肉にも野菜にもお茶にも、すべての食材に「薬効」がある
中国医学ではすべての食材に薬効があると考えます。
たとえば肉にもそれぞれ薬効があります。体にエネルギーを与えて温める鶏肉、体に潤いを与える豚肉、筋骨を強くする赤身の牛肉、寒さを防ぎ血行を改善する羊肉、といったふうです。
また、組み合わせも大切です。
韓国料理の滋養強壮スープに、有名なサムゲタンがあります。
これは、エネルギーをチャージする食材や漢方薬をまとめて使っている、一種のサプリメントスープです。中に入る具材の骨つき鶏肉、もち米、栗、ナツメはすべて、体を温め、気のエネルギーをチャージする食材。そして、使われる漢方薬は、黄耆(おうぎ) 、高麗人参と、エネルギーチャージの効果がありながら、味もおいしく、一般の人が食べても副作用が非常に少ないものが使われます。
薬膳というと、「おばあちゃんの知恵袋」的な、経験と勘でブレンドされたものをイメージするかもしれません。しかし実際には、陰陽論、気血水論という中国医学の理論体系に忠実に配合された「合理的な」処方が多く見られます。
また日本で「薬膳」というと、「薬が入った食事」というイメージをお持ちの人もいるかもしれません。しかし、そうではなく、「食に薬の効果を期待して作る、食べる」のが「薬膳」の考え方なのです。
「医食同源」「薬食同源」という言葉があるように、中国医学では、食材と薬の境界線があまりはっきりしていません。
実際、食材としても漢方としても使われるものが多くあります。ショウガやネギは食材としても漢方薬としても使われます。日本人におなじみの「緑茶」は、「細茶(さいちゃ)」という生薬名で、漢方薬に配合されます。体の上部の熱を取り去り、頭痛などに有効です。
つまり、自然界の動植物にはすべて、人間の体に何らかの作用を及ぼす働きがあり、それを効能の強弱、副作用の有無で、薬と食材に分類します。
そして、季節、体質、環境などによって、ふさわしい組み合わせで、薬膳として利用したり、漢方として、服用したりします。
1世紀ごろに書かれたと伝えられる中国最古の本草書『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』には、365種の薬物(植物、動物、鉱物)が収録され、効能と副作用の強弱によって、次のように分類されています。
◇上品(じょうほん)――作用が穏やか。長期服用しても害がなく、命を養う養生薬。体を軽くし、抵抗力や治癒力を高めるために使用する。
◇中品(ちゅうほん)――上品よりも作用が強く、毒性があるものもある。病を癒し、虚弱な体質を増強するために使用する。
◇下品(げほん)――病を治す薬で、発熱や体の痛みなどを取り除く薬効が強いが、毒性も強い。長期服用はせず、健康なときには使用しない。
食材には、効果があってなおかつ副作用のないもの、つまり「上品」を使わなければなりません。食は毎日のこと。どんなに薬効が高くても、副作用のあるものや味がおいしくないものは日常的に使うことができません。
そこで、この本では、中国伝統医学の健康・老化についての考え方をご説明しながら、抗衰老効果がありつつも、副作用の心配がなく、味もおいしい食材やその食べ方をご紹介していきましょう。
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3月13日(水)19時から、阪口さんの「春の薬膳講座」を開催します。試食とおみやげつきの、美味しくて楽しい入門講座です。詳細・お申し込みは幻冬舎大学のページからどうぞ。
老いない体をつくる中国医学入門
「毎日一握りのナッツを」「肉は骨つき・皮つきが基本」「食べても消化できなければ毒になる」等、2000年の歴史が証明する究極のアンチエイジングを、やさしく紹介。