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言ってはいけない、宇宙論と「ムー」の世界

2018.03.24 公開 ポスト

対談その1

宇宙論を騒がすダークエネルギーは非常に「ムー」的だ!小谷太郎/三上丈晴(月刊「ムー」編集長)

NASAでの勤務経験もあるX線天文学者の小谷太郎氏が上梓した『言ってはいけない宇宙論 物理学7大タブー』が発売即重版になる大反響。世界のタブーに挑むといえばあの雑誌、月刊「ムー」である。物理学のタブーから世界のタブーまで、小谷太郎氏と月刊「ムー」編集長三上丈晴氏が秘められた禁断の扉を開ける。(構成・川口友万)

「ムー」を持つ小谷太郎氏と『言ってはいけない宇宙論』を持つ三上丈晴氏。

最新の宇宙論はどこへ向かっている?

 宇宙はいつ始まったのか? 終わりはあるのか? そもそも宇宙とは何なのか? そうした疑問、素朴で、しかし私たちという存在の本質を突く「宇宙とは何か?」という問いに答えようとさまざまな仮説が立てられてきた。それが宇宙論だ。
 中でももっとも知られ、現実との整合性が高いとされるのが『ビッグバン宇宙論』である。現在の宇宙論は、多くがビッグバン宇宙論、宇宙が一点から爆発して始まったというう理論を基本としている。

 

小谷 宇宙は膨張している、爆発から始まったんだというのが発見されると、誰でも期待しちゃうのは、じゃあ縮むこともあるのかな、ということですね。

三上 そうでしょうね。

小谷 縮むのだとすると、宇宙とは「爆発して縮んで、また爆発して縮んで」という繰り返しじゃないのかと考えたくなる。宇宙の膨張が発見された初期は、この仮説は否定できなかった。
 最近は観測技術が向上して、宇宙を細かく測定できるようになってきた。そうするとこういう夢のある話がなくなってきちゃうんですね。
 宇宙背景放射という宇宙の温度が測定されて、3ケルビンという極低温だと分かった。それが2.7ケルビンになって、2.73ケルビンになって、温度を測る精度が上がっていく。精度向上ぐらいしかもう宇宙論はやることがないのか? そういうムードの時に出てきたのが、宇宙の加速膨張なんですね。

 

小谷太郎氏。

三上 宇宙が加速しながら膨張しているという話ですね。

小谷 宇宙が爆発から始まったのなら、同じ速度で膨張しているはずです。しかし最近の観測で、宇宙が加速しながら膨張していることがわかった。膨張させるエネルギーはどこから来ているのか? そのエネルギーがダークエネルギーです。宇宙にはダークエネルギーという謎のエネルギーが充満しているということがわかったんですよ。そうなると宇宙論もこれから面白いことが残ってるじゃないかと。

三上 そうなってくると真空という話になるじゃないですか。真空に膨張するエネルギーがある。何もない空間は実はダークエネルギーに満ち溢れている。

小谷 みんな好きですよね、エネルギー。ダークエネルギーという単語はすごい発明だと思うんです。聞いてるだけでワクワクしますよね。

三上 ムー的ですよね。超能力エネルギーと同じです。

小谷 だいたい「ダーク」は英語で「エネルギー」はドイツ語ですからね、ダークエナジーならわかりますけど。ダークエネルギーなんて言うのは日本だけですよ。その結果、心を鷲づかみにする良い言葉になりましたが。

三上丈晴氏。

 

三上 先生はダークエネルギーやダークマターの正体は見当がついているとお考えですか?

小谷 ついていると言う人はいますよね。そういう人は素粒子論の人で、素粒子論は分派があるんですよ。「我々はこの素粒子だと考える」と言い合っている。つかまえてみるまでわからないですよね。

三上 ニュートリノという説があったんですが、計算と全然合わないんですよね。ブラックホールも違う。完全な未知なる素粒子なのか?

小谷 人類が持っているカードでは説明できないので、未知のカードだろうと考えざるをえません。

三上 じゃあ超弦理論は小谷先生からすると、あんなのただの数学だあ! とか。

小谷 実は詳しくないんですよ、超弦理論。だからとうとうと語っちゃうとマズい。

三上 大学1年生ぐらいの時に岩波か何かで解説書が出て、超ひも理論とは何か? みたいな。でも大学出るころにはみんな忘れちゃってた。それが最近、盛り上がりがすごいじゃないですか。

小谷 今まで説明できなかったことが、素粒子はヒモだと想定すると解けるものがあるという、あれはすごくワクワクする理論なんですけど、最新の素粒子理論は実験で検証できない。だから言いっ放し状態。あの理論もこの理論も並んでいるだけなので、その中に声の大きい人がいるとそれが広まっちゃう傾向があって。超弦理論は声の大きい人が多いんですよ。

三上 ちなみにムーではM理論をやったことがあるんですが。

小谷 この宇宙は超宇宙に浮かぶ、膜=メンブレーンというものですね。

三上 Mは意味を特定しないでMだから、じゃあムーでもいいんだな、みたいな。M資金とかね。まあ、M理論を主張しているリサ・ランドールが美人だから流行ったんじゃないかと思いますけどね。
 

 

(対談第2回につづく・3月28日水曜日公開予定です)

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言ってはいけない、宇宙論と「ムー」の世界

NASAでの勤務経験もあるX線天文学者の小谷太郎氏が上梓した『言ってはいけない宇宙論 物理学7大タブー』が発売即重版になる大反響。世界のタブーに挑むといえば、あの雑誌、月刊ムーである。物理学のタブーから世界のタブーまで、小谷太郎氏と月刊ムー編集長三上丈晴氏が秘められた禁断の扉を開ける。(構成・川口友万)

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小谷太郎

博士(理学)。専門は宇宙物理学と観測装置開発。1967年、東京都生まれ。東京大学理学部物理学科卒業。理化学研究所、NASAゴダード宇宙飛行センター、東京工業大学、早稲田大学などの研究員を経て国際基督教大学ほかで教鞭を執るかたわら、科学のおもしろさを一般に広く伝える著作活動を展開している。『宇宙はどこまでわかっているのか』『言ってはいけない宇宙論』『理系あるある』『図解 見れば見るほど面白い「くらべる」雑学』、訳書『ゾンビ 対 数学』など著書多数。

三上丈晴 月刊「ムー」編集長

1968年、青森県生まれ。学研「ムー」の5代目編集長。筑波大学を卒業後、学習研究社(現・学研)に入社。「歴史群像」編集部を経て、入社1年目より「ムー」編集部に所属。

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