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震度7の生存確率

2020.08.09 公開 ポスト

防災の新常識。地震の時にコンロの火は消さなくていい佐藤和彦/仲西宏之

東日本大震災や熊本地震など、大きな地震が起こるたび、これまでの悲惨な体験から学び取った知恵がまったく活かされず、同じことを繰り返している日本。

実際に被災した経験を持つ著者は「災害に直面して100%の生存確率はない」とおっしゃっています。ただそのような中でも、発災時にどんな行動をとれば少しでも生存確率が高くなるか、書籍『震度7の生存確率』には巨大地震を生き残るために必要な知識が詰まっています。

近い将来の発生が確実視されている首都直下地震と南海トラフ地震。発災の瞬間にひとりひとりが何をすべきか、本書から抜粋して紹介します。

*   *   *

自宅で調理中に地震が発生しました。その時、あなたは?

ガスコンロを使い夕飯のおかずの煮物を作っていました。その時、今まで体験したことのないような激しい揺れに襲われました。震度7はあると思いました。

夕飯の支度をはじめたばかりなので、ガスコンロは煮物に使っているだけで、調理台の上には、まな板と包丁が出しっぱなしにしてあります。自宅は東日本大震災のあとに新築した一戸建てです。

その時、あなたがとるとっさの行動は?

さて、あなたは何番を選択しましたか?

危険からの回避を示す生存確率は次のとおりです。

(1) 50%
(2) 60%
(3) 80%
(4) 50%

調理中にとるべき瞬間の行動は、判断の難しい条件を複数考慮しなければなりませんが、まず、地震に遭遇した際の常識を更新しておく必要があります。

常識的に教えられている「地震の時には火をすぐ消す」という指導がありますが、現在ではガスコンロの火を止める必要はありません。理由は、経済産業省が都市ガスを安全に使用するために全戸にマイコンメーターの設置(自動遮断機能がついたメーター、プロパンガスも同様)を1997年に義務づけたからです。その結果、現在では震度5強を感知するとガスの供給を自動停止することになっています。防災の視点では本当に素晴らしい仕事です。したがって、(1)と(2)で条件設定した「ガスコンロの火を消す」という動作は必要ありません。防災の新しい常識です。ただし、地震の揺れでキッチンペーパーやタオルが落ちてきての引火は話が別です。

(1)と(2)の行動は危険度が高くなります。これは、キッチンにとどまると、まな板の上に置いてある包丁や熱した鍋などの調理器具が飛んできてケガややけどを負う危険性が高まるからです。また頭上に収納棚がある場合、そこから食器などが落下してケガをする危険もあります。もちろん、地震の揺れでも扉が開かないように耐震ラッチを取りつけておくと危険度は低下します。(1)の行動が(2)の行動よりも生存確率が低くなる理由は、立っていることにあります。激しい揺れで転倒の危険性が高くなるので、その分だけ生存確率が低下します。

(4)の行動は、すぐに家から出ることですが、この行動には3つの危険が潜んでいます。ひとつ目の危険は、玄関のドアや戸に挟まれたりぶつかったりしてケガをする危険性が高いことです。また、新耐震基準の建物であっても玄関は構造的に強い部分ではないので玄関だけ壊れる場合もありますので気をつけてください。ふたつ目の危険は、揺れている最中の移動は転倒の危険性が高いことです。最後の3つ目の危険は、移動中に落下物に当たる危険性が高いことです。

この選択肢の中で最も危険度が低い行動は(3)ですが、実は判断が難しい行動です。キッチンから離れることは危険度を低下させるための正しい行動なのですが、問題はしゃがみ込む場所です。キッチンから近すぎず、食器棚や冷蔵庫などが倒れてこない場所に身をかがめることが必要です。日頃から安全な場所を考えておかなければなりません。それぞれの住宅事情もありますので一概にここが安全であると断定できません。私たちがあなたの生存確率を高めるために伝えたいことは、キッチンの外で、倒壊物がない場所を意識しておくことの重要性です。

*   *   *

その他さまざまなシチュエーションで生存確率を上げる方法も書籍『震度7の生存確率』内で紹介しています。

関連書籍

仲西宏之/佐藤和彦『震度7の生存確率』

巨大地震発生!その瞬間、どうすれば生き残れるか?「机の下に隠れる」と助からないって知ってましたか?巨大地震が続き、首都直下地震や南海トラフ地震の信ぴょう性が日に日に高まっている。いざ、巨大地震が起きた時、生き延びる妨げになっているのがこれまで教わった地震対策や地震教育の間違いだ。一家に1冊。家族で共有したい「我が家の巨大地震対策教本」になること間違いなし!

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震度7の生存確率

東日本大震災や熊本地震など、大きな地震が起こるたび、これまでの悲惨な体験から学び取った知恵がまったく活かされず、同じことを繰り返している日本。

実際に被災した経験を持つ著者は「災害に直面して100%の生存確率はない」とおっしゃっています。ただそのような中でも、発災時にどんな行動をとれば少しでも生存確率が高くなるか、『震度7の生存確率』には巨大地震を生き残るために必要な知識が詰まっています。

近い将来の発生が確実視されている首都直下地震と南海トラフ地震、発災の瞬間にひとりひとりが何をすべきか、本書から抜粋して紹介します。

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佐藤和彦

一般社団法人日本防災教育振興中央会 理事、総合危機管理学会 理事、一般財団法人日本総合研究所 特任研究員。

1963年埼玉県生まれ。東京経済大学経済学部経済学科卒業、慶應義塾大学大学院商学研究科修士課程修了。一般財団法人日本総合研究所 主任研究員 経営研究部長を経て2016年6月退職、同年10月より現職。

仲西宏之

一般社団法人日本防災教育振興中央会 代表理事、総合危機管理学会 理事。

1959年広島県生まれ。80年大阪工業大学建築学科在学中、起業を機に同学を中退。阪神・淡路大震災の被災経験からボランティア活動に取り組み、各地域の防災教育NPOの全国組織の創設を呼びかけ、2015年7月一般社団法人日本防災教育振興中央会設立、現在に至る。

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