外出自粛も解かれ、外に出るようになりましたが、営業するお店でも室内より室外のテラスなどが人気の様子。フランス人がカフェでお茶をするように、日本人もピクニックやテラスなど「屋外」を楽しんで新しい習慣を! なんて素敵な意見もありますが、日本人も昔から、外で寛ぐのは得意です。例えば夜のコンビニの前。たむろするヤンキーのみなさん。非常によく見る光景でした。
ヤンキーはなぜ座るのか
さて。そのヤンキーのみなさんのいわゆる「ヤンキー座り」。それが突然で恐縮ですが「縄紋時代」と深く関係しているとは、ご存知でしたでしょうか。
直樹は、付箋を貼り付けたページを広げた。
例えば、この部分。
主人公が、最初に目撃する縄文時代の光景だ。
男たちが、蹲踞の姿勢で焚き火を囲んでいる。その姿は裸で、刺青が施されている。その様は、たむろするヤンキーのようだと。
蹲踞というのは、簡単にいえばしゃがんでいる姿で、土俵上の力士を想像すると早い。仕切り前のあの姿を言う。または、剣道でも立合いの前にしゃがむが、あれがまさに蹲踞だ。蹲踞というのは、日本伝統の姿勢で、巫み女こもまた、神の前であの姿勢をとる。
いや、なにも、力士や剣士、巫女に限ったことではない。日本人は古来、どんな人であろうと、蹲踞の姿勢をとってきた。その一例が、蹲踞(つくばい)。つくばいとは、手を清めるための手水鉢のことで、鉢は低い場所にあり、手を洗うには「つくばう(しゃがむ)」必要があることからその名がある。
つまり、日本人は「しゃがむ」ことを日常的に行ってきた民族で、それは、縄文時代からだとも言われている。
大学時代、上野の国立科学博物館で“蹲踞面”を持つ縄文時代の人骨を見たことがある。蹲踞が習慣化すると、股関節、膝関節、足首の関節に独特な小関節面または圧痕ができるのだが、それを“蹲踞面”というらしい。その蹲踞面が認められる個体が縄文時代の骨には多く見られるというのだ。
つまり、日本では、縄文時代から蹲踞が日常的な姿勢だったのだ。“正座”が一般的になったのは江戸時代からだと言われているが、それ以前は、蹲踞の姿勢が日本人の習慣だったようだ。
が、今は、欧米化の影響で、蹲踞の姿勢をとるのは一部の人に限られている。その一部の中に“ヤンキー”がいる。彼らは、誰に教えられたわけでもなく、伝統的に、あの姿勢をとる。
上記は真梨幸子さんの新刊『縄紋』からの抜粋です。私たちが何気なくしている仕草、習慣がまさか縄文時代とつながるものとは思ってもいないので、びっくりしてしまいます。
ところが、縄紋時代と現代のつながりはそれだけではないのです。例えばマンションの価格は縄紋時代の土地の造形と関係していたり、日本人に糖尿病が多いのは縄紋時代の食生活と関係していたり……。
縄紋時代なんて関係ないと思っていたあなた。
ぜひとも『縄紋』であなたと縄紋時代のつながりを楽しんでみてください。
え、そもそもなぜ「縄紋」なのか気になりますか。前回の記事「縄文?いいえ「縄紋」ですが、ご存知ですか」もお楽しみくださいませ。
(次回に続く)
和製ダ・ヴィンチ・コード『縄紋』
縄紋、と聞いて、「何それ?」と思ったあなた。
実は、あなたが欲しいマンションの価格も、日本人に糖尿病が多いのも、ヤンキー坐りの発祥も、神社に鳥居と参道があるのも、謎の病気が流行るのも、最近フェミニズムが台頭しているのも、隣りのあの人が消えたのも、殺人が起こったのも、ぜんぶ「縄紋」のせいかもしれません。
イヤミスの女王、真梨幸子さんの新刊『縄紋』発売記念特集です。