戦場でもオフィスでも、ダメ上司が腑抜けた指示を出せばどうなるか…? 幹部自衛官を養成する日本最強の教育機関「防衛大学校」が教える、必ず結果を出すためのリーダーの哲学・所作を体系化した『防衛大流 最強のリーダー』試し読み第2回。
防衛大「パレード訓練」で試された統制力
防衛大にも一般大学同様に学科の授業がある。
ただ、一般大学と違い、バラバラで教場に向かうのではなく、教務班と呼ばれる、30名前後の学科ごとに隊列を組み、行進をしながら各教場へと向かう。
これは課業行進と言い、週替わりで「教務班長」が「前へ進め」「縦隊止まれ」「右向け止まれ」といった号令をかけ教務班を統制しながら教場まで引率する。腕振りや足並みがバラバラだと、当然、上級生から厳しく指導される。
防衛大では頻繁にパレードもあるので、課業行進はその訓練も兼ねてのものだった。
そして月に数回、教務班ごとに「パレードの練達度」をチェックする訓練が行われる。
この練達度チェックで一定の点数を取れなかった教務班には補備訓練が待っている。
私も数回、教務班長を務めた。初めて教務班長になったときにこの「練達度チェック」があったが、ものの見事に補備に引っかかった。初めてだったこともあり、その際は上級生からのお咎めもさほどなかった。
しかし、事件は次の練達度チェックのときに起こった。
次の教務班長も、私のときと同じ指摘事項で補備に引っかかったのだ。1回目はさておき、2回目ということ、さらには全く同じ指摘事項ということで点検官は激怒した。
私とその教務班長は呼び出されて点検官に言われた。
「お前らの班は戦場だったら死んでるぞ!
次、同じことを指摘されたらどうなるか分かっているな!」
ただただ、震え上がった。今思えば、私もこの教務班長も、指摘事項を改善するという意識が低かったのだ。
結果として、2週連続で補備訓練に時間を取られてしまい、教務班員全員の時間を奪うことになってしまった。
一般企業で言うと、「リーダーが誤った指示を出したせいで、部下はしなくてもよい残業を夜遅くまでしなくてはいけなくなった」ということと同じだろう。
教務班長とは教務班を統制するリーダーだ。この事件で学んだことの一つは、「リーダーが、指摘されたことを改善せずに誤った指示を出し続けると、とんでもないことになる」ということだ。我々教務班長は、間違った指示を出さないよう、教務班員全員で求められる練度に達するために何度もパレードの自主訓練を行った。
最終的には練達度チェックの回数が増すごとに、求められるレベルをクリアしていき、補備訓練に引っかからないようになった。
素直にミスを認め、すぐに修正しろ
そもそもリーダーの仕事とは「部下のポテンシャルを最大限に引き出し、部下の力を借りて、組織として最高のアウトプットを出すこと」だ。
これはリーダーになった人間の責任でもある。
リーダーが誤った指示を出し続ければ、そのチームは最高のアウトプットを出すことはできないし、部下のポテンシャルも引き出すことなどできない。
先のパレード訓練もそうだ。教務班長というリーダーが誤った指示を出したせいで、教務班員全員が補備訓練に引っかかった。リーダーが的確な指示を出していればこのような補備訓練などなかったのだ。
とは言っても、リーダーでも誤った指示を出すときはある。出した指示が全て正しければ、極論を言えば、今ごろ全てのリーダーが上場企業の社長になっているだろう。上場企業の社長ですら、もしかしたら誤った指示を出すことがあるかもしれない。
ここで大切なことは、同じような誤った指示を複数回出さないということ、出し続けないということだ。
リーダーも人間だから、誤った指示を出すときがあるかもしれない。いつもうまくリードはできないかもしれない。だが、誤った指示を出して求めるような結果が出なければ、素直にミスを認め改善し、次に活かすことが重要だ。
10年で3%の会社しか生き残れないと言われている。
リーダーは生き残るために戦い続けなければならない。
「戦場だったら死んでいる」
生き残りが厳しい現代社会において、生き残るためにはリーダーは最大限の力を発揮しなければならない。そのための必要最低条件が「誤った指示を出し続けない」ということなのだ。
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