サッカーの究極の節制、究極の運動能力、シビアさ
──では、二本柳さんが感じている、サッカーの魅力とは何でしょうか?
サッカーは、90分間走り回る競技です。そこで求められるのは、究極の節制と究極の運動能力──いわば高次元のアスリート性。そして、選手ひとりひとりが連動して、チームとして戦うというところに魅力を感じます。それに、サッカーは世界レベルで物事を考えられるというのも大きな魅力ですね。
──編集者としての二本柳さんは、何があろうと売れることを第一義に考えて本づくりをするのか、最終的には売れる売れないに関係なく自分のつくりたい本をつくるのか、どちらのタイプだと思われますか?
う~ん、難しいなぁ……。どちらかといえば、後者かな。
ただ、本により、その時々により、求められることは違うものです。だからその都度、求められることには応えていきたいと、いつも考えています。たとえば、企業にお金を出していただいてブランド本をつくるのであれば、もちろん読者に深く刺さる内容ということも踏まえつつ、クライアントである企業の方にもちゃんと喜んでもらえるような内容に仕上げたい。いうなれば、求められている条件をクリアしつつ、自分のつくりたいものをつくる、といったところが理想でしょうか。
──やはり、いちばんつくりたいのはサッカー本なのですか?
いやいや、決してそんなことはないですよ。これまでに何冊もサッカー本をつくることができましたし、他社からもいろいろなサッカー本が出ています。これは完全に自意識ですが、「二本柳はサッカー本」という感じが出てきている気がするので、「俺は他のジャンルでもやれるぞ!」という結果がほしいです(笑)
そもそも、僕は非常にアバウトな人間ですからね。これは最近、自分の中での信条にしていることのひとつなのですが「こだわりは持たない」ようにしようと。こだわりを持てば持つほど、ガチガチにがんじがらめになってしまう。これは「水曜どうでしょう」などでおなじみの、タレントで放送作家でもある鈴井貴之さんも言っていたんですが、水の上にプカプカ浮かんで漂っているくらいがちょうどいいのかなと。
好きで好きでこだわりがいっぱいあって……みたいな人が本をつくっても、専門書ならいざしらず、商業的には結果が出ない。それはサッカーも然りかと思います。商業的というのは嫌な言い方ですが、僕は雑誌の部署に所属しているので、本をつくるというのはいわば副業なのです。だから、そこで赤字を出すわけにはいかない。話がそれましたが、こだわりを持つよりも、一歩引いて物事を見たり、柔軟に変化するほうが大事だと思っています。
あと、ベタな話になりますけど「センスを磨く」ことと、「いろんなものを見る」ことは怠らないようにしています。自分のことをセンスがいい人間とはいいませんが、たとえば女性誌もたくさん読みますし、いろいろな映画も観る。ブランドのパーティにもパッと出かけますし、時折109にも行ってみる(笑)。また、雑誌では時計の担当なので、年に3回はスイスに出向き、工房を回ったりもします。他にも年に数回、仕事絡みでヨーロッパに行く機会がありますから、途中でドイツのスタジアムや練習場に行ってサッカーの取材をしたり。そういう現場の皮膚感覚も大事にしているつもりです。
(構成・漆原直行 写真・菊岡俊子)
*全3回のインタビューです。最終回の更新は12月27日の予定です。
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