富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなる時代。先行きの暗い中、私たちはどう働けばよいのか……。その悩みに答えてくれるのは、高校卒業後、営業、飲食、アパレル、コピーライター、デザイナー、専門学校講師など、20以上の職業を経験した小説家、福澤徹三さん。著書『自分に適した仕事がないと思ったら読む本』には、福澤さんが長年かけて培った仕事術・就職哲学が詰まっています。その中身を一部、ご紹介しましょう。
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陰口は必ず本人に届く
私見ですが、職場で失敗しないための原則は、次の5点に尽きます。
(1) 時間を守る
(2) 嘘をつかない
(3) ひとの陰口をいわない
(4) 恩を着せない
(5) 常に相手の立場で考える
「なんだ、そんなことか」と思われるかもしれません。いまさらわたしが書くまでもなく、さまざまな書籍で似たような教訓があげられています。
けれども、あなたの周囲でこれらを実践しているひとが、どのくらいいるでしょうか。
(3) の「ひとの陰口をいわない」について考えてみましょう。
「ひとを誹(そし)るは鴨の味」といいますが、仕事帰りの居酒屋などで、横柄な上司や生意気な同僚の悪口を肴に酒を呑むのは痛快です。なぜ痛快かというと、相手をこきおろすことによって、自分が正当化されるからです。
自分は悪くない。つまり相手の「せい」にしているわけですが、この度合がすぎると進歩がないのは、先に述べたとおりです。
しかし、どう考えても上司や同僚に非がある場合だってあります。陰口をいいたくなるのは当然です。それでも、陰口はいわないほうがいいのです。
なぜなら陰口は、必ず本人に届くからです。
内緒のはずの陰口が、どうして本人に伝わるのかといえば、理由は簡単で、誰かが告げ口をしたからです。「ひとの口に戸は立てられず」というように、どんな密室でおこなわれた話でも、必ず外へ洩れます。
洩れたら最後、一瞬にして本人の耳に入ります。「これは、ここだけの話」とか「絶対、誰にもいわないでね」という前振りではじまる話ほど、あてにならないものはありません。まったくおなじ前振りで、誰かが必ず口外します。
ひとの陰口をいう人物は、ほかの場所でも陰口をいうものです。
あなたがいない席では、おなじ人物がおなじ口調で、あなたの陰口に花を咲かせていると考えるのが自然です。
経験のある読者も多いでしょうが、「誰それさんが、あなたのことをこういってる」と間接的に聞くほどいやなものはありません。たちまち怒りが沸騰し、自分の陰口をいったという人物の印象は最悪になります。
ほめ言葉は陰で言おう
もし、あなたが誰かの陰口をいって、それが相手に伝わったらどうでしょうか。
「なあに、あんな奴に嫌われてもいい」と思うのは軽率で、むこうも黙ってはいません。
相手はことあるごとに、あなたの陰口をいいふらします。そうなったら、もう泥仕合で収拾がつきません。相手が辛抱強くて陰口をいわない場合でも、あなたに好印象を持っていないのはたしかでしょう。
職場に敵を作るのは、百害あって一利なしです。
ただでさえ仕事で忙しいのに、敵のことまで考えていたら身が持ちません。そういう状況に陥らないためにも、陰口はつつしんだほうがいいのです。
どうしても文句がいいたいのなら、本人に直接いうべきです。それで角が立っても、陰口ほどにしこりは残りません。
反対にほめ言葉は、なかなか相手の耳に届きません。他人をほめてもおもしろくないし、ひとによっては嫉妬もするからです。
それだけに、ひとを介してほめ言葉を聞くのはうれしいものです。
「あなたのことを、誰それさんがほめていた」と聞けば、誰しも悪い気はしません。
相手から直接ほめられるとお世辞に聞こえますが、ひとを介すると本心に聞こえます。したがって、ひとをほめたいなら、陰でいったほうが効果があるのです。
ただ、ひとをほめるにもコツがあって、なんでもほめればいいというものではありません。相手がほめてほしいと思っているところをつくのが肝心で、それには日頃からの観察が必要です。他人が気づかない、そのひとの長所や、そのひとが陰ながら努力しているところをほめるのです。
何度もいうように、ほめ言葉はなかなか本人に伝わりませんから、過剰にならない程度に、あちこちで吹聴するしかないでしょう。
けれども、ひとたび耳に入れば、相手を快くするのはまちがいありません。
つまり「文句は本人にいえ、ほめ言葉は陰でいえ」ということです。
ただし、これは自分が下っぱの場合で、上司になったら、部下をひと前でほめることも必要です。まわりに対してのアピールもあるし、なによりも本人が喜ぶからです。
自分に適した仕事がないと思ったら読む本
富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなる時代。先行きの暗い中、私たちはどう働けばよいのか……。その悩みに答えてくれるのは、高校卒業後、営業、飲食、アパレル、コピーライター、デザイナー、専門学校講師など、20以上の職業を経験した小説家、福澤徹三さん。著書『自分に適した仕事がないと思ったら読む本』には、福澤さんが長年かけて培った仕事術・就職哲学が詰まっています。その中身を一部、ご紹介しましょう。