ストレス溜まってばかりで生きづらいなぁ…と思っているのは人間だけじゃない! 毎日どこかで目にするカラスたちも実は悩みながら生きています。カラス研究者の松原始先生(『カラス屋、カラスを食べる』著者)に、人気ライター・夏生さえりさんが突撃取材した記事をどうぞ。(後編はこちら→「カラスは人の言葉がわかる」は本当か? カラス研究者・松原始先生に聞いてみた【後編】)。
* * *
みなさん、こんにちは! ライターの夏生さえり(@N908Sa)です。
さて突然ですが、みなさんは「カラス」にどんなイメージを持っていますか? 襲われそうで怖い、頭がよくてずる賢い、ゴミを漁って汚い、うるさい、嫌な鳥……。全身まっ黒なせいか、悪いイメージを持ちがちですよね。
でも「カラスほどかわいい鳥はいない」と語る人がいます。
『カラス屋、カラスを食べる』(幻冬舎新書)などカラスにまつわる本をたくさん執筆してきた、松原始先生です!
松原始(まつばら・はじめ)
1969年、奈良県生まれ。京都大学理学部卒業。同大学院理学研究科博士課程修了。京都大学理学博士。専門は動物行動学。東京大学総合研究博物館勤務。研究テーマはカラスの生態および行動と進化。
松原先生はなんと25年もカラスを研究されている、世界でも珍しいカラス研究者です!
お話を伺ってみると……
カラスの目で見ると、東京は入ってはいけないところだらけ…!
カラスにとって代々木公園は、フリーゾーン?
カラスの卵は、チョコミント色…!
カラスが、先生の家までついてくる…!?
などなど、これまで知らなかったカラスの不思議なお話をたくさん伺うことができました。
「カラス」という種類はない
本日はよろしくお願いします!
早速ですが、カラスにはどうしても怖いイメージがあるのですが…。
だいたいの方がそういうイメージをお持ちですよね。
でも、カラスは「ビビり」だし、時にまぬけです。これほど面白くてかわいい鳥はいない、と僕は思うんです。カラスってよく見ていると、「今、餌採りに行くか迷っているでしょ」「今、照れ隠ししたでしょ」と突っ込めそうなくらい、動きが多様で……。観察していて飽きることはないですね。カラスを研究し続けて、25年も経ってしまったくらいですから。
25年! すごいですね……
カラスには種類があるのでしょうか?どれも同じように見えるのですが。
みなさんは「カラス」と一括りに呼びますが、日本では、記録されたもので7種(うち2種は迷鳥)のカラスが生息しています。世界だと約40種くらいいます。
わたしたちがよく見かけるカラスは、2種類です。街中で見かけるカラスの大半が、「ハシブトガラス」。そしてハシブトよりも少し小さく、農耕地などで見かけるのが「ハシボソガラス」です。わかりにくいので、「ブト」「ボソ」と呼びますね。ブトとボソの違いはいろいろとあるのですが、まず鳴き声で言えば、基本的に「カアカア」と鳴くのがブト。「ガアガア」と鳴くのがボソです。
鳴き声や見た目以外にも違いはありますか?
性格が違いますね。よく「カラスは頭が良く、くるみを割りたいときには道路に持って行き、車に引かせる」などという話もよく聞きますが、そういう“小技”を使うのはボソだけです。
ブトは、やることが力づく。くちばしで3回叩いて割れなかったら諦める、という具合です。そのかわり社会性に長けていて、仲間内でコミュニケーションを取ったり、仲間を呼び集めて餌を食べたりします。
ブトとボソ、そんなに違いがあるんですね。ここ、代々木公園にいるのはどちらですか?
ブトですね。
ぜひ生態を知ってほしいので、今日は散歩をしながら、実際に見ていきましょう。
カラスは「あとで食べよう」と餌を隠す
……あっ。見てください。あそこのカラス、今まさに餌を隠しています。
――えっ、どこですか!?
あっ、餌を隠している!! ちょっと行ってみましょう!!(走りだす)。
――!?
うーん……残念ながら隠された餌は見つかりませんね。
カラスって、「あとで食べておこう」と”貯食”をするんですよ。朝はゴミを食べ、食べきれなかった分はどこかへ隠しておいて、お腹が空いた時に引き出して食べます。
その場所は、1匹につき最大で100カ所くらいあると言われています。通常だと10~30カ所くらいですね。ビルの上や、ベランダの鉢植えなどによく隠していますよ。他のカラスが見ていないかよく注意して隠して、盗まれないように気をつけて、ときにはフェイクまですることもあります。
すごい。そんなに覚えていられるんですね。それって……
あっ! あれもみてください(走り出す)。あっ! あっちもみてください(走り出す)。
ハァ…ハァ…あの、先生、カラスが好きなのはわかるのですが、ちょっと落ち着いてください。
あ、すみません(笑)。
(カラスへの熱量がすごい…)。
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カラス屋、カラスを食べる
カラスを愛しカラスに愛された松原始先生が、フィールドワークという名の「大ぼうけん」を綴ります。「カラスの肉は生ゴミ味!?」「カラスは女子供をバカにする!?」クレイジーな日常を覗けば、カラスの、そして動物たちの愛らしい生き様が見えてきます。
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