言立(ことだ)て
「ことだて」の「こと」は、言葉の「こと」です。ですから、言葉を立てるということをいいます。では、言葉を立てるとは、どういうことかというと、しっかりと自分の意見を主張することです。つまり、明言するということになります。
大伴家持は、天皇への忠誠心をしっかりと述べる時に、この「言立て」という言葉を使っています。奈良時代は、天皇を中心とした国家ですから、天皇に忠誠を誓うのはあたりまえのことでした。しかし、それを口に出していうことはあまりなかったと思われます。あまりにも、あたりまえすぎることを、皆の前で明言する機会というものは、逆に少ないといえるでしょう。ですから、あえて明言したい時に、言立てという言葉を使いました。あえて言立てして、こんなパリからのたよりはどうでしょう。
「ルーブル美術館のすばらしさなど、口に出して表現したとしても、ありふれてしまいますが、私はあえて言立てしたいのです。やはり、あの建物のなかで見る名画は、何ものにも代えられません。」
「令和」の心がわかる万葉集のことば
万葉集の巻五から採られた新元号の「令和」。そこに込められた万葉ことばの心、おだやかな日を寿(ことほ)ぐ1300年前の先祖たちの思い……。8世紀のことばの文化財・万葉集に使われている「万葉ことば」(古き日本語)を学び、心を磨く日本語練習帳。
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