイプが次々と切れ仕事を継続することが不可能になりました。広告デザインしかやってこなかった50代に再就職の道はほとんどありません。いろんな業種に求人応募しましたが全部不採用。現在は食べるためにやむなく派遣型風俗店に就職しサイトデザインやバナー、女の子の画像加工などの仕事をしております。情け無いです。惨めです。収入も40代の頃の半分以下になりました。

 勤めている店は表向き株式会社ですが、社会保険も雇用保険もありません。仕事の内容は酷いものです。職場環境も劣悪で、だらしがない経営者の影響でまるでゴミ屋敷です。私が片付けても片付けてもゴミなどがいつも散乱しています。

 家族にもこんな仕事をしているなんて話せませんし、私の給料は女の子が身体を売って稼いだお金から捻出されていると思うとやり切れません。完全にメンタルを病んでしまい、心療内科に通っています。もう何年も笑った記憶がありません。それでも食べるために働いています。辛いです。私はもう現状から逃れる方法はないのでしょうか。

◎お答えします(今回の回答者:岸見一郎)

 現状から逃れる方法があるか、ないかといえばあります。ただし、そのためには大きな決心が必要です。
 まず、今の仕事をどうするのか考えなければなりません。仕事内容、職場環境に満足できず、それを改善するのが難しいのであれば、転職をするしかないでしょう。

 辞めるわけにはいかないのだといわれるかもしれませんが、現状から逃れたいと思われるのであれば、行動を起こさなければなりません。幸い、住宅ローンも終わり、息子さんたちも大学を終えておられるのですから、これからの人生を慎ましやかに生きることができないわけではありません。

 次に、過去の栄光を捨てなければなりません。過去を手放すことは時に簡単なことではありませんが、過去には戻れないという現実を受け入れ、今できることから始めるしかないと思います。過去を懐古するのは、往往にして、今の生き方を変えないためです。

 第三に、家族を信頼することです。今の仕事のことを話されていないとのことですが、家族に打ち明けてみられたらどうでしょう。あなたが一生懸命家族のために働いてこられていることに感謝されているはずですから、あなたを非難されるようなことはないと私は思います。

 もう何年も笑った記憶がないとのこと。私はフランスの哲学者、アランがこんなことをいっているのを思い出しました。
「幸せだから笑うのではない、笑うから幸せなのだ」

 毎朝、笑うところから一日を始めてみませんか?

 

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橋本治『橋本治のかけこみ人生相談』

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岸見一郎

1956年、京都府生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学(西洋古代哲学史専攻)。著書に『アドラー心理学入門』(KKベストセラーズ)、『幸福の哲学』(講談社)、『人生を変える勇気 踏み出せない時のアドラー心理学』(中央公論新社)、『老いた親を愛せますか?それでも介護はやってくる』『子どもをのばすアドラーの言葉 子育ての勇気』『成功ではなく、幸福について語ろう』(幻冬舎)訳書にプラトン『ティマイオス/クリティアス』(白澤社)などがある。共著『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)はベストセラーに。

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