サンワカンパニーの2代目社長・山根太郎さんと、ライフネット生命の創業者で、現在は立命館アジア太平洋大学(APU)学長、サンワカンパニーの社外取締役も務める出口治明さん。ありそうでなかった、社長×社外取締役による異色対談の第2回。
社長就任当初は2代目であることに引け目を感じていたという山根さん。そんな気持ちを吹っ切ることができたのは、出口さんに言われた、ある言葉のおかげだそうです。
起業家はカッコいいけど、2代目はアホのぼんぼん?
出口 『アトツギが日本を救う―ー事業承継は最高のベンチャーだ』を熟読させていただきました。「アトツギって、全然かっこ悪くないよ。チャレンジしてごらん」というメッセージがとても強いですね。大事なことがテンポよく書かれていて、面白かったです。これは本当にたくさんの人に読んでほしい本ですね。
山根 ありがとうございます。本の反響としては、面白いという意見があった一方、現状を知らなすぎる、継ぐと不幸になる会社も山ほどあるんだという声も寄せられました。
たしかに、それはそうだと思うんですよ。でも、たとえ黒字の会社でも、成長させる余地がまだある会社でも、2代目と言われるのがかっこ悪い、親の七光と言われるのが嫌だから、という理由で、継ぐのをやめておこうというケースが、実際に少なくないわけです。
出口 そうですね。アトツギがいないというのは、今の日本の大きな課題のひとつです。100万社以上の中小企業のみなさんが、お子さんはいるのにアトツギがいないということで悩んでいますから。
親の仕事を継ぐのはかっこ悪い、東京できれいなオフィスに勤めているほうがかっこいいとか、そんな理由で後継者が不足しているのですが、そうじゃないよと。面白い仕事は、足元に転がっているんだよというメッセージが、はっきり入ってますよね。
山根 はい。ただ、僕自身も最初のころは、「起業家はかっこいいけど、2代目はアホのぼんぼん」と思われてるような気がしていましたし、親が作った会社で事業をすることに対して、後ろめたさのようなものもありました。
だから、就任当初は、会社の代表挨拶のところに顔写真を入れていませんでしたし、メディアに登場することも拒んでいました。
でも、出口さんから、「2代目だからというコンプレックスのせいで、会社の広告塔になるという社長の一番重要な仕事をしないなら、今すぐ辞めたほうがいい」と言われて、何かが吹っ切れました。
出口 2代目だからって引け目を感じても、2代目は2代目なんだから、しゃぁないことを考えても仕方ないですよね。1代目になれるんだったら考えればいいけど、なれないんだから。
人間って、こうだったらいいのにといろいろ考えてしまうけど、みんな、いろんなものを背負ってるんですよ。だから、しゃぁないんですよ。背負ってるものは消せないので。できることはやっぱり、未来にしかないので。これから何をするかが全てですよね。
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