NASAでの勤務経験もあるX線天文学者の小谷太郎氏が上梓した『言ってはいけない宇宙論 物理学7大タブー』が発売即重版になる大反響。世界のタブーに挑むといえばあの雑誌、月刊「ムー」である。物理学のタブーから世界のタブーまで、小谷太郎氏と月刊「ムー」編集長三上丈晴氏が秘められた禁断の扉を開ける。(構成・川口友万)
最新の宇宙論はどこへ向かっている?
宇宙はいつ始まったのか? 終わりはあるのか? そもそも宇宙とは何なのか? そうした疑問、素朴で、しかし私たちという存在の本質を突く「宇宙とは何か?」という問いに答えようとさまざまな仮説が立てられてきた。それが宇宙論だ。
中でももっとも知られ、現実との整合性が高いとされるのが『ビッグバン宇宙論』である。現在の宇宙論は、多くがビッグバン宇宙論、宇宙が一点から爆発して始まったというう理論を基本としている。
小谷 宇宙は膨張している、爆発から始まったんだというのが発見されると、誰でも期待しちゃうのは、じゃあ縮むこともあるのかな、ということですね。
三上 そうでしょうね。
小谷 縮むのだとすると、宇宙とは「爆発して縮んで、また爆発して縮んで」という繰り返しじゃないのかと考えたくなる。宇宙の膨張が発見された初期は、この仮説は否定できなかった。
最近は観測技術が向上して、宇宙を細かく測定できるようになってきた。そうするとこういう夢のある話がなくなってきちゃうんですね。
宇宙背景放射という宇宙の温度が測定されて、3ケルビンという極低温だと分かった。それが2.7ケルビンになって、2.73ケルビンになって、温度を測る精度が上がっていく。精度向上ぐらいしかもう宇宙論はやることがないのか? そういうムードの時に出てきたのが、宇宙の加速膨張なんですね。
三上 宇宙が加速しながら膨張しているという話ですね。
小谷 宇宙が爆発から始まったのなら、同じ速度で膨張しているはずです。しかし最近の観測で、宇宙が加速しながら膨張していることがわかった。膨張させるエネルギーはどこから来ているのか? そのエネルギーがダークエネルギーです。宇宙にはダークエネルギーという謎のエネルギーが充満しているということがわかったんですよ。そうなると宇宙論もこれから面白いことが残ってるじゃないかと。
三上 そうなってくると真空という話になるじゃないですか。真空に膨張するエネルギーがある。何もない空間は実はダークエネルギーに満ち溢れている。
小谷 みんな好きですよね、エネルギー。ダークエネルギーという単語はすごい発明だと思うんです。聞いてるだけでワクワクしますよね。
三上 ムー的ですよね。超能力エネルギーと同じです。
小谷 だいたい「ダーク」は英語で「エネルギー」はドイツ語ですからね、ダークエナジーならわかりますけど。ダークエネルギーなんて言うのは日本だけですよ。その結果、心を鷲づかみにする良い言葉になりましたが。
三上 先生はダークエネルギーやダークマターの正体は見当がついているとお考えですか?
小谷 ついていると言う人はいますよね。そういう人は素粒子論の人で、素粒子論は分派があるんですよ。「我々はこの素粒子だと考える」と言い合っている。つかまえてみるまでわからないですよね。
三上 ニュートリノという説があったんですが、計算と全然合わないんですよね。ブラックホールも違う。完全な未知なる素粒子なのか?
小谷 人類が持っているカードでは説明できないので、未知のカードだろうと考えざるをえません。
三上 じゃあ超弦理論は小谷先生からすると、あんなのただの数学だあ! とか。
小谷 実は詳しくないんですよ、超弦理論。だからとうとうと語っちゃうとマズい。
三上 大学1年生ぐらいの時に岩波か何かで解説書が出て、超ひも理論とは何か? みたいな。でも大学出るころにはみんな忘れちゃってた。それが最近、盛り上がりがすごいじゃないですか。
小谷 今まで説明できなかったことが、素粒子はヒモだと想定すると解けるものがあるという、あれはすごくワクワクする理論なんですけど、最新の素粒子理論は実験で検証できない。だから言いっ放し状態。あの理論もこの理論も並んでいるだけなので、その中に声の大きい人がいるとそれが広まっちゃう傾向があって。超弦理論は声の大きい人が多いんですよ。
三上 ちなみにムーではM理論をやったことがあるんですが。
小谷 この宇宙は超宇宙に浮かぶ、膜=メンブレーンというものですね。
三上 Mは意味を特定しないでMだから、じゃあムーでもいいんだな、みたいな。M資金とかね。まあ、M理論を主張しているリサ・ランドールが美人だから流行ったんじゃないかと思いますけどね。
(対談第2回につづく・3月28日水曜日公開予定です)
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言ってはいけない、宇宙論と「ムー」の世界
NASAでの勤務経験もあるX線天文学者の小谷太郎氏が上梓した『言ってはいけない宇宙論 物理学7大タブー』が発売即重版になる大反響。世界のタブーに挑むといえば、あの雑誌、月刊ムーである。物理学のタブーから世界のタブーまで、小谷太郎氏と月刊ムー編集長三上丈晴氏が秘められた禁断の扉を開ける。(構成・川口友万)