かしこし
先日、テレビを見ていて、こんな難しい言い方をしても、誰もわからないのではないかと思ったことがありました。
かしこきあたりにおかせられましては、貴殿に恩賞を、たまわるとのこと
この場合の「かしこきあたり」とは、宮廷とか天皇という意味ですから、宮廷が恩賞を与えるであろうといっているのです。
現代語の「かしこい」は、主として利口だということですが、万葉集においては、恐れおおいということです。したがって、「かしこきあたり」とは、恐れおおいところということで、具体的には、宮廷や天皇を指すのです。
「かしこし」の古い使い方が「かしこまる」という言葉に残っています。「かしこまる」という動詞は、恐れおおいということを察知して、慎んだ態度を取るという言葉です。客から頼みごとをされて、「かしこまりました。」というのは、そのためです。
「令和」の心がわかる万葉集のことば
万葉集の巻五から採られた新元号の「令和」。そこに込められた万葉ことばの心、おだやかな日を寿(ことほ)ぐ1300年前の先祖たちの思い……。8世紀のことばの文化財・万葉集に使われている「万葉ことば」(古き日本語)を学び、心を磨く日本語練習帳。
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