生まれ持った霊能力に加えて修行により霊格を上げ、神様とおはなしができるようになった桜井識子さん。新刊『神様が教えてくれた金運のはなし』は発売翌日に緊急重版となる大反響です。
今回はその中から「馬の神社で出会った不思議な青年」の項目を紹介します。動物は死んで少しすると自然のサイクルに溶け込み、個体の魂は残らないと思っていた桜井さん。ところがこの神社では馬の魂がぞろぞろ存在したのです。いったいどういうわけなのでしょうか?
馬の神社で出会った不思議な青年
荒川駒形神社〈岩手・遠野〉
馬の神社です。ご祭神が「蒼前(そうぜん)駒形明神」となっており、馬の守護神だということです。境内にある案内板には、このように書かれていました。
【昔この地は小国、宮古方面への通路で交通量も多かったが、この神社の前を通るときは、乗馬者は必ず下馬して礼拝して通ったといわれる。(中略)伝説によれば、東禅寺の無尽和尚が祈願したところ、早池峰山の神霊が白馬に乗って現われた。無尽和尚がそのお姿を書き写そうとしたが、写し終わらないうちに消え去り、白馬の片耳を写しかねてしまった。この片耳の欠けたままの馬の絵を東方に祭ったのが、この駒形神社であるという。又、阿曽沼氏の牧場があった頃、ここに年老いた白馬がいて、ここを他の馬が通りかかると、戦いをいどんで追い返し通さなかったので、この白馬を祭神の化身といったとも伝えられている。】
車で上のほうまで登って行けます。山の中というほど奥まったところではありませんが、山です。周辺に民家はありません。境内に入ると、鳥居が並んだ参道が左右に分かれていました。休憩所のような社務所のような小屋をくぐると(真ん中が通路になっています)、鳥居があって石段が上へと続いています。石段を上がると、拝殿が目の前です。
拝殿後方には本殿があり、拝殿の正面や側面の壁には剣の形をしたものがたくさん飾られていました。馬の写真などもたくさんありましたが、やはりちょっと朽ちかけていました。
祝詞を唱えてみたら……社殿の横から、驚くことに本当に馬がぞろぞろと出てきます。神馬じゃないです。神様の眷属としての馬でもありません。地上で生きていた馬が死んで、そのままあちらの世界にいます、みたいな馬なのです。
どういう仕組みなのだろう? と疑問に思いました。動物は自然のサイクルに属していますから、死んだらその中に溶け込んで、また生まれ変わるはずなのです。どうして個体の魂としていつまでも残っているのか……。
死んでからも馬の世話がしたかった
不思議だ、と思いながら祝詞を唱え終えると、私の右側に人がいました(あちらの世界の人です)。急に現れたので腰を抜かすかと思うくらい驚きました。
背が低い男性です。すごく粗末な服を着ていて、あの~、お風呂はいつ入られましたか? と思わず確認したくなるくらい汚れています。いつの時代の人だろう? と思って見ていると、
「オラ、29歳」と明るく言います(私にわかるように標準語に近い言葉にしてくれています)。
「はぁ……」
「馬の世話が仕事だったんだ~」
「そうなんですね~」
この方は、馬が好きで好きでしょうがなかったそうです。ものすごく馬という生き物を愛していたそうで、死んでからも、馬の世話がしたい! と、ここに来たと言うのです。ここにはたくさん馬がいて、人々が多く参拝していたから……と語ってくれました。そこで私が、
「神様になったのは……」と話そうとしたら、
「神様?」とキョトンとして聞き返します。
「あれ? 神様じゃないんですか?」
「オラ、神様なんかになってない」
あ、ホンマや、と思いました。よく見ると違うのです。
「ほ? じゃあ、なんでここにいるんですか? 神様修行じゃないのなら……」
「馬の世話をしてるんだ~」
えーっ、本当にそれだけなんだー、とビックリ仰天です。なんて純粋な! とも思いました。
「あれ? でも、和尚さんがナンタラ明神を祀ったと書いてありましたよ? ナンタラ明神がおられるのでは?」
そう質問をすると、神様はここにはいない、と言います。馬はたくさんいるそうです。
馬のお願いごとならこの神社
待って待って待って、と私は混乱しました。馬は自然のサイクルだから、死んだらそっちに溶け込むはず……。どうしていつまでも個体の馬の魂でいられるのか……と、そこを突っ込んで聞くと、
「馬も丁寧に祀られれば、そのまま残る」と教えてくれました。
馬を大事にしていた飼い主が、「自分たちのためによく働いてくれたね、ありがとう」と感謝をし、丁寧に供養をする、そしてこの神社に祀られる、そのようにされた馬は個体の魂として残っているそうです。
その馬が結構いました。頭数まではわかりませんでしたが、少なくないです。多くの馬がいるから、その馬たちの世話をしよう、と思って青年はここに来たというわけです。
そうか、そんなに動物が好きだったのか~、と思ったら、生前に働いている姿も見せてくれました。大変粗末な服で、汚れまくって馬の世話をしています。でも、瞳はキラキラしていて楽しそうです。ああ、良い人生だったのだな、と思いました。
では、そろそろおいとまをしよう、と歩き出すと、
「もう帰るのか?」と、馬の背に乗って、さらに後ろに馬を何頭か従えてついて来ます。
「ええ、帰ります」
「オラ、久しぶりに人と話した」「楽しかった」と、青年は嬉しそうにニコニコしています。馬と一緒にいるから寂しくはないそうです。しかし、時々人と話したくなるのだそうです。車のところまで一緒に歩いて、見送ってくれました。
「気をつけて」
「ありがとう」
「それがお前の馬か?」
「そう。借りてるんですけどね」(レンタカーなので)
青年は弾けるように笑って、社殿へと戻っていきました。
「オラ、~なんだっ!」「ああなんだ、こうなんだ」と、私に語りかけるその雰囲気は、少年がそのまま大人になったような方でした。馬の世話が"仕事"だと言っていたので、大きな家に下働きとして雇われていたのでしょうか? でも、それでも楽しかった人生のようで、文句も悔いもないみたいでした。私はこの方のことを心から、素敵だな~、と思いました。
この神社に神様はいませんでしたが、馬はたくさんいました。その馬たちは神様ではありません。しかし、馬たちは生きた馬を守ることができます。馬を飼っておられる方は、馬のことをお願いしたい場合、ここの神社に行くといいです。守ってくれます。馬専門です。
お世話をしている青年は何も言いませんでしたが、お饅頭などを一つでもお供えしてあげると喜ぶかな、と思います。神様になっていませんから、お酒ではなく、美味しいものがいいと思います。あ、ついでに、ベラベラと話しかけてあげるともっと喜んでくれます。
最新刊『神様が教えてくれた金運のはなし』好評発売中!
神様が教えてくれた金運のはなし
2018年2月発売『神様が教えてくれた金運のはなし』の最新情報をお知らせします。