「悩みから逃げず、きちんと悩める人にだけ濃密な人生はやってくる」。そうおっしゃるのは、心理学者でカウンセラーの諸富祥彦先生。とはいえ、やみくもに悩めばいいわけではありません。「正しい悩み方」があるのです。著書『悩みぬく意味』は、その具体的方法を伝授してくれる本。いつも悩みがちなあなたにぜひ読んでいただきたい本書から、一部をご紹介します。
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「フォーカシング」を体験する
これから、自分が今、悩んでいることを一つ取り上げて、それについてフォーカシングをしてみましょう。以下に、基本的なインストラクションを示します。
やってみて、「一人ではなかなかうまくいかない」とか、「これでいいのかどうか、よくわからない」と思われる方も多いかと思います。けれど、私のこれまでの経験では、ポイントさえ押さえておけば、最初から一人でできる方も少なくありません。まず、15分ほど時間をとって取り組んでみましょう。
(1) 何か、気になる問題、あなたを今困らせている「悩み」を一つ、とりあげましょう。
最初の練習ですので、あまり深刻ではない問題、「ちょっと気がかりなこと」くらいがちょうどいいでしょう。たとえば、先に例として示した「ちょっと気がかりな友だちのこと」くらいが、ちょうどいいと思います。
(2) からだの感じに注意を向けてみましょう。
(1)で選んだ悩み、少し気になることをありありと思い浮かべていると、「からだのどこに、どんな感じが生じてくるか」を確かめてみます。
「あのこと(あの人)について私の内側は、どんな感じでいるのかな」と、自分の内側に問いかけてみましょう。その問いに自分で答えようとしないで、それに対する反応が内側のほうから自然と返ってくるのを静かに、根気強く待ちましょう。
(3) 何かが出てきたら、それがどんなものであっても、ただそのまま認めましょう。
「あなたはそこにいるんですね。知っていますよ」──そんな姿勢でどんなものが出てきてもただそれをそのまま認めていきましょう。
(4) 出てきた「それ」の側にいて、関心を注ぎつつ眺めているような姿勢でいましょう。
しばらく「それ」の側にいて、関心を注ぎつつ、そこから何かが出てくるのを待っていましょう。無理に頭でこじつけて考えたりしないように。
(5) その感じにぴったりくる言葉、イメージ、音、動作などを探してみましょう。
何か出てきたら、そのまま受け止めましょう。
「うまくやる」必要はない
(6) 出てきた言葉、イメージ、音、動作などを、ほんとうにそれがぴったりくるかどうか、自分の内側に戻して響かせてみましょう。
「これでぴったりかな」「部分的にはいいけど、もっと何かある、ということはないかな」「もっとぴったりくる言葉やイメージはないかな」と自分の内側にたずねてみましょう。
(7) もうじゅうぶんにやれたという感じになるまで繰り返して、出てきたものを受け止め、味わいましょう。
(8) 出てきた言葉やイメージ、音、動作などが抽象的すぎて、それが自分の生活にとってどんな意味があるのか、気になった時は、こんなふうに自分に問いかけてもいいでしょう。
「生活の中で、それと似たものはないかな」
(9) じゅうぶんにやれたという感じが得られたら、「もっとそこに何かないかな」と内側の「それ」にたずねましょう。
「もっとある」と答えが返ってきたら、それに注意を向けましょう。ないようであれば、そろそろ終わりにしてもいいかどうか「それ」にたずねてみましょう。
(10) 終わってもいい、という答えが返ってきたら、今自分がいるところに目印(一番ぴったりきた言葉、イメージ、音や動作など)を付けましょう。
そして、出てきたすべてのプロセスに感謝して、ゆっくりと終わりにしましょう。
フォーカシングは、ひとりでおこなうこともできますが、もし可能であれば、誰か信頼できる人に側にいて聴いてもらえるといいでしょう。聴く人は、そこで出てきた言葉をゆっくりといっしょに繰り返してあげるといいでしょう。余計な心配やアドバイスはせずに、ただ、相手が言った言葉をそのまま繰り返すだけです。それ以上のことは、一切する必要がありません。
今、フォーカシングを体験してみて、いかがだったでしょうか。
自分の内側に、ぐっと深く入っていくことができたでしょうか。
とりあげたテーマ(悩み)について、自分の内側はどんな感じでいるのか、こころの声を聴くことはできたでしょうか。
何か、一つでも、気づきやヒントのようなものは得られたでしょうか。
うまくやる必要はありません。
我流でもいいので、今、あなたを困らせている「悩み」について、自分の内側の声を少しでも聴くことができればそれでいいのです。
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悩みぬく意味
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