禅僧、庭園デザイナー、多摩美術大学教授などの肩書を持ち、『ニューズウィーク』日本版では「世界が尊敬する日本人100人」にも選ばれた枡野俊明さん。著書『禅が教えてくれる美しい時間をつくる「所作」の智慧』は、そんな枡野さんが説く、ちょっとした心がけが詰まった一冊です。お辞儀、お箸の使い方、掃除、感謝、言葉づかい……実践すればきっと「いいこと」が起こり出す、そんな本書からとっておきの智慧をご紹介します。
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一流に触れて自分を高めよう
お茶やコーヒー、紅茶、その他の飲料を飲むとき、どんな器を使っていますか?
なかにはこんな“つわもの”がいるのではないでしょうか。
「飲料関係はすべてペットボトル。当然、ラッパ飲み」
飲み物に関して“器のない”生活を送っている、というわけです。そこまでではなくても、ひとつのマグカップであらゆる飲料を賄っている、という人もいそうです。合理性という点では一定の評価はできますが、それではやはり、生活にうるおいがなくなります。
そこで、提案です。自分のためにひとつだけ「いい湯飲み茶碗」を買い求めたらどうでしょう。気に入った、しかも、造りのいい茶碗なら、大切に、丁寧に、扱うことになるはずです。
いままでのように、使ったあと、流し台に置きっぱなしにすることもないでしょう。すぐさま洗って決まった置き場所にしまう、というふうに変わってくる。そして、いつかそれが習い性になる。
そうした所作の習慣は、湯飲み茶碗ばかりでなく、あらゆるものに対する扱いに及ぶのは必定です。「どんなものも、大切に、丁寧に、扱う」ようになっていきます。
もちろん、日本茶よりはコーヒー、紅茶が好みで、それらを味わう時間を大事にしているということなら、コーヒー、あるいは紅茶用のカップ&ソーサーのいいものを一脚そろえればいい。それで同じ変化が起こります。
いい茶碗で飲むお茶の味は格別です。自然と器を丁寧に扱いますから、飲む所作もゆったりとしたものになる。心に余裕が生まれ、豊かな時間が過ごせるのです。
一流ホテルの安い部屋を選ぶ
一級品、一流品にはそれだけの価値があります。こんな言い方があるのを知っていますか?
「二流、三流のホテルの最高級の部屋に泊まるより、一流ホテルのもっとも低いグレードの部屋に泊まったほうがいい」
一流と二流、三流の差はサービスにあらわれます。対応するスタッフの物腰(所作)も、言葉遣いも、気配りも、何もかもが一流とそれ以外とでは違うのです。一流はすべてが行き届いている。
さる一流ホテルのドアマンは、リピーター客全員の名前と顔を正確に記憶していたといいます。ドアを開けながら「○○様いらっしゃいませ」、連泊している場合は「○○様お帰りなさいませ」。そう声をかけられた宿泊客がどんな気持ちになるかは、容易に想像できるのではないでしょうか。その極上のもてなしに感動することは間違いありません。
一流に触れると、それだけで心の琴線が震える、心が清々しくなるのです。禅語に「薫習」という言葉があります。よい師と触れ合っていると、知らぬ間にその立ち居ふるまいや、ものの考え方が身についてくる、という意味です。
一級品の湯飲み茶碗にも同じことがいえるのではないでしょうか。つまり、それと毎日触れ合っていることで、その“一級”にふさわしい所作が身についてくる。さあ、そんな変化を、あなたのものにしてください。
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禅が教えてくれる美しい時間をつくる「所作」の智慧
禅僧、庭園デザイナー、多摩美術大学教授などの肩書を持ち、『ニューズウィーク』日本版では「世界が尊敬する日本人100人」にも選ばれた枡野俊明さん。著書『禅が教えてくれる美しい時間をつくる「所作」の智慧』は、そんな枡野さんが説く、ちょっとした心がけが詰まった一冊です。お辞儀、お箸の使い方、掃除、感謝、言葉づかい……実践すればきっと「いいこと」が起こり出す、そんな本書からとっておきの智慧をご紹介します。