今日も暑い。暑すぎる。
近所のお庭の柵にからまった、ノウゼンカズラの濃いオレンジがギラギラ光って、汗を拭きながら力なく歩く私を上の方から見つめている。
ノウゼンカズラを見ると、夫と最後に一緒に住んだ練馬の夏を思い出す。練馬の夏は、今、私が一人で住む自由が丘より確実に暑かった。
まだ夫婦仲が瓦解する前の夏、夫はソファでぐったり横になっている私に、「今から銀行行くぞ」と片手にお札を持って言った。私は、その夏も暑さに負けて、立ちくらみを起こしていた。「今日は体調悪いから、明日にして」と言うと、
「あなた夏は毎日、具合悪いじゃないの。せっかく、平日の3時前にオレがいるんだから、行くぞ、銀行」と言う。
ここから先は会員限定のコンテンツです
- 無料!
- 今すぐ会員登録して続きを読む
- 会員の方はログインして続きをお楽しみください ログイン
さすらいの自由が丘の記事をもっと読む
さすらいの自由が丘
激しい離婚劇を繰り広げた著者(現在、休戦中)がひとりで戻ってきた自由が丘。田舎者を魅了してやまない町・自由が丘。「衾(ふすま)駅」と内定していた駅名が直前で「自由ヶ丘」となったこの町は、おひとりさまにも優しいロハス空間なのか?自由が丘に“憑かれた”女の徒然日記――。