大好きだから絶対会いたくない。
分かるかな?この感じ。死ぬほど好きで、憧れてる人だから全く会いたくない、自分のことなんか認識してほしくない、もし自分なんかを知られたら「つまんねーやつだな」と思われるに決まってる、そんなんなったらもう死んでしまう、だから会いたくない、みたいな感じ。
僕のアイドルは、ブランキージェットシティの浅井健一さんです。
浅井さんとは、高校生の頃に出会いました。中学で二軍だった僕が進学校に入学して、ヤンキーがいないのをいいことに高校デビューにトライ(ダセえ)、そうとなればさっそく不良っぽい音楽を聴かなければと思い(くそダセえ)手に取ったのが、ブランキージェットシティのCDでした。
正直に言うと、最初はぜんぜん良さが分かんなかった。歌声のクセが強すぎて。でもとにかく僕は「好きなバンド?ブランキーだけど?ぺっ(つばを吐く音)」とやりたい一心で(死んじまえ)、登下校中、ずっと無理して聴いていました。そしたらですね、どハマりしたんです。純粋に、死ぬほど好きになったんです。浅井さんの声とブランキーの音を聴いてる時間が一番幸せ、しんどい時があったらどうしようもなくブランキーが聴きたくなる、聴く、ああん幸せ・・・みたいな感じになったんです。ちょっと話それるけど、この前後輩と飲んでたらそいつが「俺、中学時代、家にある銀杏のCD聴きたくて聴きたくて、走って家帰ってたんすよね」って言ってて。いい話だよね。僕もそんな感じでした。
といういきさつでブランキーが大好きになって、浅井さんのコスプレをしたり(髪型完コピ、革パンは金なくて買えなかったからやっすいビニールパンツを購入)、高校の文化祭でブランキーのコピバンやったり、ブランキー解散ライブを横浜アリーナで見てボロ泣きしたり、サラリーマンになったり、初ボーナスで浅井さんとおんなじギター無理して買ったり、バンド始めたり、フラれたり、ライブやったり、オナニーしたりしてたら、あるフェスで浅井さんと同じ日に出演することになってしまいました。
は?まじで?その話を聞いた時、僕は本当に嫌だ、やめてくれ、と思いました。だって、好きすぎてクソほど会いたくないんだもん。浅井さんみたいな本物が俺みたいなミノムシを見たら、ダセえな、と思うに決まってんだもん。周りは、ギターにサインしてもらえよとかCD渡せよとか言ってきたけど、そんなんできるか馬鹿野郎。俺は死んでも浅井さんと会わん。浅井さんの視界にも入らん。絶対に逃げ切ってやるよ。俺を舐めんな。ぺっ(つばを吐く音)。
フェス当日。僕は楽屋から、一切出ませんでした。自分たちの出番が来たら、下を見ながら矢のようなスピードでステージに向かい、演奏が終了したら地面だけを見て光のスピードで楽屋に疾走。そこで引きこもっていました。そのフェスの楽屋村には、酒もメシも飲み食い放題の天国みたいな飲食スペースがあるのですが、そんなところにへこへこ出て行ったら浅井様のご視界に侵入してしまう可能性があります。私のような豚クソ野郎にそんなことは断じて許されていません。だから僕は、ずっと楽屋でひとり、座っていました。ひたすら座って、メンバーに持ってきてもらったビールを楽屋でちびちび飲み続けました。窓の外は快晴。雲一つない空。目の前には殺風景なプレハブのスペース。ぬるくなったビール。僕は、まあこういうのも悪くないな、と思いました。ダサい俺はダサい俺のまま、ここまではたどり着けたんだな、と思いました。
おしぼりを巻き寿司のイメージで食った
いつだって”僕ら”の味方、忘れらんねえよ。
「恋や仕事や生活に正々堂々勝負して、負け続ける人たちを全肯定したい」という思いで歌い続けてるロックバンド。
そんな“忘れ”のボーカル、ギターの柴田隆浩が、3年半ぶりにエッセイを書くことに!メロディーはもちろんだが、柴田の書く言葉に、ヤラレル人多数。
“二軍”の気持ちを誰よりもわかってくれる柴田の連載。
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