イリヤマ君という男がいる。
2年ぐらい前かな、友達のバンドのライブを下北沢に観に行って、その打ち上げで出会った。何やってる人なんすか、と聞くと、スタイリストです、と言う。僕は思った。嘘でしょ。あなたぜんっぜん、スタイリスト感ないじゃないすか、と。
スタイリストと聞いて僕が想像するのは、シュッとした体型で、なんか左右非対称のひらひらした黒い服着てて、髪型は大抵ツーブロックかつ残った髪をポマードでかっちり固めるやつにしてて、昔ワルかったけど今はあえて上品な雰囲気出してます、みたいな男。だけどイリヤマ君は、全然そういうのではないのだ。なんというか、その、全然違うのである。
聞くと、その友達のバンドのスタイリストをやっていて、音楽と漫画と釣りと嫁さんが大好きで、銀杏BOYZ、そして峯田和伸を神だ、と言う。漫画の趣味が僕とかなり似てて、桂正和先生の『I"s』の話で盛り上がり、興奮した彼は僕にこんなことを言ってきた。
「柴田さんにはイチタカ(『I"s』の主人公)のスタイリング、合うと思うんだよなあ」
いや、漫画のキャラの服装を現実の人間に勧めるってどんなセンスだよ。そんなん聞いたことねーよ。
なんか僕は、彼のことが好きになった。そっから今度一緒に服買いに行こうぜってなって、俺が柴田さんをスタイリングしますよって言ってくれたから楽しみにしてたら、僕が連れて行かれたのは、町田の300円均一リサイクルショップ。まじすか。次に連れて行かれたのは、BOOK OFFの5階中古服売り場。正気すか。でもね、これが最高だったんだ。いや、全くモテる服装じゃないよ。女子受けなんて1ミリもしない。でもそんなことはクソどーでもいいんだ。俺は、熱くなりたいの。誰とも違う自分だけのスタイル見つけて、自分でテンション上がりたいの。イリヤマ君のチョイスはそんな僕にドンズバに刺さる、最高にセンスのいいものだった(あと超安かった)。
ちなみに彼の名誉のために言っておくと、彼の服の知識は半端ないです。古着のディティールとか、信じられないぐらいの知識を持ってる。着る人の望むものに合わせて、その知識を駆使したり、別のアプローチをとったりするんだって。
そんなイリヤマ君は、でも、そのオリジナルすぎるスタイルのせいか、2年前の当時はそんなに仕事が多いわけではなかったっぽい。だから先日彼から、『水曜日のダウンタウン』に出演する銀杏BOYZ峯田さんのスタイリングを担当することになった、という連絡をもらったとき、僕はちょっと泣きそうになった。
イリヤマ君、夢叶えたね。おめでとう。これからもよろしくね。
おしぼりを巻き寿司のイメージで食った
いつだって”僕ら”の味方、忘れらんねえよ。
「恋や仕事や生活に正々堂々勝負して、負け続ける人たちを全肯定したい」という思いで歌い続けてるロックバンド。
そんな“忘れ”のボーカル、ギターの柴田隆浩が、3年半ぶりにエッセイを書くことに!メロディーはもちろんだが、柴田の書く言葉に、ヤラレル人多数。
“二軍”の気持ちを誰よりもわかってくれる柴田の連載。
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