たらちねの
「たらちね」のという言葉が、本来どういった言葉であるのか、まだよくわかっていません。一つの解釈としては、「たら」を垂れると解釈して、「ち」を乳と解釈する説です。すると垂れ下がった乳房ということになります。
よく、年を取って垂れた乳だと解釈する人がいますが、それは間違いです。現在とは違って、乳が房状になる人は古代では稀でした。栄養状態がよくないからです。したがって、「たらちね」を垂れた乳房と解釈する場合は、それほどまでに豊満であると考えねばなりません。
万葉集において、父親というものは、たいへん影の薄い存在です。対する母親は、娘たちに対して、絶対的な存在です。母親の許可がなくては、男女がつきあうこともできませんでした。
よく古代では母権制社会という人がいますが、私はそうは思いません。今日においても、家庭内における生活については、母親の力が強いのではないでしょうか。
「令和」の心がわかる万葉集のことば
万葉集の巻五から採られた新元号の「令和」。そこに込められた万葉ことばの心、おだやかな日を寿(ことほ)ぐ1300年前の先祖たちの思い……。8世紀のことばの文化財・万葉集に使われている「万葉ことば」(古き日本語)を学び、心を磨く日本語練習帳。
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