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『芸人式新聞の読み方』 プチ鹿島
なぜか新聞がどんどん好きになる! 人気時事芸人による痛快&ディープな読み方、味わい方をお届けする本書。たとえば、こんな読み方を紹介しています。
「安倍マリオ」とは何だったのか
2016年8月。リオ五輪の閉会式に出現したあの「安倍マリオ」。次回開催地・東京のPRショーで、ドラえもんやキャプテン翼など日本アニメのキャラクターが共演。そして渋谷のスクランブル交差点からリオのマラカナンスタジアムに「マリオ」が瞬間移動する演出の後、安倍晋三首相がマリオに扮して登場した。
もう多くの人はどうでもいいことかもしれないが、私が想像したいのはあの日、あの現場での暗闘のことである。
「安倍マリオ」登場の瞬間、スタジアムは盛り上がっていた。しかしあの場所で一人だけ悔しがっていた人物がいた。小池百合子である。
小池氏は東京都知事としてキンキラキンの着物で意気揚々と乗り込んでいった。しかし最後は安倍マリオに話題を持っていかれた。目立つ気マンマンだった新都知事が悔しく思わないわけがない。キーッとならないわけがない。
小池氏が都知事に当選後、安倍首相は自民党にケンカを売った形の小池氏に「一本とられた」とコメントした。しかし安倍マリオを仕掛けられた小池氏の胸中もまた「一本とられた」ではなかったか?
あれは当てつけ、というのは私の想像だった。しかし、もしかして? と思ったのは「安倍マリオの発案は森喜朗(組織委員会会長)」と報じられたからである。
森喜朗と小池百合子は以前から仲が悪いことで有名だ。となると森喜朗が「安倍マリオ」を思いついた時期はいつなのだろうか。もし、小池百合子が都知事選に色気を見せ始めた6月以降に思いついたなら、森喜朗演出には“意味”がつき始める。
そう、「小池百合子がリオ五輪の閉会式で目立つくらいなら安倍ちゃんを出そう」という思惑はなかったか? 森喜朗が口を出したならそこまで考えなければならない。森が提案した時期によっては一気に「安倍マリオ」はキナ臭いゴシップになるのである。
閉会式から5日後の『東京新聞』(8月27日)には、マリオを登場させるアイデアは4月頃までに固まっていたとある。同じ時期に安倍首相の配役が決まっていたのなら「小池百合子潰し説」の可能性は消える。なぜなら当時の舛添都知事のスキャンダルはまだ出ていないからだ。
では肝心のマリオ役はいつ決定したのだろうか。
『日刊ゲンダイ』(8月26日)に官邸記者のコメントがあった。
“安倍さんは閉会式について1カ月以上前から、超極秘で電通と打ち合わせをしてきました。実際、7月13日には東京・東新橋の電通本社を訪れている。”
記事通りなら7月13日にはマリオは安倍首相で決まっていたことになる。ちなみに「首相動静」(朝日新聞)を調べてみると、7月13日は午後2時47分から「東京・東新橋の複合施設『カレッタ汐留』。電通で海外広報戦略の説明会。4時23分、官邸。」とたしかにある。
この翌日の7月14日に都知事選が告示された。有力候補は「小池・鳥越・増田」の3氏。この周辺の日付は森喜朗に「リオの小池百合子への刺客」案が浮かんでいてもおかしくない日程である。
私の見立てがいよいよ当たっているかもしれないと思ったのが次だ。9月10日の『日刊スポーツ』。
《安倍マリオ 当初候補はアスリート 3週間前に急きょ》
“8月のリオデジャネイロ五輪の閉会式で行われた、東京五輪へのハンドオーバーセレモニーでサプライズ登場した安倍晋三首相が、本番約3週間前というギリギリで決まっていたことが9日、分かった。演出を手がけたクリエーティブディレクター佐々木宏氏が都内で会見し、明かした。”
さり気なく報じられていた記事だが、私は静かな興奮を覚えたのである。もう少し記事を引用してみる。
“当初はアスリートが候補者だった。現役、引退選手の中から「マリオに似て、ひげが似合い、小柄で俊敏性のある選手を探していた」。”
ああ、最初はやっぱりアスリートで探していたのだ。
というのも過去の引き継ぎ式では、世界的なスーパースターに次の開催都市の「顔」を委ねることが多かったからだ。最近ではデービッド・ベッカム(ロンドン)、ペレ(リオ)が登場している。この流れでいくと東京も著名なアスリートがマリオ役で出てくるはずである。しかし登場したのは安倍首相だったから、政治家という生臭さに賛否も起きた。
このあたり、『日刊スポーツ』によれば「7月になっても見つからず『一般人でもいい』と焦りが生じてきた時、大会組織委員会の森喜朗会長のアイデアで、安倍首相の名があがったという」のだ。
なんと7月に入っても誰がマリオをやるか決まっていなかった。その結果「本番約3週間前」に「森喜朗会長のアイデア」で、安倍首相になった。
閉会式は8月22日(日本時間)だから、3週間前というと8月1日になる。
リオ五輪の閉会式に行く人物は「小池百合子・新都知事」が決定していた。
こうして時系列を整理してみると「小池が閉会式で注目を集めるくらいなら、安倍ちゃんを登場させてしまえ」と森喜朗が考えてもおかしくないのである。
発案した時期は新聞各紙を調べてみると先述の「7月13日には決まっていた説」と「本番3週間前の8月1日」となる。かなり興味深い日程だ。
さて、ここまで書いてある「イヤな予感」がふと浮かんできた。
もしかしたら、あのマリオは森喜朗自身がやりたかったのでは? と思えて仕方ないのだ。冗談で言っているのではない。元自民党の山口敏夫氏が森喜朗の手法について、私に直接語ってくれたことがある。
“例えば五輪の組織委員会の会長になるにも、最初に民間人がいいよと発言をしたのは森喜朗なんだよ。それで、そのAさん、Bさん、Cさんを一生懸命、森が「俺が口説くから」と言って口説いたんだよ。ところが口説かれてる相手は、「あんたがやりたいんでしょ?」と、みんな分かるわけだよな。”(2015年12月・プチ鹿島メルマガ)
つまり、自分が話を持っていくことで「いやぁ、私なんてとてもとても。森さんが適任ですよ」という返礼を利用して、まんまと会長の座に「皆に推されて」就いたというのだ(そういえば首相就任時もそんな感じだった)。
今回も同じように安倍首相に話を持っていった森喜朗は「怪しい」。さすがにそれは日本中の批判を浴びると感じた首相が渋々引き受けた可能性も十分にある。
安倍マリオは小池百合子潰しであり、「森マリオ」潰しでもあった。
信じるか信じないかはあなた次第。
この章を読んでいただくと、「森喜朗」だけでいくらでも見立てができるのがわかっていただけたと思う。
(「第5章 新聞は下世話な目線で楽しもう」より)
続きは本編でお楽しみ下さい。
***
『芸人式 新聞の読み方』 目次
◆オバマはどこのすしを食べたのか?
◆読み比べでたどり着いた意外な「すし利権」
◆『朝日新聞』は“高級な背広を着たプライド高めのおじさん”
◆『日本経済新聞』は“現実主義のビジネス一筋おじさん”
◆『読売新聞』はずばり“ナベツネ”
◆“嘘は書かないが盛って書く”スポーツ紙を楽しむ
◆SMAP解散騒動で一歩踏み込んだ表現が目立った『スポニチ』
◆行間を読む“受け身の取り方”が求められる夕刊紙・タブロイド紙
◆「A氏とつながりのある超大物OB」とは誰か
◆ウクライナ情勢と“つちやかおりW不倫”の共通点
◆「W吉田事件」で『朝日』が元気をなくして困るのは誰か
◆“困った失言おじさん”森喜朗が総理になれた理由
◆真相はしょぼかった『FLASH』発売中止騒動
◆“失言を許さない空気”がかえってヘイトを生む
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