私大入学者全体の半数以上が一般受験ではなく、総合型選抜(旧AO入試)や推薦入試で入学しているということをご存じでしょうか。
Netflixで大人気の韓国の熾烈な受験戦争を描くドラマ『SKYキャッスル』でも「学力絶対主義の時代は終わったの」というセリフがあるほど、総合型選抜が世界のスタンダードになりつつあります。
延べ3万人以上の高校生を難関大合格に導いてきた、総合型選抜のプロである青木唯有氏の著書『親が偏差値思考をやめれば、不思議なほどわが子は伸びる』では、親子で新時代入試を乗り越える方策をご紹介しています。本書から一部抜粋して、試し読みをお届けします。
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入試で偏差値が問われるのは日本だけ
偏差値という言葉は、英語では「ディビエイション・スコア(Deviation score)」と言いますが、特殊な用語で、使うのはごく限られた人たちだけです。
ある東大生が、海外で鼻高々と「自分は偏差値75だ」と言ったところ、「あなたは統計学者なのか?」と尋ねられたという笑い話があります。それぐらい、海外では知られていないばかりか、全く重要視されていません。
もちろん、海外にも入試という制度は存在しますし、時代の先端を行くような企業への就職には、日本とは比べものにならないほど厳しい試験をくぐり抜けなくてはなりません。
では、海外の一流大学が何を基準に学生を選抜し、先端企業がどう社員を選んでいるかというと、それは「ホリスティック・レビュー(Holistic review)」によるものです。
ホリスティックとは、「全体的」「包括的」という意味ですが、日本語にするとしたら「総合評価」という訳が正しいでしょう。
つまりはハーバード大学やケンブリッジ大学などでは、日本で言うところの総合型選抜での選抜が主流なのです。
こうした学校では、志望者が今まで何をやってきたかという活動報告や、これから何を目指すのかといったエッセイを、志望する大学に主にオンラインで提出します。その内容によって合否を決定されるのが原則となっています。
当然のことながら、アメリカにも基礎学力を見る共通テストというものは存在します。SAT(Scholastic Assessment Test)という日本でいうところの大学入学共通テストのようなものがそれですが、ハーバード大学では2016年に、このSATを利用中止にしているのです。
つまりは世界最高峰の大学は、偏差値のような知識の相対評価での学生選抜など行っていません。
これはすなわち、最優秀とされる大学は、偏差値だけを見ていては優れた人財を見極めることはできないと判断しているということなのだと思います。
こう書くと、「ハーバードは書類審査だけで入れるのか!? 日本の大学を受験するよりずっと楽そうだ」という声が聞こえてきそうですが、とんでもない誤解です!
たとえばハーバードの医学部を志望するなら、成績が優秀なのは当たり前であって、その上で地域社会やコミュニティーに対して何を還元してきたかとか、どんなふうにリーダーシップをとって、何をまとめ上げてきたのかまで自らの活動歴を証明することが求められます。さらには学んだことを活かし、それを社会にどうつなげていくかの行動計画も欠かせません。
それらすべてが本当に本人の中から育まれたものであるかを大学に伝えられないと、入学することはかなわないのです。
学生としての生活のすべてはもちろんのこと、将来設計まで合否判定の基準になるわけですから、勉強さえ頑張っていればいい日本の医大とは、もはや大変さの次元が違います。
日本の大学をよく知るアメリカ人から、しばしば「日本の大学って、入学が簡単でいいですね」と言われるのはこれが原因でしょう。日本では、東大の医学部ですら医学部を志望する理由や、その先何をして社会に貢献するつもりなのかも、合否判断には大きく影響しません。試験日の成績さえよければ、ほぼそれだけで入学することができるからです。
親が偏差値思考をやめれば、不思議なほどわが子は伸びる
総合型選抜(旧AO入試)のプロである著者は、のべ3万人以上の高校生を難関大合格に導いてきた。偏差値を使わない新時代入試の乗り越え方とは? 親子で今すぐ実践できる最新教育メソッド。