東日本大震災や熊本地震など、大きな地震が起こるたび、これまでの悲惨な体験から学び取った知恵がまったく活かされず、同じことを繰り返している日本。
実際に被災した経験を持つ著者は「災害に直面して100%の生存確率はない」とおっしゃっています。ただそのような中でも、発災時にどんな行動をとれば少しでも生存確率が高くなるか、『震度7の生存確率』には巨大地震を生き残るために必要な知識が詰まっています。
近い将来の発生が確実視されている首都直下地震と南海トラフ地震。発災の瞬間にひとりひとりが何をすべきか、本書から抜粋して紹介します。
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地下鉄に乗車中、地震に遭遇。その時、あなたは?
通勤に毎日使う地下鉄に乗車していました。通勤時間帯ということもあり車内は混雑していますが、新聞が読める程度の混み具合です。あなたは車両の真ん中あたりでつり革につかまり、立っていました。そこに今まで経験したことのない激しい揺れに襲われました。地下鉄に乗車中なのでよくわかりませんが、震度7はあると思われました。
その時、あなたがとるとっさの行動は?
さて、あなたは何番を選択しましたか?
危険からの回避を示す生存確率は次のとおりです。
(1) 70%
(2) 50%
(3) 30%
この中で最も危険度が低く生存確率を高められる行動は(1)です。震度7の揺れに襲われた場合、実際には激しい揺れに飛ばされた人が宙を飛んでぶつかってくる可能性があるので、その場に踏みとどまることは困難かもしれません。それでも、つり革を全力でしっかりと両手でつかみ、さらに両足でしっかり踏ん張って揺れに飛ばされないことが重要です。足が床から離れても、つり革は1個にふたり以上がつかまっても耐えることができる強度がありますので、つり革を離さずにできる限りの力をふりしぼって握り続けてください。
(2)の行動は一見すると頭部を保護することで身を守れそうに思えますが、片手ではつり革を持つ力が弱まり体ごと飛ばされる可能性が高く、また致命傷となる頭部の保護も片手では十分ではないので(1)の行動よりも危険度が増し、生存確率が低下します。
(3)の行動は危険度が最も高くなります。理由は、列車が動いていて、なおかつ、混んでいる場合にしゃがみ込むと、他の人の下敷きになり圧死または骨折や内臓破裂などの重傷を負う可能性が高くなるためです。混雑の中で下敷きになることの危険性は明石花火大会歩道橋事故の例でも明らかなとおりです。
地下鉄からの脱出。その時、あなたは?
地下鉄に乗車中に震度7はあると思われる地震に遭遇しました。幸いにも列車は脱線もせず、対向車との衝突もなく緊急停止しました。多分、次の駅までは200メートルぐらいの地点です。乗客にケガ人は見当たらず、あなたも無傷です。車内灯もついています。立っている乗客がまばらにいる程度です。
次のアクションをあなたはどうしますか?
さて、あなたは何番を選択しましたか?
危険からの回避を示す生存確率は次のとおりです。
(1) 10%
(2) 50%
(3) 70%
書籍内でも説明しているとおり、地下鉄の非常出口は、先頭車両と最後尾車両の2カ所にしかないと心得ておいてください。
このような状況に遭遇したらドアを開けて脱出することを考える方もいらっしゃると思いますが、ほとんどの場合にはドアから車外に出ることはできません。仮に出られたとしてもこの行動は大変危険です。地下鉄では線路に動力源の高圧線が敷設されているので、いきなり飛び降りると高圧線に触れて感電死する可能性があります。(1)の行動を選択すると感電による即死の可能性があります。
(2)と(3)の行動では、(3)の行動を選択した方の生存確率が高くなります。なぜでしょうか。それは非常時の車掌に定められた行動手順にあります。非常時に車掌は、まず、指令センターとの連絡を試みます。そのため乗客への指示は、指令センターとの連絡の次になるのでワンテンポ遅れます。発災時は一瞬が生死を分けますので、自分の身を守る行動としてあらかじめ非常口に近い先頭車両または最後尾車両へ移動することが最も生存確率を高める行動になります。
ただし、混雑の中を無理に移動すると将棋倒しを招きかねず、かえって危険度が高くなります。そのため、車内での移動には十分に注意が必要です。混んでいたらその場にとどまるべきです。地震の揺れではなく、人混みの下敷きになって圧死するようでは元も子もありません。
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電車内にケガ人がいたらどうするべき?など、さまざまなシチュエーションでの生存確率を上げる方法についても書籍『震度7の生存確率』内で紹介しています。
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震度7の生存確率
東日本大震災や熊本地震など、大きな地震が起こるたび、これまでの悲惨な体験から学び取った知恵がまったく活かされず、同じことを繰り返している日本。
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近い将来の発生が確実視されている首都直下地震と南海トラフ地震、発災の瞬間にひとりひとりが何をすべきか、本書から抜粋して紹介します。