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忍者はすごかった

2019.08.14 公開 ポスト

人は嘘をつくと目が大きくなる…忍者はこのサインを見逃さない山田雄司

黒装束で素早く動き、手裏剣で敵を撃退する……。「忍者」についてそんなイメージを持っていませんか? 実はこうしたイメージはすべてフィクションだったのです! 400年前の忍術書をひもとき、忍者の真の姿を浮かび上がらせたのが、忍者研究の第一人者、山田雄司氏の『忍者はすごかった』。現代を生きる私たちにも役立つ「忍者の教え」が満載のこの本より、一部を抜粋してご紹介します。

*   *   *

相手の「形相」から心を見抜く

形相見ようの事。言うは怒るに色赤きは勇相なり。青きは怯えの者なり。また眼大なるは偽りを言い、常に歯の見ゆるは貧相なり。下唇平生食いしめたるは、人の心をため見る相なり。

──『当流奪口忍之巻註』

(形相により判断すること。怒っているときに顔色が赤いのは勇相である。青いのは怯えている者である。また眼が大きいときは嘘を言っていて、常に歯が見えるのは貧相である。下唇をいつも嚙みしめているのは、人の心をじっと見る相である)

(写真:iStock.com/toskov)

その他にも形相から判断する方法はさまざまあると述べています。

形相を見ることにより、その人がどのような心理状態かを判断することができます。これは現代の心理学でも、目や口元などの動きによって、相手が嘘を言っているのか、緊張しているのかなど判断することが可能とされています。これは相手が信頼できるのか判断する要素となります。

「酒」「色」「旅」で本性を知る

人の本性見ようの事。言うは『君道要法』にいう通り、酒をもってし色を以ってし、又旅などにては本性あらわるるもの也、もってこれしるなり。諺に馬は乗て見、人は添て見るという。

──『当流奪口忍之巻註』

(人の本性の見方について。兵法書『君道要法』が言うとおり、酒や女、旅などにおいて本性が表れ、知ることができる。ことわざには、「馬は乗ってみよ、人には添うてみよ」とある)

「馬には乗ってみなければどのような馬であるかわからないし、人は生活を一緒にすることによって初めて相手の性格を知ることができる」と言われるように、相手に十分近づかなければ、その本性を知ることはできません

酒を飲めば日頃秘めていることも話すし、好みの女性には自分の正体を晒すし、「旅の恥はかきすて」のことわざもあるとおり、旅の際には欲望をあらわにします。このような機会を通じて、相手の本性を知ることができるでしょう。

恋愛中や病気のときに本心が見える

勇者力尽きる時知る事。美女美男を見て恋慕の時、又は病後など見合わすなり。

──『当流奪口忍之巻註』

(勇者は力が尽きるときにわかる。美女美男を見て恋慕しているとき、または病後などの力が抜けているときに、その人の本質がわかる)

(写真:iStock.com/reorange)

人は家の外では、自分がどう見られているか、体面を気にして常に緊張しているものです。

しかし、自分で自分がコントロールできないような状態のとき、すなわち恋愛しているときや病気などのとき、さらには今際のときにその人の本質がわかるのだと書かれています。

人の本心を見抜くことはなかなか難しいですが、ときにそれを垣間見ることのできる瞬間が訪れます。そうした好機を見逃さなければ、相手の性格を読みとることができるのです。

外見や職業で判断しすぎると痛い目に遭う

貴賤無二の心を持つの事。言うは貴賤の二つは形は変われども、七情の気の備わるところ、二つはなし。例えば寒暑の平等なるがごとし。

──『当流奪口忍之巻註』

(貴賤変わらぬ心を持つこと。貴賤の二つは形は違っていても、七情(喜・怒・哀・楽・愛・悪・欲)が備わっていることに変わりはない。例えば、寒暑は誰にとっても平等であるようなものである)

さらに次のように書かれています。

この理をわきまえずに、貴人ならば心が賢く、賤しければ心が愚かであると心得、賤しい人の言葉は用いず、貴人の言葉を用いると心得ている輩が世間には多い。これは貴賤に二有りという心である。

そうではなく、貴愚賤賢であってもこれを外面にあらわし行動することではなく、ただ内心に貴賤無二の理をわきまえて、外面は貴愚賤賢であっても節度を失わず、内心でこれを考えるのである。これを貴賤無二の心持ちという。

誰でも七情を持っていることに変わりはなく、人を外見やその人の職業などで判断してはいけないという教えです。さまざまな人の意見を聞くことが重要です。人の重要性はその外見ではなく内面であるということを示しています。

関連書籍

山田雄司『忍者はすごかった 忍術書81の謎を解く』

黒装束で素早く動き、手裏剣で敵を撃退する……忍者に対するそんなイメージは、すべてフィクションだった!「忍者」という呼び名自体が昭和30年代に小説などを通じて定着したもので、歴史的には「忍び」と呼ばれた。 最も大事な使命は、敵方の情報を主君に伝えるため必ず生きて帰ること。 敵城に忍び込んで情報を得ることはもちろん、日中は僧侶や旅人に化けて話を聞き出していた。「酒、淫乱、博打で敵を利用せよ」「人の心の縛り方」など忍術書の81の教えから、忍者の本当の姿を克明に浮かび上がらせる。

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山田雄司

1967年、静岡県生まれ。京都大学文学部史学科卒業。亀岡市史編さん室を経て、筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科史学専攻(日本文化研究学際カリキュラム)修了。博士(学術)。現在、三重大学人文学部教授。著書に『怨霊とは何か』(中公新書)、『忍者の歴史』(角川選書)などがある。

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