中国の伝統医学では、人間の体を肝(かん)・心(しん)・脾(ひ)・肺(はい)・腎(じん)の五臓で捉えます。中でもとくに重要なのが「腎」。2000年前に書かれた中国医学の教科書でも、人生のステージが腎のリズムで決まっている様子が書かれています。
「腎」とは一体何で、その力を高めるにはどうすればいいのでしょうか?
『老いない体をつくる中国医学入門――決め手は五臓の「腎」の力』の著者・阪口珠未さんが解説します。
(記事の終わりには阪口珠未さんの薬膳講座のご案内があります)
「腎」は「若さの素」のバッテリー電池
「五臓」は、エネルギー(気)、栄養(血)、体液(水)、エネルギーのエッセンス(精)を作り出す活動を行います。また「五臓」は、臓器そのものだけでなく、臓器の働きも含んでいます。西洋医学でいう臓器と同じ名称を使いますが、意味や働きは少し異なるものと考えるとよいでしょう。
五臓はすべて大切な臓器ですが、中国医学の理論の中で、とくに老化と関係の深い臓器が「腎」です。
西洋医学では、腎臓は、血液を濾過(ろか)して老廃物や塩分を尿として体の外へ追い出し、体に必要なものは再吸収して体内に留める働きをしています。また、体液量の調節なども行っています。
中国医学では、このような水の代謝に関わる働きのほかに、独特の重要な役割があります。それは、先天的なエネルギーを蓄えている臓器ということです。いわば生命エネルギー=若さの素のバッテリー電池というところでしょう。
腎は「先天の本」と言われます。人間は腎という臓器に先天的なエネルギーを持って生まれ、そのエネルギーを日々使いながら生き、成長、成熟、老化のプロセスを経て、腎のエネルギーがゼロになったときに死が訪れます。
腎に蓄えられているエネルギー、エッセンスのことを「腎精」と呼びます。腎精は、食事や生活の不摂生によって消耗しますし、加齢によっても減っていきます。腎精の量は、生まれながらの腎の強さによる個人差がありますが、それ以上に、食事や生活の摂生により、目減りしていく腎精をチャージしていけるかどうかが、体を若々しく保つ決め手にな
ります。
「腎精」という言葉は耳慣れなくても、「精がつく」という言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。「精がつく」という言い方は、もともと中国医学の用語である「腎精がつく」が短くなったもの。ですので、すっぽん、うなぎ、山芋、牡蠣など、現在私たちが、「精がつく食材」と言っているものは、「腎精」をチャージするものがほとんどなのです。そう思うと、「腎精」もぐっと身近にイメージできるのではないでしょうか。
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老いない体をつくる中国医学入門
「毎日一握りのナッツを」「肉は骨つき・皮つきが基本」「食べても消化できなければ毒になる」等、2000年の歴史が証明する究極のアンチエイジングを、やさしく紹介。