皮下脂肪より危ない内臓脂肪。そのまま放置すると高血圧や糖尿病など生活習慣病はもちろん、各種のがんや認知症の原因になることもわかってきました。奥田昌子さんの最新刊『内臓脂肪を最速で落とす 日本人最大の体質的弱点とその克服法』は、肉や炭水化物の正しい摂り方、脂肪に効く食材、効果抜群の有酸素運動などを最新の論文をもとに解説していて、続々重版となる大反響です。
今回はその中から、食欲と大脳の意外な関係についてご紹介します。
「別腹」は脳のいたずら
サバンナで暮らすライオンは、空腹でなければ狩りをすることはありません。満腹中枢から「やめ!」の指令が来ると、満足そうに横になってしまいます。
ところが人間は違います。おいしいものなら食がどんどん進みますし、好きなものを出されれば、満腹であってもおなかにおさまります。これがいわゆる別腹で、食後にケーキを平らげる女性だけでなく、誰のおなかにも備わっています。
フレンチであれ和食であれ、コースが進んで「このあとデザートをお持ちします」の声がかかると、脳でオレキシンという物質が分泌されます。この物質の仕事は胃の動きを活発にして、胃の中の食べものを腸に送り出すことです。これにより胃にスペースができると、まだ余裕がありますよという情報が脳に伝えられ、摂食中枢からゴーサインが出るのです。
オレキシンには別の仕事もあります。眠っていてもおなかがすくと自然に目が覚めて、食べものを探して台所をうろついてしまうことがありますね。この目覚まし時計はオレキシンによるもので、眠ったまま飢え死にしないようにするためのしくみです。
人間が摂食中枢と満腹中枢をだましてまで食べてしまうのは、大脳が大きく発達しているからです。色あざやかなトマトのパスタ、鰻屋さんの窓から流れる香ばしいにおい、お肉がジュージュー焼ける音など五感への刺激や、食べて満足した過去の記憶など、大脳のあちこちから届く情報が摂食中枢を強力にゆさぶります。食べることで豊かな気持ちになれるのも大脳のおかげです。
このとき脳ではドーパミンという物質が分泌されています。ドーパミンは快楽を求める心と固く結びついており、あとちょっとで快楽に手が届くというときに、とくに多く分泌されます。気持ちを駆り立てて、食べるための行動を促す物質です。
実際に食事をすると大きな満足が得られるため、思うように食べられないといらだちがつのり、食べずにいられません。まるで麻薬です。こうしてドーパミンへの依存がめばえ、次第に食欲に支配されてゆきます。
逆に、人間は欲しくもないのに食べることもあります。仕事の都合で今しか食べられないとか、3食食べなければ体に悪いと考えておなかに詰め込むのがこの例で、いずれも現代社会と脳が作り出した一種の思い込みによるものです。
大脳の力を借りて内臓脂肪を撃退しよう
脳によるトリックはまだあります。たくさん食べると胃が大きくなるといいますね。じつのところ、大食いの人も小食の人も胃の大きさは同じです。
空腹のときは鶏の卵くらいの大きさしかなく、そこに食べものが入ると2リットルくらいまでふくらみます。2リットルというと相当な量ですが、胃がこれ以上大きくなることはありません。胃が大きくなったという人は、満腹中枢のおさえが効かなくなって、胃に詰め込めるだけ詰め込むようになっただけと考えられます。
これらはすべて他の動物では起こらない現象です。人間は、本来の食欲調節のしくみに大脳が力いっぱい横やりを入れて、ありもしない食欲を作り出すので、大脳の力に流されてしまえば太るしかありません。
けれども、大脳は強い味方にもなってくれます。何を、どう食べるか、しっかり考えることができるのは人間だけです。そして、少し慣れれば、摂食中枢と満腹中枢が、今どんな指令を出しているか感じられるようになります。自分は本当に空腹なのか? どうしても食べないといけないのか? もう満足しているんじゃないのか?
朝食を食べないほうが体調がいいなら、無理に食べなくてもよいのです。あとでおなかがすくからと、先回りして食べる必要もありません。体にはエネルギーの備蓄があるので、1食くらい食べなくてもどうってことないのです。食べているうちに満腹を感じたら、そこでやめるのも大切です。
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内臓脂肪を最速で落とす
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