元ピチカート・ファイヴのボーカルでシンガーの野宮真貴さんの『おしゃれはほどほどでいい 「最高の私」は「最少の努力」で作る』が、このたび文庫になりました。帯にはのんさんがこんなメッセージをくださいました。
「美しくてチャーミングな野宮さんが“ほどほど”でいいと言ってくれるなんて、心が休まります。
私も明日から自信を持って出かけられそうです。」――のん(女優)
発売を記念して、本書の一部を抜粋してお届けします。
私が続ける特別じゃないこと
「美しく健康で、おしゃれでいるために、野宮さんが続けていることは何ですか?」
こんな質問をよく受けます。
「特に何も……」
私の答えはいつも同じ。インタビュアーは肩透かしを食らったような表情になります。でも謙遜でも見栄でもなんでもなく、取り立てて人にお伝えするようなことがないので、こう答えるしかないのです。
体幹トレーニングとか、玄米食とか、低糖質ダイエットとか、特別なエステとか、雑誌に取り上げて面白いようなキャッチーなことは何もしていません。しかも白湯とか温野菜とか、健康に良さそうだけれど味気のないものは、私にとっては「つまらない食べ物」としてあまり興味がないのです。
でも、何度も同じ質問を受けるので、改めて考えてみました。
本当に、私は何もしていないのか?
「何もしていない」の意味は「特別なことは何もしていない」ということ。私はもしかしたら、「特別じゃない何か」を毎日続けているのかもしれません。
歌手デビュー36年、57年間生きてきた私が心がけていることは、いつも「今が最高の私」と言える自分でいるということです。
人前に出る歌手という仕事を生業(なりわい)にしていることもあり、常に今のベストで勝負する必要に迫られます。
そのためには、年を重ねることで変化する身体からだや気持ちを客観的に観察して、おしゃれやメイクや美容によって自分を絶えずアップデートしていくこと、それを休まず続けていくことが大事です。
でも、続けることは本当に難しい。面倒くさいし、疲れます。年を重ねるとなおさらおっくうになります。
私はシンガーになりたての若い頃、「嫌いな言葉は、努力・忍耐・根性」などと粋がっておりました。
50代も後半に差し掛かった今は、本当に「努力、忍耐、根性」とは縁がなくなってきました。努力しなくては手に入らないものはもう欲しくないですし、辛いことなんて何ひとつしたくないですし、根性は好きなことをする時だけ発動するものになりました(年を重ねるごとに、自分に都合よく図々しくなるようです)。
目の前に未来が延々と続いている若い時は、“いつか”を夢見て、努力したり、忍耐したりするものですが、未来が永遠に続くものではないと気づいた私たち大人は、“いつか”のために今を犠牲にするわけにはいきません。
今の自分を愛し、今持っているものを十分に活(い)かし、今という時を大切にしたいと思うのです。
今回、『おしゃれはほどほどでいい~「最高の私」は「最少の努力」で作る~』というタイトルをつけました。
「ほどほどでいい」という言葉には、いろいろな意味を込めています。
「ほどほど」とは「度を越さずに適切であること」です。
前作『赤い口紅があればいい』でお伝えしたように、美容もおしゃれも際限なく追求せずに、「ほどほど」に効率的で効果的なやり方で美人になって、余った時間とお金で他のことを楽しむ。その方がトータルで幸せだと思うのです。
人は物事を合理的に最少の努力でやろうとすると、一番大切なポイントが見えてきます。それはあなたの最大の魅力を上手に見せることかもしれませんし、逆に欠点を適切に隠すことかもしれません。
美容もおしゃれも(仕事もヘルスケアも、そしておそらく恋愛も)やりすぎたり、やらなさすぎたりするのもよくありません。過ぎたるはなお及ばざるが如し、無理がない「ほどほど」が一番上手くいき、一番長く続きます。
そして、「ほどほど」とは、「足るを知る」ということでもあります。お金、名声、恋人、美貌、上を見たらキリがない。私はこれでいい、と思わないと、幸せにはなれません。理想に向かって、ベストは尽くすけれど、「身のほど」という言葉があるように、どこかで自分のリミットをしっかり持つこと。この加減が大事ですし、その加減を楽しむのが人生です。
この本では、「今が最高の私」と言えるために、毎日している“特別じゃないこと”、努力・忍耐・根性なくしても、誰でもできる“普通のこと”を書いてみました。
もちろんこの本で紹介することを全部やる必要はありません。ひとつでもふたつでも、続けられそうなことがあれば「ほどほど」にやってみる、というくらいでよいのです。
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