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自分に適した仕事がないと思ったら読む本

2021.11.19 公開 ポスト

就職に「やる気」はなくていい。企業が求めるのは仕事の結果福澤徹三

富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなる時代。先行きの暗い中、私たちはどう働けばよいのか……。その悩みに答えてくれるのは、高校卒業後、営業、飲食、アパレル、コピーライター、デザイナー、専門学校講師など、20以上の職業を経験した小説家、福澤徹三さん。著書『自分に適した仕事がないと思ったら読む本』には、福澤さんが長年かけて培った仕事術・就職哲学が詰まっています。その中身を一部、ご紹介しましょう。

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フリーターはこんなに損をする

「やる気」がでないひとほど、正社員よりフリーターを選びます。むろん本人がよければ、それでも問題はありません。

(写真:iStock.com/erspstock)

しかしアルバイトは自由が利く反面、責任がないという欠点があります。だからこそ気楽なわけですが、責任がない立場では仕事の能力が身につきません。したがって、いつまでも下働きを余儀なくされます。サラリーマンとフリーターの生涯賃金は、二億から三億円の差があるといわれていますが、所得でも不利をこうむります。

独立して自分で商売をするにも、いったんは企業へ入らないと、専門的な知識や技術を身につけるのはもちろん、取引先とのコネを作れません。

アルバイトや派遣社員に仕事をあっせんするアウトソーシング系の企業は、いまや大繁盛です。便利だと喜んでいる若者もいるようですが、悪くいえば、本来もらえるはずの給料をピンハネされているのです。

業種にもよりますが、クライアント側から派遣会社に支払われている金額は、派遣社員がもらう給料の倍にものぼります。つまり自分で仕事を探さなかった代償として、正規の給料の半分しかもらっていないのです。

仕事の能力が身につけられて、きちんと報酬がもらえるのは正社員しかありません

 

もっとも、こういう本を手にとるくらいですから、読者のみなさんは、そんなことは百も承知でしょう。しかし、わかっていても、なかなかでないのが「やる気」です。学生たちと接するなかでも、就職に「やる気」がでないという台詞を頻繁に耳にします。

けれども就職するのに、あるいは仕事をするのに「やる気」は必要でしょうか。

水は一瞬で湯には変わらない

まえがきにも書いたように、わたしは根っからの怠け者ですから、たいていのことに「やる気」がでません。

(写真:iStock.com/koyu)

この本にしろ、就職で悩むひとの役にたてばと思って──いや、もっとあけすけにいえば、生活のためもあって書きはじめたものの、作業自体は苦痛でしかありません

ほかの締切は重なっているし、新書を書くのははじめてです。わたしのように無学な者がうかつなことを書いて、足元をすくわれるのではないかと、ひやひやします。

過去にやってきたどの仕事も九割は苦痛で、楽しいことなど一割にも満たないというのが実感です。

「ああ、働きたくない。でも金はほしい」

というのが本音です。

わたしが極端な怠け者だからそう思うのかもしれませんが、そもそも人間は「やりたいこと」を「やりたいとき」にしか「やりたくない」生きものではないでしょうか。

 

仮に出勤さえすれば、なにもしなくていいという会社があったとしても、毎日決まった時間に起きるだけで充分に苦痛だと思います。

苦痛を避けるのは生きものの本能ですから、就職に「やる気」がでないのは正常です。生まれながらに就職したい人間などいないので、そうしなければいけないと教育されたにすぎません。

企業にしても「やる気」のある人材がほしいといいますが、それはそう見える人物が好ましいというだけで、本音には関心がないのです。企業が求めているのは精神ではなく、仕事の結果です。

 

とはいえ、慣性の法則は精神にも作用しているようで、止まっている状態から動きだすには、かなりのエネルギーを要します。それが「やる気」だともいえますが、必ずしも「乗り気」でなくていいのです。

いやいやながらでも、いったん動きだせば弾みがついてきます。

それでも動けないのは生活に余裕があるからで、恵まれた環境にいるということです。今夜の飯が喰えないという状況になれば、「やる気」などなくても働かざるを得ません。イラクやアフガニスタンに、ひきこもりはいるでしょうか。

 

水が一瞬で湯には変わらぬように、「やる気」は最初からたぎっているものではありません。就職して仕事をこなしているうちに、ふつふつと沸いてくるものです。

仕事のイロハもわからないうちから、無性に「やる気」があるのは頼もしいものの、空元気に終わる可能性だってあります。下手に意気ごんだぶん、失敗したときのショックは大きいでしょう。それで落ちこむくらいなら、「やる気」などないほうがいいのです。

「きのうにこだわり、あすを夢見て、きょうを忘れる」という言葉がありますが、大切なのは「やる気」に執着することではなく、とりあえず行動することです。

関連書籍

福澤徹三『自分に適した仕事がないと思ったら読む本 落ちこぼれの就職・転職術』

富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなる時代。年収二百万円以下の給与所得者は、すでに一千万人を超えた。拡大する賃金格差は、能力でも労働時間でもなく、単に「入った企業の差」である。こんな世の中だから、仕事にやる気がでなくてあたりまえ。しかし働くよりほかに道はない。格差社会のなかで「就職」をどうとらえ、どう活かすべきなのか? マニュアル的発想に頼らない、親子で考える就職哲学。

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自分に適した仕事がないと思ったら読む本

富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなる時代。先行きの暗い中、私たちはどう働けばよいのか……。その悩みに答えてくれるのは、高校卒業後、営業、飲食、アパレル、コピーライター、デザイナー、専門学校講師など、20以上の職業を経験した小説家、福澤徹三さん。著書『自分に適した仕事がないと思ったら読む本』には、福澤さんが長年かけて培った仕事術・就職哲学が詰まっています。その中身を一部、ご紹介しましょう。

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福澤徹三

1962年、福岡県北九州市生まれ。デザイナー、コピーライター、専門学校講師を経て、作家活動に入る。2008年『すじぼり』で第10回大藪春彦賞を受賞。14年には『東京難民』が映画化され話題に。小説作品以外にも、『自分に適した仕事がないと思ったら読む本 落ちこぼれの就職・転職術』など、仕事や就職をテーマにした新書も発表している。

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