

先日登壇したイベントで、『バッタを倒しにアフリカへ』(光文社新書)が話題になっている、バッタ博士こと前野ウルド浩太郎さんが、何故だか客席に座っていました。そのとき前野さんは、テーマで括られた書店の本棚を見て「様々な大きさの本が並んでいて格好良い」と話したのですが、確かに文庫本を〈判型〉ではなく、〈内容〉を基準にして並べていくと、一つの棚のなかに単行本と文庫本が混じりあう、見た目に動きのある並びが出来上がります。
従来、文庫や新書といった、出版社が刊行する小型の本は、そのレーベルごとに並べられてきました。最近では文庫本を、コーナーのなかで、レーベルではなく著者別の50音順で並べる書店が増えてきましたが、Titleでは殆どの文庫本は従来通り判型ごと、出版社のレーベルごとに並べています。それは、(1)お客さんにとってそのほうが馴染みがある、(2)文庫本のレーベルにはそれぞれの特徴があり、まとまっていたほうがそのカラーが伝わりやすい、(3)文庫本を著者ごとに並べた時、どうしても目立たなくなってしまう著者が出てしまう(ノンフィクション系の本など、その内容は興味深くても著者名で切り取られた場合、有名な作家に埋もれてしまうことが多い)などの理由があるからです。

しかしその本の内容によっては、文庫本の置き場ではない場所のほうが、売れる場合もあります。一冊でテーマが完結しており、「こんな本があったのか」と意外性を感じさせる本が、そうした並べかたに適しているようです。例えば、日本に存在する様々な雨に関することばを集めた『雨のことば辞典』(講談社学術文庫)は、Titleでは自然科学の単行本に混ぜて並べています。開店以来、月に2~3冊は売れているロングセラーですが、恐らく講談社学術文庫の棚に並べていてもここまでは売れなかったでしょう(背表紙が地味ですし……)。そのような文庫本を、それぞれのレーベルから抜き出し、目のつくように置き場所を変えて売り上げを伸ばすことに、書籍販売の面白さがあります。本も一冊一冊に「光って見える場所」があるのです。
今回のおすすめ本

著:福島あずさ 絵:nakaban『窓から見える世界の風』(創元社)
気象学が専門の福島あずささんが、世界のその地方にしか存在しない「局地風」について文章を、画家のnakabanさんがその局地風の在り処を想像して絵を描いた、世にも珍しい風の絵本。風は目には見えないが、その土地と密接に結びつき、その場所に関して雄弁に語っている。
◯連載「本屋の時間」は単行本でもお楽しみいただけます
連載「本屋の時間」に大きく手を加え、再構成したエッセイ集『小さな声、光る棚 新刊書店Titleの日常』は、引き続き絶賛発売中。店が開店して5年のあいだ、その場に立ち会い考えた定点観測的エッセイ。お求めは全国の書店にて。Title WEBS
◯2025年3月14日(金)~ 2025年3月31日(月)Title2階ギャラリー
漫画家・上村一夫が1974年に発表した短編集『あなたのための劇画的小品集』の復刊にあたり、当時の上村作品を振り返る原画展を開催します。昭和の絵師と呼ばれた上村一夫は、女性の美しさと情念の世界を描かせたら当代一と言われた漫画家でした。なかでも1972年に漫画アクションに連載された「同棲時代」は、当時の若者を中心に人気を集め、社会現象にもなりました。本展では、『あなたのための劇画的小品集』と同時代に描かれた挿絵や生原稿を約二十点展示。その他、近年海外で出版された海外版の書籍の展示・販売や、グッズの販売も行います。
◯2025年4月5日(土)~ 2025年4月22日(火)Title2階ギャラリー
大江満雄(1906-91)は、異なる思想を持つさまざまな人たちと共にありたいという「他者志向」をもち、かれらといかに理解し合えるか、生涯をかけて模索した詩人です。その対話の詩学は、いまも私たちに多くの示唆を与えてくれます。
Titleでは、書肆侃侃房『大江満雄セレクション』刊行に伴い、著作をはじめ、初公開となる遺品や自筆資料、写真などを紹介する大江満雄展を開催します。
貴重な遺品や私信に加え、大江が晩年「風の森」と名付けて、終の棲家とした家の写真パネルなども展示。本書収録の詩や散文もご紹介します。
【店主・辻山による連載<日本の「地の塩」を巡る旅>が単行本になりました】
スタジオジブリの小冊子『熱風』(毎月10日頃発売)にて連載していた「日本の「地の塩」をめぐる旅」が待望の書籍化。 辻山良雄が日本各地の少し偏屈、でも愛すべき本屋を訪ね、生き方や仕事に対する考え方を訊いた、発見いっぱいの旅の記録。生きかたに仕事に迷える人、必読です。
『しぶとい十人の本屋 生きる手ごたえのある仕事をする』
著:辻山良雄 装丁:寄藤文平+垣内晴 出版社:朝日出版社
発売日:2024年6月4日 四六判ソフトカバー/360ページ
版元サイト /Titleサイト
◯【書評】
『生きるための読書』津野海太郎(新潮社)ーーー現役編集者としての嗅覚[評]辻山良雄
(新潮社Web)
◯【お知らせ】
メメント・モリ(死を想え) /〈わたし〉になるための読書(4)
「MySCUE(マイスキュー)」
シニアケアの情報サイト「MySCUE(マイスキュー)」でスタートした店主・辻山の新連載・第4回。老いや死生観が根底のテーマにある書籍を3冊紹介しています。
NHKラジオ第1で放送中の「ラジオ深夜便」にて毎月本を紹介します。
毎月第三日曜日、23時8分頃から約1時間、店主・辻山が毎月3冊、紹介します。コーナータイトルは「本の国から」。1週間の聴き逃し配信もございますので、ぜひお聞きくださいませ。
本屋の時間の記事をもっと読む
本屋の時間

東京・荻窪にある新刊書店「Title(タイトル)」店主の日々。好きな本のこと、本屋について、お店で起こった様々な出来事などを綴ります。「本屋」という、国境も時空も自由に超えられるものたちが集まる空間から見えるものとは。