語尾に出てくる単独の子音とeは発音しない
まずは Paris。
誰でも知ってる単語ですよね。フランスの首都、花の都パリです。
でもこの発音ちょっと変じゃありませんか。だって、アメリカ人だったら「パリス」と発音します。でも日本人は「パリ」。どちらが正しいか? 日本人の勝ち。フランス人も「パリ」と発音するのです。
ここに、フランス語の綴りと発音の関係のいちばん大事な原則のひとつが表れています。Paris の s のように、語尾に単独で出てきた子音は発音しないのです。
つまり、画家のモネ Monet の t も、踊りのバレエ ballet の t も、牛肉のヒレ filet(ちょっと日本語の発音はなまってますが)の t も、お菓子のモンブラン mon-blanc の c も、「長い」の意味の 形容詞「ロン」longのg も発音しません。
すごい例では、フランス語で最もよく使われる言葉のひとつ、est があります。これは、英語の be動詞の活用形の is に当たる言葉なのですが、語尾の s も t も発音せず、たんに「エ」となります。
発音しないのになぜ書いているのかといえば、言葉のなりたちのうえからそれぞれ説明はつくのですが、本書では語源の探索にまで入りこむわけにはいきません。
要するに、フランス語の読み方の規則として、語尾の単独の子音は読まない。これがまず重要なポイントです。これだけでも、フランス語の綴りと発音の奇妙な関係について、ああ、そうだったのか、と腑に落ちた方もたくさんいるのではないでしょうか。
語尾の話のついでに、母音のなかでも e が語尾に来たら発音しません。例えば、France はフランス。「フランセ」とはならないんですね。哲学者の Sartre もサルトル。「サルトレ」ではありません。既婚女性を表す Madame も「マダメ」でなく「マダム」です。
フランス語には、e で終わる1音節の単語で、よく使う重要なものがたくさんあります。それらもすべて語尾の e は読みません。
例を挙げると、ジュ je (「私は」の意)。
また、トゥ te (「君を」の意)。この te の発音は母音を含まないので、「ト」ではなく、軽い「トゥ」になります。
ただし、字面では「トゥ」と2文字で、「ト」よりも長い感じがしますが、「トゥ」は子音の t の1字だけで、「ト」は to という母音の「オ」を含んだ2文字です。ですから、この軽い子音だけの「トゥ」を、バレエの「トウシューズ」の場合のように、「ト・ウ」と2音に発音しないでくださいね。
さらに、ム me (「私を」の意)。
ル le (英語の the に当たる定冠詞、「その」の意)。
ス ce (英語のit に当たる代名詞、「それ」の意)。
ヌ ne (英語の not に当たる副詞、「~ない」の意)。
ドゥ de (英語の of に当たる前置詞、「~の」の意)。この de も、いま出てきた te と同じで、母音を含まない音なので、「ド」ではなく、軽い「ドゥ」と発音されます。
……こんな具合に、語尾が発音しないeで終わる単語は無数にあるのです。
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