「インターネットで一番数字を持っているライター」と呼ばれるヨッピーさん初の本『明日クビになっても大丈夫!』が発売になりました。爆笑しつつも大共感、そして仕事について改めて考え直すきっかけとなる本書の試し読みを少しずつ掲載していきます。第十一回は、不毛なマウンティングが行われている場所には行かないが吉、というお話です。
* * *
悪口ついでに六本木について書いておこう。これは「東京で言うところの六本木」という意味で、大阪なら北新地かもしれないし、名古屋なら栄さかえなのかもしれない。よくわかんないけど。とにかくそういう「金持ちが好き好んで飲みに行く場所にある会員制のバー」の事だと思えばいい。あれは完全に「カスの吹き溜まり」です。いやマジで。本当にそうなんです。往々にしてそういう会員制のバーにはカスが集まるようになっている。
では何故、そういうゴミカスの人達が麻布の会員制バーに行きたがるかと言うと、「普通の人と俺は違うんだぞ!」と周囲にアピールしたいからだ。ああいう所に行くのは、「俺は、カネも持ってるしイケてるんだぜ!」って周囲にアピールしたくてしょうがない人達なのである。顔が売れてる芸能人や有名人なら、確かにそういうある意味クローズドな場所で飲んでる方が楽っていう部分はあるかもしれないけど、別に顔が売れてるわけでもなんでもない、「お前誰やねん」みたいなやつが偉そうな顔で会員制バーで飲んでたりするわけであります。これがまた高確率でイヤなやつなのだ。
さっきも書いた通り、会員制バーに行きたがる人は「周囲より偉い自分」を誇示したいタイプの人間が多い。そうなると当然、会話の端々で「俺はスゴいんだぞ」などと、いわゆる「マウンティング」をカマしてくる。自分の仕事の話、車の話、女の話、などなど。これがもう、徹頭徹尾不毛である。
以前、友達に誘われて行きたくもないお店に渋々行ってみたら、客の一人が「こないだAKBの〇〇の付き添いで博多に行ったんだけど~」などとブチ上げ、もう一人が「『シン・ゴジラ』のエンドロールにオレの名前が出るんだけど~」と対抗し、返す刀で隣の男が「コムロがさ~(小室哲哉の事)」と雄たけびをあげる、という魑魅魍魎が暴れ回る地獄みたいな会合に遭遇した。「さすがにそんなやついないでしょ!?」と思うかもしれないけど、マジですからね。そういうしゃらくさい場所の飲み会にはしゃらくさい連中が集まると相場は決まっているのだ。集まってくる女性にも「女性」を売り物にしてるような、愛人稼業みたいな連中も多い。なんていうか、「人間の汚いところ」みたいなのがバッシバシ見えてしまうので本当にげんなりしてしまうのだ。そんな所に一切顔を出す必要はない。
六本木でげんなりした話として、もうひとつ実例を紹介したい。僕が独身の頃、女性の友人に「人数が足りてないから来てくれ」ということで合コンに行った。僕の知り合いは幹事の女性一人なので男性陣は全員初対面の他人である。聞くところによると大手の広告代理店で働いているらしい。六本木のコジャレたレストランみたいな所で会合がスタートしたのだけど、その広告代理店の男がおもむろに、当時発売されたばかりのiPadを取り出して「こないだダイビングに行ったんだけどさぁ」などと、撮ってきた写真をペラペラとめくりながら偉そうに解説するのである。それだけでもかなりイラッとするのに、「でね、この写真見てよ。ほら」と男が一枚の写真を参加者に見せつけるのである。水中の写真だ。ダイビング中にでも撮ったんだろう。よく見ると青い海の中に、小さく何かが写っているのだ。「ほら、イルカ!」男が満面の笑みで写真を拡大すると、確かにぼんやりとイルカらしきものが写っている。
でも、何がつらいってイルカまでめちゃくちゃ遠いのだ。すごくぼんやりと、「確かに、イルカかなこれ……?」くらいの影しか見えない。女性陣が言う。「すごーーい! イルカだ~~~! カワイイ~~~!」。カワイイわけないだろ、って思うわけです。お前こんなもん、全然マトモに写ってへんやろ、と。拡大しすぎてちょっとジャギジャギしとるやんけ、と。でも女性の気持ちはわからなくもない。イルカを見たら「カワイイ!」と言うように訓練されているのが女性なのである。イルカのフォルムがカワイイのであれば、我々の股間にブラ下がっている如意棒のフォルムだって似たようなもののはずなのに、である。そんなわけで女性の「カワイイ~!」の声に調子にのったのか、ペラペラと他のアングルの写真も見せつけてくるのです。でも全部小さい。イルカが、小さい。それなのになんとなく女性陣は「カワイイ!」と連発し、男はドヤ顔。どこの地獄なんだここは、って思うわけです。
これが上野の立ち飲み屋だったら、女性陣も「いや小せぇし!」などと突っ込めたのかもしれないけど、六本木のコジャレたレストランではなかなか本音を言えない。この、本音と建て前のうち、「建て前」で過ごしているとマジでいろいろと価値観の軸がズレていくような感覚に陥ってしまう。だから、六本木で飲んではいけない。
明日クビになっても大丈夫!
「ウェブで一番数字を持っているライター」と呼ばれているヨッピーさん、初の書籍『明日クビになっても大丈夫!』が発売になりました!面白いのに超マジメで使えるビジネス書になっています。発売になったばかりの本書から、少しずつですが試し読みを掲載していきたいと思います。