心疾患、脳卒中、腎結石、骨粗しょう症、胃がん……重大な病気を招く原因にもなる「塩分」。世界で推奨されている1日あたりの塩分量が5グラムなのに対し、日本の平均的なビジネスパーソンは、ゆうに15グラムを超えるそうです。東京慈恵会医科大学附属病院栄養部の監修による『はじめての減塩』は、美味しく、簡単に塩分を減らすための知恵と工夫が満載の一冊。その中から、ぜひ覚えておきたい基礎知識をいくつかご紹介します。
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塩分の摂りすぎはなぜいけないのか
なぜ減塩が推奨されているのでしょうか。減塩が推奨されるのは、塩分と血圧に密接な関係があるからです。
体には、血液中の塩分濃度を常に一定に保とうとする働きがあります。そのため、食事によって大量の塩分が入り、血液中の塩分濃度が上がると、体は血管に水分を送って塩分濃度をもとに戻そうとします。しょっぱいものを食べたあとに喉が渇くのは、中枢神経が働いて水分を摂るように促すからです。
血液中の水分が増えるということは、すなわち血液の量も増えるということ。心臓はポンプのように収縮と拡張を繰り返して血液を体内に循環させますが、増えた血液量を送り出すためにより強い力が必要となります。これが、血圧が上昇するメカニズムです。
心臓がぎゅっと縮んで血液を送り出すときにかかる圧力の最高値は、「最高血圧」または「収縮期血圧」と言います。一方、心臓が広がって血液が戻ってくるときの圧力の最低値は「最低血圧」または「拡張期血圧」と言います。
高血圧と診断されるのは、最高血圧が140mmHg以上、もしくは最低血圧が90mmHg以上の状態が続くとき。高血圧とは、一時的な血圧の上昇ではなく、血圧が上がった状態が続くことを指します。
強い圧力がかかり続けると、心臓の負担が大きくなるのはもちろんのこと、血管にもダメージを与えます。血管は本来、弾力性があるものですが、圧力に対抗しようと徐々に厚く、硬くなっていきます。いわゆる動脈硬化です。
動脈硬化が進み、血液の流れが悪くなったり、血管が詰まったりすると、さまざまな病気を引き起こします。心筋梗塞などの心疾患や、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血などの脳卒中。それに腎不全、大動脈瘤、大動脈解離などのリスクも動脈硬化によって高まります。
塩分摂取量をチェックしてみよう
1日あたり成人男性で8.0グラム未満、成人女性で7.0グラム未満。ご自身はこの数値をクリアしていると思いますか。ここまで読んで、自分はいったいどのくらい塩分を摂っているのか、気になってきたという方も多いと思います。
当病院の栄養部では、減塩が必要な患者さんたちに集まってもらい、減塩の基礎知識や調理法を指導する「減塩教室」を開いています。その教室で最初にやってもらうのが、「あなたの塩分摂取量チェック」というシートです。次に掲載しましたので、さっそくやってみましょう。
13の質問にそれぞれ頻度を答えてください。答えによって3~0点が割り振られていますので、その合計点で塩分摂取量を判定します。
判定結果は次のとおりです。
・0~8点:あなたの塩分摂取量は少なめです。
塩分摂取量はおおよそ6.0~8.0グラム。引き続き塩分に気をつけた食生活を続けましょう。高血圧や心臓病の方は、1日6.0グラム未満を目指しましょう!
・9~13点:あなたの塩分摂取量は平均です。
塩分摂取量はおおよそ9.0~13.0グラム。高血圧や心臓病の方は、塩分摂取量が多めです。1日6.0グラム未満を目指しましょう! 2~3点に○がついた項目は、量や頻度を減らしましょう。
・14~19点:あなたの塩分摂取量は多めです。
塩分摂取量はおおよそ14.0~19.0グラム。食生活の見直しが必要です! 2~3点に○がついた項目は、量や頻度を減らし、0~1点を増やしましょう。
・20点以上:あなたの塩分摂取量はかなり多めです。
塩分摂取量はおおよそ20.0グラム。食生活の改善が必要です!! 2~3点に○がついた項目は量や頻度を減らし、0~1点を増やしましょう。徐々に薄味に慣れましょう。
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本連載は今回で最終回。手軽にできる減塩の工夫や外食時の心がけなど、続きは幻冬舎新書『はじめての減塩』でお楽しみください。