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いま気になること

2018.07.19 公開 ポスト

スティーヴ・ジョブズを凌いで、全米第1位に選ばれたスピーチを知っていますか?大槻慎二

「ものの考え方を学ぶ」とは ほんとうは……

 「ものの考え方を学ぶ」とは
 ほんとうは
 なにをどう考えるか
 コントロールするすべを学ぶ
 ということなのです。

 それは意識して
 こころを研ぎ澄まし
 何に目を向けるかを選び
 経験からどう意味を汲みとるかを選ぶ
 という意味なのです。

 こういう一見あたりまえのように(魚にとっての水のように)思われる真実が、実人生においては命にかかわる一大事にもなりうる、というウォレスの言葉は、読み返すごとに心に沁み込んでくる。
「学ぶ」ことで人は限りなく自由になれるという、「リベラル・アーツ」の本義にも納得させられる。

 

 そしてまた、次のようなフレーズ……。

 

 人がごった返し
 暑苦しく、のろのろした
 消費文明の地獄のただなかでも、
 なお意味があるばかりか
 星々を輝かせるのとおなじ力が、炎となって燃えあがり
 聖なる光で満たすのは、
 ほんとうは、あなた次第でしょう――
 思いやりと愛、
 表面を見透かせば
 森羅万象はひとつです。

「思いやりのある生きかたについて 大切な機会に少し考えてみたこと」とつけた副題にも通ずる箇所だ。殺伐とした日々の繰り返しの中にあっても、「もうちょっとがんばってみるか」という気にさせられる。

 例年にない暑い夏がやってきた。満員電車でもみくちゃにされ、フラフラに疲れ果てた折にでも、この一節を思い出せば、帰ってシャワーを浴びて、本でも読んでやろうという気にもなるのではないか。

 こんな酷暑になることを予想していたわけではないが、半透明の水色の帯に、表紙の金魚が透けて見える装丁にした。この夏「こころの清涼剤」として、お手にとっていただければ幸いである。

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いま気になること

各界の最前線でアンテナを張り、独自の視点で切り込んで新たな形で発信する仕事師たちに聞く「いま気になること」。胎動する“何か”が見つかる!

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大槻慎二

1961年、長野県生まれ。名古屋大学文学部仏文科卒。福武書店(現ベネッセコーポレーション)で文芸雑誌「海燕」や文芸書の編集に携わった後、朝日新聞社に入社。出版局(のち朝日新聞出版)にて、「一冊の本」、「小説トリッパー」、朝日文庫の編集長を務める。2011年に退社し、現在、田畑書店社主。大阪芸術大学、奈良大学で、出版・編集と創作の講座を持つ。フリーで書籍の企画・編集も手がける。

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