梅雨の季節になりました。外を歩くのは少し面倒臭い季節とはいえ、最近まで外出自粛だったので、雨でもなんでも外出してフラフラ歩く幸せを痛感する今日この頃です。
暑くなって、外出なんてとんでもない! という季節になる前に、ご近所散歩はいかがでしょうか。意外と知らない名所や秘密の場所が、日本にはたくさんあるのが面白いです。
例えば東京。皇居のすぐ近く、東京のど真ん中。日本三大怨霊といわれている平将門が祀られている神田明神があります。そこに、”江戸神社”なるものがあるのはご存知でしょうか。
初の歴史ミステリ『縄紋』の刊行を記念して、著者の真梨幸子さんと、作中にも登場する神田明神をはじめ、聖地巡りも兼ねて刊行のお礼参りにうかがいました。
怨霊も神様に祀り上げる日本
「日本人は、基本、ビビリなのかもしれないな。敗者や異端者や犯罪者を悪魔や鬼として排除するのではなく、神に昇格させて祀る。つまり、なんとなく温存してしまうんだ。しかも、神として」
「日本人の曖昧な性格のせいでしょうか?」
「というか、やっぱり、心のどこかでビビっているからなんだと思う。日本人は、大昔から、呪いを死ぬほど恐れているからな。呪われるよりかは、神として崇めてしまえ……的な考えだ。神田明神(かんだみょうじん)の平将門(たいらのまさかど)とか、天満天神(てんまてんじん)の菅原道真(すがわらのみちざね)とか」
(『縄紋』より抜粋)
コロナもありいろいろと世界中たいへんなことになっている2020年。かつての日本人も何か大きな災害や問題があった時、怨霊の存在に恐怖を感じていたのではないでしょうか。それを”魔女狩り”というように排除するのではなく、神様として祀る。その怨霊と共存する、それどころか、崇める習慣に、何か日本的な独特の”問題解決”法を感じます。
『縄紋』刊行のお礼参り。まずは、「将門の首塚」からお散歩開始です。
神様にお尻は向けられない
皇居も近い、大手町のオフィス街。整備されたビル群の隙間に「平将門の首塚」はあります。平日の昼間でしたが、男性が二人、熱心にお参りをする姿が。
平将門は平安中期に関東で力があった豪族で武将です。将門の時代に平氏一族の抗争が発生。平将門は勢力を拡大して「新皇」を自称するように。しかし、二ヶ月足らずで討伐され、将門の首は平安京まで送られ、都大路で晒されました。しかし。
伝承ではこの首が江戸に飛び去り、この地(武蔵国豊嶋郡芝崎村)に落ちたのだとか。
そのあと怨霊のせいなのか色んな災いが起こって首塚を作ることに。関東大震災などで一度はなくなったりしましたが、現在は「都指定旧跡 将門塚」となって、東京都教育委員会が土地を所有しています。
大都会の大きなビルの間で、ひっそりと佇む静謐なこの空間にいると、少しだけ体が涼しさを感じるのは、ビルの日陰になったせいか、ビル風のせいか、怨霊のせいか……。
隣接する大きなオフィスビルを眺めていると真梨さんが
「隣接するビルは塚にお尻を向けないように座っている、なんて噂もあるとかないとかですよ」と教えてくれました。
夏の散歩の、”精神的涼み場所”に、怨霊眠る「平将門の首塚」はいかがでしょうか。
次回は、神田明神へ足をのばします。
将門塚(平将門の首塚)/しょうもんづか(たいらのまさかどのくびづか)
所在地 東京都千代田区大手町1-2
和製ダ・ヴィンチ・コード『縄紋』
縄紋、と聞いて、「何それ?」と思ったあなた。
実は、あなたが欲しいマンションの価格も、日本人に糖尿病が多いのも、ヤンキー坐りの発祥も、神社に鳥居と参道があるのも、謎の病気が流行るのも、最近フェミニズムが台頭しているのも、隣りのあの人が消えたのも、殺人が起こったのも、ぜんぶ「縄紋」のせいかもしれません。
イヤミスの女王、真梨幸子さんの新刊『縄紋』発売記念特集です。