「名前は知ってたけど、実はこんなことしてたの?」「一気に時代が動いた、その全体像がようやくつかめた!」「悲劇が多すぎて、涙なしに読めない!」。連載時から大きな反響を呼んだ、お笑い芸人・房野史典さんの『笑えて、泣けて、するする頭に入る 超現代語訳 幕末物語』。超フクザツな幕末の流れがスルスル理解できるうえ、教科書では読めない面白エピソードも満載の一冊です。今回はその中から、幕末の大人気ヒーロー・坂本龍馬の素顔と、彼がなしとげた偉業についてご紹介します。
* * *
「薩長同盟」完成まであと一歩
長州最大の敵、幕府も本格的に動き始めます。
長州退治“第2弾”に向けて、将軍・家茂ちゃんが大坂まで移動。さらに、幕府の実質的リーダー・一橋慶喜くんは、
「長州攻めに、やる気のない藩があまりに多い! だから、もう一回『長州攻めろ!』っていう勅命(天皇の命令)を出してもらう! そしたらみんな従うだろうからね!」
ってな感じのことを企んでたんです。
ただ、その勅命がなかなか出ない。それもそのはず、薩摩の大久保利通さんが、朝廷を陰で操り、勅命が出るのをブロックしてたからです。
それを知った慶喜くんは朝廷にキレて、「勅命出さねーってんなら、将軍をはじめ全員辞めるぞ」と脅します。
朝廷は「そりゃ困る」とビビって、勅命を出しちゃいます。
それに対して、今度は大久保さんが、「長州を攻撃する理由がどこにある!」とキレまくり。で、キレたまま筆を走らせます。
「長州を攻める正義の理由あんのか! ねーよな! だったらこれは勅命とは言えねーよ! ということでこの命令には従わない!」
怒りのお手紙完成。
京都にいる大久保さんは、この手紙を故郷の薩摩に送ります。
さらに「大久保や薩摩はこう思ってるから!」と、伝えるため、長州にも同じ内容を送るんです。
で、それを届けたのが、ここでも活躍、坂本龍馬です。
お手紙を受け取った長州は、「薩摩、かなりオレらの味方してくれてない?」と、ケッコー感謝。
そして、感激中の長州に、薩摩からの使者がやって来たんです。
使者(黒田清隆。のちの第2代内閣総理大臣ね)「桂さん、西郷や小松(帯刀)はあなたとの話し合いを希望している。一緒に京都に来てください!」
龍馬「桂さん、行きましょう! これで薩摩と仲直りだ!」
桂「……薩摩のスタンスはわかったんだけど、西郷には一回ブッチされてんだよ……簡単には行けない……なぜなら、ブッチされて……」
井上馨「ウダウダ言ってねーで……」
高杉晋作「話まとめてこい!!」
晋作と井上にケツをたたかれて、京都の薩摩藩邸にぶっ飛ぶ桂さん。
もうあとは話し合うだけ。
薩摩と長州の仲直りは叶ったも同然です。
龍馬が説き伏せるべき相手は……
龍馬も京都に行きたいけど、長州でちょーっとやることが(“ユニオン号”に関してのゴタゴタがあったんす。ちなみに、その間に高杉晋作と会い、漢詩の書かれた扇と、拳銃をもらったりなんかしてます)。
なかなか京都に行けない龍馬のもとに、
桂「早くこっち来て! 一日でも半日でも早くこっち来て!」
という、寂しがるウサギのような桂さんからのラブコールが届いたので、用事が終わった瞬間、龍馬は秒で駆けつけます。
龍馬「桂さん! 遅くなりました! で、どんな約束になりました!?」
すべての話し合いは終わってると思い、意気揚々と尋ねる龍馬に、桂は衝撃的な一言を放ちます。
桂「誓約の話など、何もしていない」
龍馬「……どういうことですか……」
薩摩側の接待はとても丁寧で、自分を大切に扱ってくれた。その席で、西郷、大久保、小松は、長州と敵対した経緯や、今現在の考えを説明してくれ、幕府の横暴と朝廷の体たらくも伝えてくれた。
様々な会話が飛び交った。が、お互いの藩が協力するという誓約の話などは、何ひとつ出ていない……。
桂「話が進展しない以上、ここにいても意味がない」
龍馬「……ちょっと待ってください……」
桂「長州へ帰ろうと思う」
龍馬「ちょっと待ってください! 全部終わりにするんですか!?」
桂「……」
龍馬「自分たちが頑張ってきたのは、長州と薩摩が手を結ぶ、その瞬間のためだ! このままではこの国に未来はない。でも! 2つの藩が協力すれば、まだ道はある!! それをここで全部終わりにするんですか!! お互いの意地の張り合いで、大きな目標を捨てて、この国を終わらせるんですか!!」
龍馬は桂に、感情をぶつけます。
その言葉を受け、桂はポツリ、ポツリと語り始めます。
桂「坂本くん……僕ら長州は今、この国で孤立している。かたや薩摩は、大きな力を持った日本でトップの雄藩だ。明らかに立場が違っている……。そんな弱い立場の長州から、薩摩に誓約を願うのは……憐れみを乞うようなものだ。『助けてくれ』とすがるようなもんだ……。
それだけは……武士として、藩として、人として、できない。これ以上、長州は頭を下げるわけにはいかない! 薩摩と手を組まなければ長州は終わるだろう……。しかし、長州が滅んでも、薩摩がこの遺志を引き継いでくれれば……本望だ」
龍馬は知ります。
桂の、長州の、どうすることもできない立場と思いを。それでも誇り高き道を選ぶ、気高き精神を。
しかし、プライドと高潔を口にはしている桂の心の奥底には、本心から願う“未来”が横たわっているはず。
薩摩と長州の話し合いにまだ望みがあるなら、なんとしてでもつなぎとめなければ。
この誓約を成立させるために、龍馬が説き伏せるべき相手はただ一人……。
龍馬「桂さん、少し待っててください」
桂「……?」
2つの藩を結びつけるために、動かすべきはあの男。
龍馬の向かった先は、
龍馬「西郷さん!!」
薩摩を預かるリーダー、西郷隆盛のもとです。
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