根拠、政策、補償がセットのメルケルスピーチと精神論の日本
次々と都市が封鎖され、国境に壁が出来る。世界中が慌てて殻に閉じこもる光景は、「火の鳥~未来編」で描かれる世界と似ている。ガシャン、ガシャンと扉が閉まる音が響く中をウィルスの感染はどんどん広がる。このまま世界は分断されていくのだろうか?
2019年の12月、世界はほぼ同時に新たな感染症の発生を知った。同じスタート地点だっただけに、それぞれの国の対応の内容やスピード感の違いは大変興味深い。日本では対策が後手後手にまわるなか、五輪開催も延期。首相が記者会見で質問に答えない姿勢には批判が集まった。
ドイツのメルケル首相、フランスのマクロン大統領や英国のジョンソン首相の演説がネットで多く拡散されている。それぞれ、かなり強いメッセージで厳しい内容を話している。
特にメルケル首相の演説への評価が高い。科学的根拠をベースにしたハードなシナリオを最初に提示し、それに向けて出来ることを具体的に話しながら、そのために尽力することになる人々、医療現場からスーパーのスタッフにまで謝意を述べていく。語りかける相手は「統計上の数字」ではなく、一人一人の生きた人間であり、そうした一人一人が連帯することの重要さを訴えている。
学校、施設やイベントの閉鎖、集会の禁止、移動の制限。こうした制約が民主主義社会において軽々に判断されてはならないと強調し、その制約によって生じる経済的なダメージ、特に雇用への対応も合わせて述べる。ちなみにこのスピーチとは別にグリュッターズ文化相も文化施設や芸術家への支援を表明している。
メルケルのスピーチは、根拠、政策、補償がセットだ。大事なのは、決して精神論を声高に訴えるのではなく、「日々変わる状況に合わせて、自分たちも学び続け、考え直しながら対応していく」と述べている点。これこそ科学的な態度であり、「一丸となって!」といった言い回しからは空振りする音が聞こえてくるようだ。
政治決断を透明にし、説明を続ける。このこれまでの態度が、国民の信頼を勝ち得て、今回のような事態における厳しい内容のスピーチも受け入れられている。扉を閉ざすことに信任を得た、とも言える。
ただ、本当に世界は閉じてしまって良いのだろうか?
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礼はいらないよ
You are welcome.礼はいらないよ。この寛容さこそ、今求められる精神だ。パリ生まれ、東大中退、脳梗塞の合併症で失明。眼帯のラッパー、ダースレイダーが思考し、試行する、分断を超える作法。
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