2017年7月18日、日野原重明さんが105歳という年齢でこの世を去られたことは、みなさんの記憶に新しいと思います。2016年年末から始まったインタビューでは、「読んでくれる一人一人と対話しているような本にしたい」という日野原さんの希望を受けて、様々な質問に答えていただく形で進んでいきました。
105歳という長い人生を生ききった日野原重明さんが、死の直前まで私たちに伝え続けたメッセージとはなんだったのか。
最後の本となった『生きていくあなたへ 105歳 どうしても遺したかった言葉』より、その対話の一部を紹介させていただきます。
<質問>「日野原先生のような、生涯現役の人生に憧れています。どうしたら先生のように何歳になっても仕事を続けられるのでしょうか?」
働くことは、生きることと同義。利他の精神がある限り、いくつになっても人間の仕事に終わりはないのです。
僕は確かに100歳を超えても、病院の現場で医者として働いてきました。あなたはそのことを指して、僕のことを「生涯現役」だとおっしゃるのだと思います。憧れるという風に言ってくれて、それ自体はすごく嬉しいことではありますが、今この瞬間の僕自身の姿というのは、みなさんがイメージする現役の医師であるかといえば、どうでしょうか。
今僕は身体を病み、職場である聖路加国際病院へ毎日足を運び、患者を治療することはかないません。あんなに全国を飛び回っていた講演会なども、以前ほどできなくなってきました。
あなたのイメージする現役とは違うかもしれないけれど、それでも僕は、自分自身のことを今も現役であると思っているわけです。
では、そもそも仕事とはいったい何なのでしょうか。
ライフワークという言葉がありますが、僕にとって働くというのは生きることと同義です。
会社でどんな待遇なのか、どれだけ稼いでいるか、そういうことではなく、自分が生きていることをどれだけ社会に還元できるのか、もっと言えば自分に与えられた命という時間をどれだけ人のために使えるかということが、働くということなのです。
それは、使命と言い換えてもいいかもしれません。
特定の誰かのためでもいいし、社会のため、未来のためでもいい。利他の精神がある限り、人間にとって仕事に終わりはないのでしょう。
そう考えるから、今こうして車椅子の生活になっていても、僕にはできる仕事がある。そう信じられるのです。
自分の使命と向き合い続けることで、自然と生きることと働くことが一体化していく、そんな状態こそ理想の現役像といえるのではないでしょうか。
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日野原重明さんが最後に伝えたかったこと
2017年7月18日、日野原重明さんが105歳という年齢でこの世を去られたことは、みなさんの記憶に新しいと思います。
2016年年末から始まったインタビューでは、「読んでくれる一人一人と対話しているような本にしたい」という日野原さんの希望を受けて、様々な質問に答えていただく形で進んでいきました。「これが私の最後の使命です」とおっしゃりながら、時にはベッドで横たわりながらも、深く優しく強い言葉をつむがれていた日野原さん。
105歳という長い人生を生ききった日野原重明さんが、死の直前まで私たちに伝え続けたメッセージとはなんだったのか。
9月28日に発売する『生きていくあなたへ 105歳 どうしても遺したかった言葉』より、その対話の一部を紹介させていただきます。