常識を疑って、ゼロクリアで考える
「考えること」は、今回の出口塾全体に通底するテーマです。
2番目に取り上げたテーマ「人間の仕事はAIに奪われるのか?」について、端折って言うと、「人間はわずか10年先のことも分からないのだから、AIが進歩したとき何が起こるかなんて分かるはずがない」というのが出口さんの答え。
出口さんが2006年にライフネット生命を創業したとき、画面はすべてパソコン仕様でつくりました。当時スマホはゼロだったからです。でも、今はスマホの契約者のほうが多い!
出口さんはいつも若い人たちに「世の中がどう変化するか分からないときに、一番大事なのは考える力。考える力がすべて。人の意見に左右されず、自分の頭で、自分の言葉で、ちゃんとデータを使って考える力を身につける。いまの仕事を一生懸命やる。リンガ・フランカ(*)である英語を一生懸命やる。AIで仕事がなくなることを心配するより、そのほうがはるかに将来が楽しい」と言っているそうです。
*リンガ・フランカ……元は「フランク王国の言葉」を意味するイタリア語。そこから転じて、共通の母語を持たない集団内で意思疎通に使われている言語を指す。
そして、「そもそも考える力とは何でしょうか? どうやったら考える力がつくんでしょうか?」という会場からの質問に対して、出口さんは次のように話してくれました。
「知識はあっても、考える力がなければ役に立たない。おいしい料理を作ろうと思ったら材料を集めてもダメ、調理する力が大事ですよね。材料が知識であり、考える力が調理する能力です。
料理の腕はどうやったら上がりますか? プロの真似です。考える力も一緒。考えるプロは誰ですか? アリストテレスであり、デカルトであり、ちゃんと古典を書いている人たちです。
だから、考える力の強い人の古典を丁寧に読み込んで、考えるパターンや、発想のタイプを追体験して、覚えることで、ちょっとずつ考える力を鍛えるんです。これが昔から言われて検証されてきた、考える力を鍛えるための普遍的なやりかたです」
2時間の講座が終わると、出口さんはまったく疲れた様子がないのですが、聞いているこちらは「脳みその、ふだん使っていない筋肉を使ったなー」と心地よい(ぐったり?)疲労感。
と同時に、安全保障でもがん治療でも、どんな問題であっても、タテ(歴史)ヨコ(世界)とデータで考えれば、自分で答えを出すことができるんだと分かり、「もっと勉強しよう! 勉強したい!」という昂揚感が高まります。
10月25日の第4回では
■経済成長は必要なのか?
■自由貿易はよくないのか?
■投資はしたほうがいいのか、貯金でいいのか?
■日本の大学教育は世界では通用しないのか?
……の4つを取り上げる予定です。
毎回独立したテーマを扱っているので、これまで受講されておらず、1回だけの受講でも、出口塾の楽しさは十分にご体験いただけます。
第4回以降の参加申し込みについては、こちら幻冬舎大学のページをご覧ください。
皆さんにお目にかかれるのを楽しみにしています!
出口塾レポート
幻冬舎大学では、7月12日に「出口塾・自分の頭で考える日本の論点」(全5回)を開講します。この連載では、開講のねらいや、各回の講座の様子などをお伝えしていきます。